夢/30万打 | ナノ

数年に一度の


!注意!
過去話になります。六年生→四年生。
BLではありませんが、接吻しちゃってます。





今日の俺は、絶好調に体調が悪かった。日本語がおかしいのもそのせいだ。
いつも元気よく起きれる朝が辛かった。やけに身体が重く、寒いとも感じた。
いつも大盛りにしてもらうご飯が食べれなかった。それどころか半分以上残して、留三郎にあげた。
おかしいおかしいと思いつつ、先生から頼まれた忍務の準備を整える。


「虎徹、準備はいいか?」
「おお…」


忍務内容は簡単。小平太と一緒にとある山賊をぶっ潰すだけ。
本当は、優秀ない組様である仙蔵と文次郎に任せようとしたらしいが、小平太がそれを聞きつけて、「やる!」の一言で先生から貰ってきた。
俺はそれに便乗。ほら、いくら体力バカの小平太でも、一人で潰すのは危険だろ?別に暴れたいとかそういう理由じゃない。
忍び装束に着替えたあと、月が昇り始めているのを確認して学園を後にする。
場所はすでに頭の中に入れているので、問題なし。


「(やべぇ、苦しい…)」


先を走る小平太の背中がどんどん遠くなり、何だか息も苦しくなって、走るのが辛い。
やっぱり今日の俺はおかしいな…。
それでも遅れまいと必死に小平太の背中を負い、山賊がいる目的の砦へと辿り着いた。
木の上から砦内の様子を窺う小平太。手にはすでに苦無が握られており、いつでも戦闘準備は整っていた。
いつもだったら俺も小刀を持って準備しているのに、今日は何も持っておらず、枝に手をついて息を整えている。
くっそ…吐き気もしてきた…。動けるか?……うん、動けることは動ける。だけど、いつも見たいに戦えねぇな……。
震える手で小刀を取り出し、小平太を見ると、小平太は俺の顔をジッと見ていた。


「なんだ?」
「いや、別に。私は正面から攻めるぞ!虎徹は裏からな」
「解った」


俺の返事を聞く前に小平太は枝から降りて、地面についたと同時に駆け出した。
あいつの跳躍力とか、バネってほんとに凄いよな…。俺ももうちょっと……。


「とか考えてる場合じゃねぇっつーの…」


小刀を握る力をさらに込め、枝から枝に飛んで小平太とは反対側へと向かう。
山賊は十数人。二人なら問題ないと思っていたが、どうやらその情報は間違っているようだった。
裏に向かいながら敵の人数を数えていると、三十人ぐらいいる。気がする…。


「おいおい…大丈夫かよ…」


普段ならこんなこと言わない。寧ろ、「上等」と喜ぶところなのに、何故かそんな言葉がもれた。
自分自身でも気付いておらず、裏へと向かうと数人の見張りを発見。


「(さて……)」


口布をあて、呼吸を整えてから奇襲をかけると、山賊はあっという間に赤く染まっていった。
俺が奇襲をかけると同時に小平太も正面から突撃し、すぐにたくさんの山賊が姿を現わせてくる。
正面、裏と挟み打ちにされているので、驚いて焦ってくれればいいものの…お頭さんはどうやら賢い人のようで、すぐに仲間を二つに分け、抵抗してきた。


「(やばいやばいやばい!背中がゾクゾクするっ…。吐きたい…!)」


敵と交戦しながら、時々フラつく足に力を込める。
足に力を込めると今度は頭がフラフラして、気分が悪くなる。
普段なら食らわないような攻撃も食らってしまい、切り傷から血が流れ出した。
そこが冷たくて…、血が冷たくて寒い。


「(……風邪か…!)」


そしてようやく自分が風邪を引いていることに気がついた。滅多に引かねぇから気付かなかったぜ!
忍務前に気づいて誰かと変わってもらえばよかった。早く帰りたい。辛い。眠たい。気持ち悪い…。
風邪と解った瞬間、さらに身体が重たくなる。
このままじゃ忍務どころか、自分の命が危ない…。


「(一旦離脱!)」


最後の力を振り絞り、使ったことのない煙幕を使ってその場から逃げる。
もしかして逃げるのってこれが初めて?うっわ、マジかよ情けねぇ…。仙蔵にバレたら絶対笑われるぞ。
屋根瓦をつたって逃げていると、派手に暴れている小平太を発見し、矢羽音を飛ばす。
すぐに気付いた小平太は、敵と交戦中にも関わらず首をこちらに向けて笑顔を見せてきた。さすがです…。
交戦していた相手を殴り飛ばしたあと、俺に近づいて一緒に砦から離れることに。
別に小平太は来なくていいんだけど、連絡のためな。
いや、本当は矢羽音で連絡しようと思ったんだけど、何故か来ちまったわけだし。


「どうした虎徹?」
「悪い、俺ちょっと………」


風邪引いた。なんて言えない。なんか言えない。
じゃあなんて伝える?つーか、何を伝えようとした?何で逃げてきたんだ?風邪引いてても倒せよ、俺!なに弱気になってんだよ!


「風邪か?」
「っ違う!」
「そうか?」


砦近くの木の上に逃げて、何をどう伝えようか黙っていると、小首を傾げて聞いてきた。
風邪引いたの本当。なのに出てきた言葉は否定の言葉。
すると小平太は俺の胸元を掴んで、グイッと引きよせる。
ジーッと顔を見るくる小平太。


「顔色が悪いな」
「悪くねぇよ」
「覇気もない」
「ある」
「じゃあ何で逃げてきた?」
「っ…それは…!」
「ふむ…」


一度手を離したあと、頭を下げて「ごめんな」と謝って来た。
ポカンとしている間にまた胸元を掴まれ、思いっきり頭突きをされた。


「ッ!?こ、へい………」
「あとは私に任せろ!」


真っ暗な視界のなか、頼もしい声に安堵したのか、地面に落ちて意識を手放した。


「―――……」
「おっ、起きたか」


寒くて目を覚ませば、真っ暗な視界。まだ寝ているのかと思ったけど、チラチラと月の光りで木々がうつるので森の中だと気づく。


「こへ…?」
「忍務は済ませてきたから安心しろ!」
「……ああ、俺…」
「風邪には勝てんな!」
「…すまん…」
「何が?」


ボサボサの髪の毛のせいで、小平太の表情はよく見えなかったが、大体どんな顔をしているのか想像がつく。
何だかなー…。一人じゃ危ないと思って俺も来たのに、手伝いどころか邪魔してんじゃん…。
それどころか、自分がいてもいなくても小平太にとっては支障ない。
頼もしいなって思う反面、すっげぇ悔しい…。小平太が強いのは知ってるさ。知ってるけど、…こんな…!


「気分悪いのか?」
「…」
「虎徹?」


足を止め、大木の根元に下ろされる。ああ、俺おんぶされてたのか…。
涙が流れていたけど、これは悔しくて泣いてんじゃなく、熱のせいで泣いてんだ。
こんなにも心がモヤモヤすんのも風邪のせいだ。
目を隠しながら荒い呼吸を続けていると、血で汚れた小平太の手が額に触れた。


「大丈夫か?」
「うるせぇ…」
「水汲んでくるから少し待ってろ」


俺の話なんて全く聞かず、葉音だけ残して姿を消す。
森の中は静かで、虫の声しか聞こえない。
座っているのも辛くなったので、横になるとさらに寒気に襲われる。
ガタガタと身体が震えるのを自分の手で抑え、耐え忍ぶ。


「寒いのか?」
「っ…」


気配すらも察することができず、いきなり小平太に話しかけられ身体がビクンと跳ねた。
うっすら目を開けると、水が入った水筒をその場に置いて、上着を脱ぎ始めて俺に羽織らせる。
血で汚れた上着を渡されても、気分が悪ぃだけだし…。
そう思ったけど、もう喋る気も失っているのでされるがまま。


「水飲めるか?」
「…」
「しっかりしろ虎徹。たかが風邪だろ」
「…っせぇ…、滅多にひかねぇから辛い、んだよ…」
「それでも忍びなら耐えろ」
「………」
「ほら水」
「いらねぇ…。帰る」
「…」


無理やり立ち上がろうとして足腰に力を込めたあと、浮遊感に襲われて背中に痛みが走った。
目の前には月と怒っている小平太。
何で頬が膨れてんだ?ガキみたいな怒り方してんじゃねぇぞ。
って言おうとしたら、何故か接吻される。と同時に、喉に何かが流れてきて、それが水だと解ると、身体が勝手に飲み込んでいた。


「全く手がかかるな、虎徹は!」
「………ねぇよ…。今のでさらに悪化した…」
「まぁそういうな!ほら、おぶってやるから学園に帰ろう」
「おう、ちゃんとおぶれ。トドメはお前がさしたんだからな…」
「ははっ、そりゃすまん。学園に帰ったら伊作に頼んで苦い薬を出してもらおうか」
「内緒にしといて下さい七松様。何でもしますから」
「伊作は鼻が鋭いからな。すぐにバレるだろ。我慢しろ我慢!」
「小平太に……、言われると、むかつく、な…」


服を羽織ったまま小平太の背中に乗り、全体重を全て預けた。
それでもしっかりと歩く小平太…。悔しいけど、やっぱりこいつはすげぇよ。
小平太のボサボサ髪に顔を埋めながら、ゆっくりと眠りに落ちた。





はくさんより。
体調が悪いのに小平太と一緒に忍務にでかけ、看病されるお話。



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