ビデオ鑑賞会 !注意! 現代パロです。 「名字、お前ってやっぱり変わってるよな」 「いきなりなによ、三郎くん。そんなの今更じゃない」 「そこは開き直るんじゃなくて、怒れよ…」 「だって本当だもーん」 一階の大広間にあるソファに寝転び、ついさっき竹谷と行ったコンビニで買ったエロ本を回し読みしていると、三郎くんにそんなことを言われた。 どうせ、「女のくせにエロ本を読むな」って言いたいんだろう。 それは偏見だ。いくら私が女でも、おっぱいが大きい女性がいれば見てしまうし、綺麗だなって思う。 私はエロ本に興奮を求めてるんじゃない!芸術的なものを求めているんだ!女体こそ、真の美だと私は思うのだよ! 「はいはい」 「おっと三郎くぅん、興味なさそうだねぇ。そんなこと言わないで一緒にエロ本見ようよ」 「誰が見るか。私は興味ない」 「…………不の「絞めるぞ」っすみません、三郎さん!」 鬼の形相で睨んで、手をわきわきさせるので、素早く謝って本で顔を隠す。 ソファの下には竹谷が寝転び、「おほー…」とか言いながらエロ本に釘付けで、三郎の存在に全く気付いていない。 お前のその集中力をテスト前にも発揮できれば、結構賢いと思うんだよ…。 「何でお前には羞恥心というものがないんだろうな」 「んー……何でだろうね」 「……あ、でも。七松先輩の前だと乙女に戻るよな」 「…そうでもないよ」 とは言うものの、三郎が正解。 私は、エロ本を見たり、AVを見たりする。下ネタだってガンガン言う。時と場所を選んでだが、そこまで恥ずかしいと思わない。 だけど、それは相手が竹谷の場合のみ。あ、竹谷たちの前のみ、かな? 先輩たちの前だとちょっと恥ずかしい。んでもって、七松先輩の前だともっと恥ずかしい。 多分、異性として見てるからだと思う…。 本を見開いたまま、動きを止めていると、ソファの背もたれに寄りかかってニヤニヤ笑ってくる三郎。くっそー…さすが洞察力が優れてるだけあって、よく見てやがる…! 「乙女にならないもん…」 「そうか。じゃあ七松先輩と一緒に観たらどうだ?初めてだから勉強にもなるぞ?」 「っさい雷蔵のストーカー!」 「ストーカーじゃない。私と雷蔵は双子以上に繋がり合ってるだけだ!」 「それがキモいんだよタコッ!」 「あーもうっ、うっせぇんだよお前ら!ちょっとは黙ってろ!」 「八左ヱ門、お前は集中力の使いどころを大いに間違ってる」 「はぁ?それより名字、エロビ見ようぜー」 「おう!昨日の続きなー」 読み終わったエロ本をソファの隅に置いて、テレビとDVDレコーダーに電源を入れる。 三郎は呆れ、私たちに聞こえるように溜息をついてから大広間から出て行った。 この時間帯は誰もいない。というか、皆の予定を聞いていたので、ここでエロビを見ても大丈夫! まぁ、見られたところでなんら問題はない。彼らも男だからね。 二人ともソファに座ってドキドキする心臓を抑えながら再生ボタンを押す。 「おほー、この子超可愛い」 「だね!ちょ、男邪魔っ。男は消えろ!」 「何だお前ら、またAVか?」 「「ギャーッ!」」 今回のエロビは、とりあえずヤるだけのものだった。 女の子が可愛かったからそれを選んだんだけど、ちょっと失敗…。シチュエーションって大事だと思う。 でも楽しめないことはないから、ジッとテレビを見ていると、後ろから聞き慣れた声。 驚いて悲鳴をあげ、竹谷は停止ボタンを押して、ソファから崩れ落ちた。 「七松先輩……。今日は遅くなるのでは?」 「終わった!それより止めるのか?私も見るぞ?」 「えッ!?」 「いや、見ますけど…。ビックリして止めただけです。じゃあ見ましょうか」 「い、いやいや竹谷!」 「おう、ちょっと待てよ名字。慌てるなって」 「違うはボケッ!私、部屋に帰る!」 「は?でもこれお前が借りたやつだろ?」 「いい、いいから!じゃあ男二人でごゆっくりどうぞ!」 七松先輩も一緒に見るというなら、私は帰ろうじゃないか! 男同士にしか解らないことだってあるだろうしね。女の私は邪魔だ。どうぞお二人で楽しくしてくださいな! 逃げるように大広間をあとにして、部屋へと走って向かう。 竹谷と見るのは別になんとも思わない。性的な意味で興奮とかもしない。 なんだろう…。バラエティ番組を見るノリで見てる。 「だけど七松先輩とは無理だっ…」 部屋に戻った私はベッドに倒れ、枕に顔を押し付ける。 恥ずかしいんだ。七松先輩と一緒に見るのは…。何て言うか、ヤられるんじゃないかってビクビクする。 それが嫌いとか、気持ち悪いとか、怖いとかじゃない。んー…やっぱり恥ずかしい?ってのが出てくるんだ。 「これが恋だな…!」 ゴロゴロしながら、変なことで七松先輩への愛を確認した。 下は仲良くエロビ見てんだろうなー…。 「仙蔵っ、あいつ私とは絶対に見ない!」 「………いきなりどうした、小平太。それと、悩みなら長次「長次いない!」 あいつ、逃げたか…。 部屋で課題を終え、仕事も終えてから休憩しようと一階の大広間に来ると、竹谷と小平太がソファに一緒に座ってテレビを見ていた。 大きい身体の者同士が一緒に座るんじゃない。と突っ込みを入れようと近づくと、眉間にシワを寄せて、少し不機嫌そうな小平太が私に近づいてそんなことを言ってきた。 テレビに目を向けると裸の女と男がヤってる最中で、少し疲れる。またここで見てるのか…。部屋で見ろ、部屋で。 呆れながらコーヒーを淹れていると、小平太が後ろから付いてきてブツブツとうるさい。 「ようするに、名字と一緒にAVを見たい、そう言うことだな」 「ちょっと違うけどそれでいい!」 「アホか」 「何で?」 「女と見るもんじゃないだろ」 「でも名字、竹谷とはいっつも見てる」 あのバカ女が…。いや、エロ本を平然と私たちの前で読む女だ、仕方ない…。 にしても、こいつらは本当にアホでバカだな。 後ろで喘ぐ声が邪魔だったので、竹谷に「音量小さくしろ」と伝えると、無言で音を下げる。あいつはどんだけ集中しているんだ。 「竹谷とはいっつも楽しそうに見てるから、私も一緒に楽しんでみたいのに…」 「AVは楽しんで見るものじゃないだろう…」 「でも見たい!名字だって楽しそうだ!」 確かに。下ネタを言っているときの名字の表情はキラキラしている。まるで中学生みたいに下品だが。 だがそれは竹谷たちの前のみだ。小平太の前になると、借りて来た猫のように大人しくなる。 それが気に食わないと小平太は拗ねていた。女心というものが解らんからな、お前は。 「小平太、気づかんのか?名字はお前を男として意識しているから一緒に見れないんだ」 「…私は男だぞ?」 「そうではなく。恥ずかしいと言ってるんだ」 「何で?竹谷とは見てるのに?」 「このバカ。名字はお前とヤる想像をしてしまい、恥ずかしいから一緒に見れなんだ」 「………ああ、なるほど!」 「ばかたれ…」 「なはは!仙ちゃんが文次郎になった!」 「うるさいから向こうに行ってろ。私は部屋に戻る」 「おう!竹谷ー、ちょっと名字呼んで来い」 「今丁度いいとこなんで無理っす!」 「行け」 「……はい…」 いつもだったら小平太が名字を連れてくるのに、今回は竹谷に呼びに行かせる。 しかも、「七松先輩は帰ったから一緒に見よう。って言え」と賢いことまで言って…。 ふむ、これは面白そうなことになるな…。………よし、あいつらにメール送って、帰って来ないように伝えるか。 ( TOPへ △ | ▽ ) |