夢/30万打 | ナノ

できなかったこと


!注意!
現代のお話。本編の転生話の続きになります。
「恋愛」と「敬愛」の狭間みたいなBLがちょこっと入ってます。





「虎徹先輩!」
「よーっす、竹谷。おはよーさん」
「おはようございます!」


俺たちと後輩たちの記憶が戻ってから、昔みたいにつるむようになった。
何を遠慮することもなくなったおかげで、去年より楽しい毎日を送っている。
鉢屋は振り回す俺たちを面倒くさがっていたけど、ちょっとだけ嬉しそうな恥ずかしそうな表情を見せる。
雷蔵や竹谷は仲が良かった先輩、俺と長次とよくつるんで遊ぶし、兵助は昔より柔らかい表情を浮かべるようになった。
勘右衛門はこれでもかってぐらい眩しい笑顔を見せては、文次郎たちをからかっている。
そんな後輩たちの顔を見て、生まれ変われてよかった。また出会えてよかったと、俺たちも笑った。


「竹谷ー、今日部活休みだろ?遊びに行こうぜ!」
「うっす!お供するっす!」


竹谷もスポーツ推薦でこの学校に進学してきたので、毎日部活で忙しく、放課後遊びに行くことができない。
それでも時々こうやって休みがあるので、その日は俺もサボって遊びに出るようにしている。
って言ったら兵助に「毎日サボってるじゃないですか」って冷たい目を向けられるんですけどね!イケメンの冷めた目って怖いよな!


「すみません、お待たせしました!」
「おう!じゃあ行くか!」
「はいっ」


俺も竹谷も動きやすいを重視しているため、学校指定の鞄じゃなく、リュックを使っている。
因みに学校指定の鞄を使っているのは、文次郎、仙蔵、長次、伊作。後輩は、兵助と雷蔵だけ。
あとは肩から斜めにかける鞄とか、リュックとか。正式名称は俺には解りません!
教科書もろくに入れてなく、お菓子やパンやゴミなどが入っている。きっと竹谷もだ。
留三郎には「ちゃんとゴミは捨てろ!」って怒られるけど、面倒なんだよなー…。


「今日はどこ行くよ。竹谷くんの為にナンパしに行きましょうか?」
「嫌っすよ。そう言って虎徹先輩一人で楽しんでるじゃないっすか…」
「まだ前のこと根に持ってんのかよ。竹谷が喋んねぇからだろ!」
「だって…」
「じゃあ今日はカラオケ行こうぜ!」
「あ、その前にちょっと買いたいもんあんすよ!」
「おー、じゃあそっちだな」


竹谷は柔道部。洗っても汚れがとれなくなったタオルを捨てて、新しいタオルが欲しいと適当なお店に寄った。


「竹谷くん竹谷くん。こんなのどう?」
「何でそんなファンシーなんですか…。嫌ですよ、恥ずかしい」
「じゃあこれ」
「だから、何でちょっと可愛い系なんすか」
「わんこだよ!?可愛いじゃん!しかもなんかナツとハルに似てない!?」


ファンシーなタオルは冗談で、本命のタオルを見せる。
シンプルなそのタオルの端には、二匹の犬の絵が入っていた。
可愛いイラストだが、どこか室町時代に一緒にいた山犬二匹のことを思い出した。
あいつらにはもう何も言ってやれねぇ。頭も撫でてやれねぇ…。それを思うと少しばかり胸が苦しくなった。


「……じゃあ俺、これにします」
「俺も一緒に買おうかな…」
「あ、じゃあこっちの柄はどうっすか?笑ってるあいつらに見えません?」
「お、いいな!可愛いじゃんっ。でもこっちは、今いる奴らに似てるな!」
「そうっすね。ん、だったら俺がこっちの買って、先輩はこっち買って下さい」
「室町が俺で、現代は竹谷…。おう、いいぜ!一緒に買おう買おう!」


何で男子学生二人がきゃっきゃとタオルを選んで一緒に買わないけないのか。
クスクスと近くにいた女子高校生に見られたけど、特に気にすることなく一緒にレジへと向かう。
タオルはよく使うからな。あっても困んねぇ!


「虎徹先輩っ、ちょっとあの鞄格好よくないっすか!?」
「ばっか、あれよりこっちのほうが格好いいだろうが」
「え……そのセンスはないっすわ…」
「そんな目で見るなよ!竹谷のセンスのほうがねぇよ」
「このセンスが解んないっすか!?」
「ガキすぎる」
「虎徹先輩のは奇抜すぎっす」

「うっわ、このリストバンドかっけぇ…」
「あー…いいっすね、格好いいっす。俺も欲しいなぁ…」
「柔道には使わねぇじゃん」
「弓道だって使わないじゃないですか」
「普段で使うんだよ」
「俺も普段で使うんす!」
「先に見つけたのは俺だろ!俺が先に買う!」
「虎徹先輩、今さっきお金ないって言ってませんでしたか?」
「……竹谷くぅん」
「買ってあげません。俺は俺で買います」
「ケチーッ!」

「じゃあ我慢してピン買う」
「これまたファンシーなの選びますね…」
「お洒落だろ?」
「……そう言えば七松先輩とお揃いのピンしてませんでしたか?」
「ああ、あれも買ったの。小平太とお揃いでおでこ出してましたー。格好いいっしょ?」
「食満先輩と善法寺先輩もお揃いのピンしてたし…。中在家先輩はたまに七松先輩とお揃いのゴムで髪の毛結んでましたよね」
「たまに俺と留三郎、伊作の三人お揃いでピンしてるぜ?留三郎器用なんだよなー…」
「立花先輩も潮江先輩とお揃いのピンしてましたよね…。あれはただの嫌がらせでしょうが」
「そうそう!んで、諦めてる文次郎!可愛い先輩だろ?」
「仲はいいなって思います」
「つってもお前らもじゃん。全員お揃いのピンしてなかった?」
「まぁ……」
「やることは同じってな。大事にしようぜ、これからも!」
「っす!」


寄り道しながら当初の目的であるカラオケについて、慣れたように受け付けをすませる。
竹谷とだけじゃなく、小平太や留三郎たちと来るので、店員さんにも名前と顔を覚えられ、「今日はこぼすなよ」と笑われ、鍵を受け取った。


「よっしゃー、歌おうぜ!」
「今日も俺の美声に酔って頂きます!」
「ふっ…甘いな八左ヱ門くん!俺はこの日のために鍛えてきたんですよ!酔うのはお前だー!」


というわけで、カラオケタイムです。
最初っから十八番を歌って、盛り上がる歌を歌って、ふざけてラブソングを竹谷に向けて歌って(爆笑してくれるんだよあいつ)、アニソンに走って…。
あっという間に退室時間がきて撤退。いやー、楽しかった楽しかった!
夜になっても街中を適当にブラついて、可愛い女の子を探して、「おほー」ってなって、妄想して、時に喧嘩を売られ、「ああん?」となったけど竹谷に止められた。


「いやー…今日も楽しかったな!」
「俺も楽しかったです。いい息抜きになりました!」
「おうよ。いっつも頑張ってる竹谷くんのために付き合ってやったんだぜ、感謝しろよな」
「感謝してます。だからこれ…」
「ん?」


さて、そろそろ帰るか。と、ベンチから立ち上がって振り返ると、ゴソゴソと鞄を漁り始めた。
なにしてんだ?
首を傾げながら待っていると、「格好いい」と俺が見つけたリストバンドを取り出して、袋を開けた。


「片方、虎徹先輩にあげます」
「……え?」
「先輩たちだけ、俺らだけのお揃いも嬉しいけど、俺は虎徹先輩とお揃いのものを持っておきたいっす」


恥ずかしそうに笑いながら、一つを俺に渡す。
驚きながら受け取ってジッと見下ろす。うん、やっぱ格好いいわ、このリストバンド。


「………おっまえなぁ…!」
「お揃いっす!」
「そうか、じゃあ大事にしねぇとな!」


俺も恥ずかしくなって照れつつ、貰ったリストバンドをその場でつけた。
どうよ、格好いいだろ?
そういう意味をこめて竹谷に見せると、竹谷もつけて俺に見せてきた。
おう、お前も似合ってんよ!


「虎徹先輩」
「なに?」


今さっきまで照れ臭そうに笑っていたのに、今は少しばかり真剣な表情になって俺を見ていた。
心なしか、泣いているようにも見えた。


「俺、…ほんとあのとき悲しくて、寂しくて…辛くてっ…。忍者として最低な終わりでしたが、後悔だけはしてないんす」
「…うん、ごめんな」
「いえっ、もうそれはいいんです。でも…俺、……虎徹先輩を拒絶しちゃって、記憶とかもっ…」
「それはいいさ。また元に戻ったんだから。気にしてねぇから泣くなよ」
「泣いてないっすよ…。ただ…幸せで…!こんな風に何を気にすることなく遊べるのが幸せなんです。それと同時に怖くなって…」
「大丈夫だって。もう死なねぇよ。一緒におっさんになろうぜ!」
「っはい!もちろんっす!俺、ずっと虎徹先輩のことが好きです!」
「おう、俺も竹谷が好きだぜ!」


不安なら何度だって言ってやるから。だからこれからはあの時代にできなかったことをたくさんしような!





もちもちさんより。
転生ネタでその後のお話。

おまけ。





「虎徹、お前よ。竹谷と仲がいいのは解ったが、街中で告白するのはどうかと思うぜ?」
「は?何言ってんの留三郎」
「街中で竹谷に告白されて、虎徹も告白したって隣の組の子が言ってたよ?」
「はァ!?え、伊作くんまで何言ってんの?確かに告白はしたけど、そう言う意味じゃなくてですね…」
「いや、俺に言われても…。あ、あと今すっげぇ噂たってるから」
「じゃ、竹谷とお幸せに!」
「何言ってんすかお二人とも!違うって。違うんですから誤解しないで下さいよーっ!」


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