夢/30万打 | ナノ

後輩自慢


「いい天気だねぇ…。こんなときはピクニックに限る!」
「じゃあ行って来いよ」
「やだーん、そこは「俺と一緒に行こうぜ」って誘ってよー!男魅せるチャンスじゃん」
「あ、俺忙しいで」
「素っ気ない留さんも、す、き」
「うっわ、きめぇ。てか背中押してくんな!あと髪の毛邪魔!」
「だって留三郎の背中って安心するんだもん。いいじゃんいいじゃん、用具のお仕事は邪魔してないんだし」
「暑いんだよバカ犬。ちょっとは離れてろ」
「もー…用具用具って、俺と用具どっちが大事なの!?」
「用具」
「やだ…、ハッキリ言い切っちゃう留三郎男前すぎる。惚れた!抱かせて!」
「お前が抱くのかよ。断る」
「ちぇー…。ところで、委員会どう?うまいことやってる?」
「どっかのバカどもが壁やバレーボールを壊さなかったらうまいこと回る。予算も少ねぇのに壊すな」
「いや、あれはバカ力の小平太が悪いわけであって…」
「誰もお前らのこととは言ってねぇよ。そうか、自覚があったのか…」
「すみません留三郎さん。持ってる金づちを俺に向けないで下さい」
「一発殴らせてくれたら許そう」
「すみません!あ、あーっ、そうだ!用具も下級生ばっかだけど大丈夫なの!?ほら、いっつも大変そうじゃん?」
「あ?ああ、まぁ大変だけど、作兵衛がしっかりしてるし、一年も真面目だし特に問題ねぇよ」
「そ、そう。確かに富松って頼り甲斐あるよな。真面目だし、結構器用そうだし」
「虎徹もそう思うか!?」
「うおっと…。ちょ、いきなり振り返らないでよ」
「そうだなんよ、作兵衛はしっかり者で真面目で、んでもって器用!下級生たちの面倒もよく見てるんだぜ!俺がいなくなっても安心して任せられる!」
「そう…。あの食満さん、ちょっと落ちつきませんか?武闘派の血が燃えてますよ、怖いですよ、うるさいですよ」
「この間も、三年には難しい修繕を任せたんだが、できたんだぜ!まぁ結構時間はかかったが、作兵衛本人も納得した仕上がりだし、何より達成感の顔に俺は癒された!」
「あー、うん。その気持ちは解らんでもないよ。俺も竹谷に色々教えてやってるけど、それができたときは教えてやった俺も嬉しいもんな」
「だろ!?一年生なんて、何かできるたびに「褒めてくれ」って顔を俺に向けるんだぜ!?あー!もうそれ思い出すだけで俺は奴らを抱きしめたくなる!」
「解る解る!一年生はとにかく可愛いよなー!あんな小動物いたら絶対飼うわ。あ、でも竹谷も時々可愛いわ。俺がいなくてもしっかり委員会まとめてくれるんだけど、俺がいたらちょっとドジになったりしてよー。俺がいると気が緩むんだってさ。可愛いだろ!」
「作兵衛のほうが可愛いです」
「あ!?いやいや、富松も可愛いよ!?可愛いけど、今は竹谷の自慢しての!可愛いって言えよ留三郎!」
「作兵衛のほうが可愛いって言ってんだろバーカ!まぁでもあいつは俺がいるとちょっと緊張するんだけどな…。寂しいが、真面目な作兵衛だから仕方ない」
「……留三郎のことが怖いだけだろ。んだよ、嫌われてんじゃん」
「嫌われてねぇよ!そう言う虎徹はバカにされてんだろ!?」
「されてねぇし!どの子も俺のこと慕ってくれてますぅ!特に竹谷は俺のこと超慕ってますぅ!あれ完全俺のわんこちゃんでーす!」
「ぐっ…羨ましい……くなんかねぇ!何で作兵衛の可愛さが解んねぇんだよ虎徹ッ!」
「それより留三郎も竹谷の可愛さ認めろよ!」
「竹谷のどこが可愛いんだよ!お前よりでけぇんだぞ!?作兵衛なんか俺より小さいから、俺と話すときは上目使いでむちゃくちゃ可愛いんだぞ!視線合わせるようにしゃがんだら、ちょっと怒った顔になって「子供扱いしねぇでくだせぇ」って言うんだぜ!あーちきしょう、可愛すぎる!」
「う、うら(やましい…!けど、絶対言ってやんねぇ!)竹谷は身体は大きいけど、態度はわんこなんだよ!大きくあっても、上目使いしてくるし!可愛いし!竹谷のほうが可愛いし!」
「作兵衛のほう可愛い!なんだ、やんのか!?」
「おおっ、やってやろうじゃねぇか!噛みついて「離せ」って言っても離してやんねぇからな!」
「「許して下さい」って泣いて詫びても許さねぇからな!」

「おう富松。珍しいな富松が六年長屋に行くなんて」
「竹谷先輩こそ…。俺は委員会のことで食満先輩に用事があるだけです。じゃなかったら六年長屋に来れないですよ」
「六年長屋は怖ぇもんな」
「あはは、否定できねぇです…」
「なんか声が聞こえるな。虎徹先輩と、」
「食満先輩?」
「虎徹先輩、今日の委員会のことです―――って何されてるんですか!」
「食満先輩!」

「作兵衛、危ねぇからさがっていろ!このバカ犬は見境なく噛みつくみてぇだからな!」
「今は留三郎限定だっつーの!」
「ちょ、ちょっと先輩方!喧嘩ですか!?喧嘩はよくないですって!虎徹先輩、食満先輩の上から降りてください!」
「け、食満先輩も虎徹先輩の髪の毛を引っ張らないで……だからって殴らねぇで下さい!」
「落ちついて下さい虎徹先輩!富松っ、食満先輩を抑えろ!」
「俺じゃ無理っすよ!」
「俺が虎徹先輩を引き離すから、間に立ってくれるだけでいい!お前がいれば暴れないから!」
「えええええ!そんなっ…」
「いいから頼む!虎徹先輩っ!」
「離せ竹谷!この解らず屋のバカは殴らねぇとダメなんだ!」
「作兵衛、そこをどけ!」
「ひいいい!怖い!怖いけどっ……怖いけど喧嘩はダメですって!俺、優しい食満先輩が大好きです!」
「っ…作兵衛…!」
「うわあああ!だ、抱きつかないで下さい!」
「虎徹先輩、とりあえず落ち着いて下さい…。何があったんですか…」
「留三郎がお前の可愛さを全く理解しねぇんだ!こんなにいい子で素直で格好いい後輩なのに…!」
「え…?お、俺…?」
「確かに富松だって可愛いさ!だけど、真面目で人一倍頑張り屋なのは竹谷なんだ!ちょっと情けなかったり、強く言えなかったりするけど、そこもいいとこなんだよ!」
「虎徹先輩っ……俺なんかのために食満先輩と喧嘩を…」
「竹谷先輩っ、喜んでる場合じゃないですって!この状況どうにかしてくださいよーっ!」


結局、作兵衛の悲鳴や突っ込みを聞いた六年生によって、二人の喧嘩は止められました。


「いいかっ、頼れて可愛い後輩は作兵衛だ!」
「いいや、竹谷だ!」

「もー…まだやってるよ…。いい加減にしなよ、二人とも」
「はっ、本当にアホのは組だな。頼れるのは喜八郎だろ。ああ見えて喜八郎もよく考えているからな」
「それを言うなら田村だって…。火器のことになるとちょっと大変だが、しっかり者で真面目だ」
「…雷蔵のほうが……真面目で優秀」
「優秀なら滝夜叉丸だろ?グダグダうるさいがな!」
「……皆まで喧嘩しないでよ。でも、可愛いのは保健委員の皆かな?」
『うちの委員会の子のほうが可愛い!』




猫獣さんより。
食満と獣主で後輩自慢のお話。


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