後輩自慢 「いい天気だねぇ…。こんなときはピクニックに限る!」 「じゃあ行って来いよ」 「やだーん、そこは「俺と一緒に行こうぜ」って誘ってよー!男魅せるチャンスじゃん」 「あ、俺忙しいで」 「素っ気ない留さんも、す、き」 「うっわ、きめぇ。てか背中押してくんな!あと髪の毛邪魔!」 「だって留三郎の背中って安心するんだもん。いいじゃんいいじゃん、用具のお仕事は邪魔してないんだし」 「暑いんだよバカ犬。ちょっとは離れてろ」 「もー…用具用具って、俺と用具どっちが大事なの!?」 「用具」 「やだ…、ハッキリ言い切っちゃう留三郎男前すぎる。惚れた!抱かせて!」 「お前が抱くのかよ。断る」 「ちぇー…。ところで、委員会どう?うまいことやってる?」 「どっかのバカどもが壁やバレーボールを壊さなかったらうまいこと回る。予算も少ねぇのに壊すな」 「いや、あれはバカ力の小平太が悪いわけであって…」 「誰もお前らのこととは言ってねぇよ。そうか、自覚があったのか…」 「すみません留三郎さん。持ってる金づちを俺に向けないで下さい」 「一発殴らせてくれたら許そう」 「すみません!あ、あーっ、そうだ!用具も下級生ばっかだけど大丈夫なの!?ほら、いっつも大変そうじゃん?」 「あ?ああ、まぁ大変だけど、作兵衛がしっかりしてるし、一年も真面目だし特に問題ねぇよ」 「そ、そう。確かに富松って頼り甲斐あるよな。真面目だし、結構器用そうだし」 「虎徹もそう思うか!?」 「うおっと…。ちょ、いきなり振り返らないでよ」 「そうだなんよ、作兵衛はしっかり者で真面目で、んでもって器用!下級生たちの面倒もよく見てるんだぜ!俺がいなくなっても安心して任せられる!」 「そう…。あの食満さん、ちょっと落ちつきませんか?武闘派の血が燃えてますよ、怖いですよ、うるさいですよ」 「この間も、三年には難しい修繕を任せたんだが、できたんだぜ!まぁ結構時間はかかったが、作兵衛本人も納得した仕上がりだし、何より達成感の顔に俺は癒された!」 「あー、うん。その気持ちは解らんでもないよ。俺も竹谷に色々教えてやってるけど、それができたときは教えてやった俺も嬉しいもんな」 「だろ!?一年生なんて、何かできるたびに「褒めてくれ」って顔を俺に向けるんだぜ!?あー!もうそれ思い出すだけで俺は奴らを抱きしめたくなる!」 「解る解る!一年生はとにかく可愛いよなー!あんな小動物いたら絶対飼うわ。あ、でも竹谷も時々可愛いわ。俺がいなくてもしっかり委員会まとめてくれるんだけど、俺がいたらちょっとドジになったりしてよー。俺がいると気が緩むんだってさ。可愛いだろ!」 「作兵衛のほうが可愛いです」 「あ!?いやいや、富松も可愛いよ!?可愛いけど、今は竹谷の自慢しての!可愛いって言えよ留三郎!」 「作兵衛のほうが可愛いって言ってんだろバーカ!まぁでもあいつは俺がいるとちょっと緊張するんだけどな…。寂しいが、真面目な作兵衛だから仕方ない」 「……留三郎のことが怖いだけだろ。んだよ、嫌われてんじゃん」 「嫌われてねぇよ!そう言う虎徹はバカにされてんだろ!?」 「されてねぇし!どの子も俺のこと慕ってくれてますぅ!特に竹谷は俺のこと超慕ってますぅ!あれ完全俺のわんこちゃんでーす!」 「ぐっ…羨ましい……くなんかねぇ!何で作兵衛の可愛さが解んねぇんだよ虎徹ッ!」 「それより留三郎も竹谷の可愛さ認めろよ!」 「竹谷のどこが可愛いんだよ!お前よりでけぇんだぞ!?作兵衛なんか俺より小さいから、俺と話すときは上目使いでむちゃくちゃ可愛いんだぞ!視線合わせるようにしゃがんだら、ちょっと怒った顔になって「子供扱いしねぇでくだせぇ」って言うんだぜ!あーちきしょう、可愛すぎる!」 「う、うら(やましい…!けど、絶対言ってやんねぇ!)竹谷は身体は大きいけど、態度はわんこなんだよ!大きくあっても、上目使いしてくるし!可愛いし!竹谷のほうが可愛いし!」 「作兵衛のほう可愛い!なんだ、やんのか!?」 「おおっ、やってやろうじゃねぇか!噛みついて「離せ」って言っても離してやんねぇからな!」 「「許して下さい」って泣いて詫びても許さねぇからな!」 「おう富松。珍しいな富松が六年長屋に行くなんて」 「竹谷先輩こそ…。俺は委員会のことで食満先輩に用事があるだけです。じゃなかったら六年長屋に来れないですよ」 「六年長屋は怖ぇもんな」 「あはは、否定できねぇです…」 「なんか声が聞こえるな。虎徹先輩と、」 「食満先輩?」 「虎徹先輩、今日の委員会のことです―――って何されてるんですか!」 「食満先輩!」 「作兵衛、危ねぇからさがっていろ!このバカ犬は見境なく噛みつくみてぇだからな!」 「今は留三郎限定だっつーの!」 「ちょ、ちょっと先輩方!喧嘩ですか!?喧嘩はよくないですって!虎徹先輩、食満先輩の上から降りてください!」 「け、食満先輩も虎徹先輩の髪の毛を引っ張らないで……だからって殴らねぇで下さい!」 「落ちついて下さい虎徹先輩!富松っ、食満先輩を抑えろ!」 「俺じゃ無理っすよ!」 「俺が虎徹先輩を引き離すから、間に立ってくれるだけでいい!お前がいれば暴れないから!」 「えええええ!そんなっ…」 「いいから頼む!虎徹先輩っ!」 「離せ竹谷!この解らず屋のバカは殴らねぇとダメなんだ!」 「作兵衛、そこをどけ!」 「ひいいい!怖い!怖いけどっ……怖いけど喧嘩はダメですって!俺、優しい食満先輩が大好きです!」 「っ…作兵衛…!」 「うわあああ!だ、抱きつかないで下さい!」 「虎徹先輩、とりあえず落ち着いて下さい…。何があったんですか…」 「留三郎がお前の可愛さを全く理解しねぇんだ!こんなにいい子で素直で格好いい後輩なのに…!」 「え…?お、俺…?」 「確かに富松だって可愛いさ!だけど、真面目で人一倍頑張り屋なのは竹谷なんだ!ちょっと情けなかったり、強く言えなかったりするけど、そこもいいとこなんだよ!」 「虎徹先輩っ……俺なんかのために食満先輩と喧嘩を…」 「竹谷先輩っ、喜んでる場合じゃないですって!この状況どうにかしてくださいよーっ!」 結局、作兵衛の悲鳴や突っ込みを聞いた六年生によって、二人の喧嘩は止められました。 「いいかっ、頼れて可愛い後輩は作兵衛だ!」 「いいや、竹谷だ!」 「もー…まだやってるよ…。いい加減にしなよ、二人とも」 「はっ、本当にアホのは組だな。頼れるのは喜八郎だろ。ああ見えて喜八郎もよく考えているからな」 「それを言うなら田村だって…。火器のことになるとちょっと大変だが、しっかり者で真面目だ」 「…雷蔵のほうが……真面目で優秀」 「優秀なら滝夜叉丸だろ?グダグダうるさいがな!」 「……皆まで喧嘩しないでよ。でも、可愛いのは保健委員の皆かな?」 『うちの委員会の子のほうが可愛い!』 ▼ 猫獣さんより。 食満と獣主で後輩自慢のお話。 ( TOPへ △ | ▽ ) |