夢/30万打 | ナノ

未来の竹谷くん


!注意!
大人竹谷がタイムスリップしてきました。
BL要素を大いに含みますのでご注意ください。
精神も肉体も、大人竹谷×獣主。





「虎徹先輩!」
「……誰だテメェ!?」


本日も退屈で苦手な座学が終わってから、仲のいい留三郎と小平太を誘って、六年長屋の中庭で鍛錬に励んでいた。
最初に小平太と組み手をして、次に留三郎と組み手をして、一休み。
縁側に座って、小平太と留三郎の組み手を眺めていると、ドサッと何かが廊下に落ちた音がして、首を廊下へと向ける。
するとそこには、見覚えのない男が尻持ちをついていた。
留三郎と小平太も気づき、組み手を止めて俺に近づいて、一緒に男を見る。
三人揃って警戒すると、男は尻を擦りながら振り返って、俺、留三郎、小平太と順番に見たあと、パッ!と顔を明るくさせて抱きついてきた。


「うわっ、どうしたんすか!何で小さくなってるんです!?」
「はあああ!?意味わかんねぇこと言ってねぇで離れろよ!」
「声もちょっと若いっすね!いや、でもどんな虎徹先輩でも俺は愛してますけど!」
「気持ち悪ぃいいいいい!留三郎、小平太、助けて!」


男はかなりがたいがよく、俺がいくら暴れてもビクともしなかった。
男、しかもこんなでっけぇ男に抱き締められたって嬉しくねぇよ!
助けを求めて二人を見るも、二人は首を傾げていた。


「なんか竹谷に似てねぇか?」
「ボサボサ髪だしな!」
「おお。まぁそれはお前もだけどな」
「竹谷!?」
「はい?なんですか、虎徹先輩」
「はァ!?」


二人の言葉を聞いて驚き、確信を得る男の言葉に再度驚いた。
意味わかんねぇし!つか、抱き締めるのを止めろ!
抱き締めたままスンスンと匂いをかいでくる男…大人竹谷の顔を引き離そうとすると、腕を掴まれた。


「どうしたんですか?今日は小さいし、力も弱いですね。そんな虎徹先輩も愛しいっす」
「いやいやいやいやいや!マジで止めて下さい。怖いっす、なんかすっげぇ怖いです」
「………怯える虎徹先輩…ッ!」
「なに興奮してんだこのバカ犬!離れろって俺が言ってんだぞ!?離れろ!命令だ!」
「ぐっ…!め、命令されたって……」
「なら俺の犬失格。一生バイバイ」
「すみません!」


土下座をして離れる竹谷。
俺はすぐに二人の後ろに隠れ、様子を窺う。
身体は俺や小平太以上に大きく、筋肉もしっかりついていた。う、羨ましくなんかねぇからな!
髪の毛の長さはあまり変わってなかったが、量が増えていてさらにボサボサしていた。
服はどこかの忍び装束。顔には多数の傷跡があった。


「あ、七松先輩に食満先輩も。お久しぶりです。ところでどうしてそんなに小さいのですか?」
「それは…。俺たちが聞きてぇよ」
「はい?」
「竹谷、お前一晩でそんなに成長したのか?私も成長できるかな!」
「……どういう、ことでしょうか?」


首を傾げながら俺を見てきたので、留三郎の後ろに隠れて「知るか!」と言ってやると、「虎徹先輩可愛い!」と意味の解らないことをほざきやがったので、手裏剣を打つ。
いつもだったら驚きながら避けるのに、大人竹谷は「照れてる姿が初々しい!」とかなんとか言いながら余裕で避けた。
なんなんだよあいつ!マジ意味わかんねぇし!
俺らバカ三人組がここで考えても答えが出てくるはずもなく、小平太が長次と文次郎と仙蔵を呼びに行く。
留三郎も伊作を呼びに行こうとするのを俺が必死になって止めた。
今こいつと二人っきりにするな!いや、しないで下さい!
って涙目で懇願してる最中も、大人竹谷は俺から目を離そうとしない。マジでこえぇよ!どんなホラーだよ!


「―――ようするに、この竹谷は未来の竹谷だ」


縁側に集まった六年生。
仙蔵が竹谷から話を聞いて出した答えはそれ。
あり得ない話だが、実際目の前にいる竹谷は、今の竹谷とは全然違う。
文次郎、長次、留三郎は信じられない様子だったが、小平太、伊作は「そうなんだー」といった様子で受け入れていた。大雑把だな、あの二人…。


「どういうきっかけで過去に戻ってきたか解らんが、特に問題はないだろ」
「問題ありだろあり!」
「どこが?」
「どこがって…!俺のことなんか変な目で見てるとことか!」
「変な目じゃないです!虎徹先輩が可愛いなって見てるだけです!」
「それだよ!俺をそんな目で見るんじゃねェ!」
「ほら、問題ないではないか」
「仙蔵ォ!」


仙蔵の横に大人しく座っている竹谷は、時々俺を見てニコニコと笑っている。
笑う顔はあまり今と変わんねぇなぁ。って思ってたのに、「可愛い」と発言してくる竹谷に思わず鳥肌が立つ。
俺は竹谷から一番離れた場所に立って、小平太を盾にしている。
小平太の後ろにいたら安全な気がする。多分、きっと、大丈夫!何かあったら助けてくれよな、親友!


「ところで竹谷」
「なんでしょう、立花先輩」
「未来の虎徹とはどういった関係だ?」


ニヤニヤと楽しそうに質問する仙蔵に殺意を抱いたのはこれが初めてです。
慌てて止めようとしたが、「小平太」と仙蔵が名前を呼ぶと、小平太は俺の背後に回って両腕を掴んで拘束。し、親友に裏切られた!?一瞬にして裏切られた!


「虎徹先輩とは同じお城に就職してます」
「そうか。それはそれは…、仲のいいことで」
「そ、そうっすか?いやー、立花先輩にそう言われると照れます」
「先ほどから虎徹に好意を向けているようだが、未来では付き合ってるのか?」
「うおおおおお!もう止めろよ仙蔵!小平太、お願いだから離して!」
「ダメだ。仙蔵の言うことは絶対だし、何より私も知りたい」
「あ、俺も」
「僕も僕も!」
「親友だけじゃなく、仲のいい友人にまで裏切られた!」


それどこか、文次郎も長次もちょっとだけ興味深々なご様子。
竹谷は頭をかきながら照れ臭そうに笑って、色んな事を話してくれた。


「付き合ってはないんです。俺が一方的に好意を寄せてるだけで…」
「そうかそうか。で、未来の虎徹はどんな感じだ?」
「無茶苦茶男前になってます!まぁ俺より背は低いんですけど、背中は大きいって言うか…。いつも頼りにしてます。あ、動物の扱いもさらに磨きがかかってます!後輩にも好かれてます。それが憎いと何度か思ったんすけどねー…。て言うか、虎徹先輩に好意寄せてる奴もいるんすよ!まじでありえないっす!いや、気持ちは解るんですけど、なんか悔しくて……」
「ほー…。よかったな、虎徹。モテモテだぞ、男に」
「それが嬉しくねぇんだってば!何で男ばっかにモテてんだよ!」
「虎徹先輩が男前だからです!」
「嬉しいけど嬉しくねぇよ!」
「………」
「んだよ…」
「拘束されてる虎徹先輩…、珍しいですね」
「気持ち悪ィ!気持ち悪ィから!」
「いつも夜に忍びこむんですけど、なかなか……。力も俺のほうが強いのに逃げられるし、動物たちも警戒してくるし…。でも、今の虎徹先輩ならいけそうな気がします!」
「いけるかァアア!ふざけんなっ、マジでふざけんな!おい小平太、離せ!」
「せんぞー、虎徹はこう言ってるけど、どうする?」
「縛って竹谷に渡してやれ」
「解った!」
「いやぁあああああああ!」



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