夢/30万打 | ナノ

大事な後輩?


!注意!
BL入ります。獣主×竹谷で、獣主→竹谷傾向です。





「では俺はこれで。すみません、忙しいときに…」
「いいって、気にすんな。しっかり挨拶してこいよな!」
「はい。ありがとうございます!」


荷物を背負った竹谷が頭を下げ、背中を向けて忍術学園から離れていくのを生物委員会のメンバー全員で見送って、委員会活動へと戻る。


「それにしても突然だったよねぇ…。なんだったんだろ」
「団蔵んちの馬借特急便だったし、余程重要なことだろ」


ついさっき、加藤村の馬借が学園にやってきて、竹谷に手紙を渡した。
何かと思えば、「結婚」の話。
竹谷もビックリしてたけど、それを相談された俺もビックリした。
詳しくはわかんねぇけど、竹谷の両親が結婚相手を見つけてきたらしい…。その人が今日やって来るから、早急に帰宅するように。との内容。
いきなりだったし、「どうすれば」と慌てる竹谷を見て、胸がモヤッとする。
何でだろうな。意味もなくイライラしてしまって、その手紙を破り捨ててやりたくなる。
その感情を抑えて、「帰って来いよ」と言ってやる。とりあえず、手紙の内容だけじゃ意味わかんねぇからな。実家に帰ってしっかり聞いてこい。
山犬の出産を控えているので生物委員会は大忙しだが、俺は何度も体験しているし、下級生たちも「やりたい」と言ってくれたから問題はない。
竹谷は申し訳ないように頭を下げて、何度もお礼を言った。


「さ、もう夜遅いからお前らは帰れ。夜は俺が面倒見るからさ」
「虎徹先輩、赤ちゃんが産まれたら起こしてくださいね」
「おうよ、一平ちゃん。虎若と三治郎と孫次郎も起こしてやるからな!」
「「「はいっ」」」
「孫兵、下級生任せてもいいか?」
「はい。では失礼します」
「お前も起こしてやるからな」
「お願いします」


今日の委員会も無事に終わり、残った俺は一人で山犬の隣に寄り添い、頭を撫でてやる。
まだ産みそうじゃないから大丈夫。
チラリと隣を見るも、そこには誰もいない。いつもだったら竹谷がいて、夜も一緒に付き添ってんだけど、今日はいない。


「なんだろうなぁ…」


竹谷の奴、結婚すんのか?早すぎ……じゃねぇんだよなぁ…。普通なんだよな。
でもよ、あいつは忍者になりてぇんだぞ?じゃあやっぱり結婚なんて早いだろ!
しかも結婚したら、あいつと遊ぶ機会がなくなるってことだよな?


「………」


ふざけんなよ。と思わず声に出しそうになったのを、飲み込む。
どこの誰かわかんねぇ女がいきなり現れて、俺の大事な後輩を持っていくのか?お前より俺のほうが竹谷のこと知ってんだぞ?
結婚して、俺の隣からいなくなると思うとモヤモヤ、というより、ポカンと穴があいた。何も考えられねぇぐらい、苦しい。
は、何で…?可愛い後輩だからか?ずっと隣にいた奴がいなくなるからだよな?恋愛感情じゃねぇよな?……は!?恋愛感情!?竹谷は男だぞ!?
え、なに。俺ってば男もいけたの?あははー…んなことねぇよ。俺は女の子が大好きさ。


「…でもなぁ…」


竹谷が誰か知らねぇ女と並んでいるのを想像した瞬間、忍者としての俺が表に出そうになった。
思わず殺気を飛ばしてしまい、山犬が震えている。
焦って殺気を消して、笑いながら頭を撫でて安心させてやる。ご、ごめんな…!
そのまま空を見上げると、月が沈みかけているのに気付く。ああ、結構時間が経ってんだな。
そろそろ夜更けがきそうだったので、少しだけ仮眠をとろうと山犬の横に寝転ぶと、誰かが土を蹴る音をたてた。


「あ、いた!」
「……竹谷…?」
「お疲れ様です、虎徹先輩」


月明かりで誰か確認でき、名前を呼ぶといつもと変わらない笑顔を浮かべて近づいてくる。
その笑顔を見た途端、ホッと胸をなでおろす。……なんで?意味わかんねぇよ…!いつも見てるだろ!


「は、早かったな」
「ええまぁ」


苦笑しながら俺の横に座り、山犬の頭を撫でてやる竹谷にまたイラッとする。
いつもだったら何があったかうざいぐらい報告してくるくせに、何で今日に限っては隠そうとすんだ?


「で、どうだったんだ?」
「いやぁ……。なんつーか……あはは…」
「んだよ、隠してねぇで話せよ。それとも俺には話せねぇのか?」


やばい、口調がどんどん強くなってってる…。
イライラを抑えることができず、竹谷の顔を見ないままそんなことを言ってしまうと、竹谷は一度黙って、ゆっくり喋り出した。


「……両親が心配してるんす。ほら、この道っていつ死ぬか解らないじゃないですか…」
「…」
「だから、早く結婚して、子供だけは残しとけって…。あの、言い方はあれですが、子供が俺と弟の二人しかいないから親も心配なんすよ。無理言って学園に通わせて貰ってるんすから、結婚ぐらいならって…思って……。あの、…虎徹先輩怒ってますか?」
「は?別に怒ってねぇよ。両親が言うことも正しいだろ」
「そうっすか…。なんか、怒ってるように見えて…」
「だからッ、怒ってねぇって言ってんだろ!」


怒ってねぇのに何度もそんなこと言うなよ腹立つ!
胸倉を掴んで睨みつけると、焦って俺を見てくる竹谷。


「―――」


その焦る目に欲情した。
キョロキョロと目を泳がし、少しだけ潤ませて困っている顔に欲情した結果、身体が勝手に動いて竹谷の唇を奪う。
うん、女と同じで柔らかい。
すぐに唇と胸倉の手を離してやると、目を見開いて驚いてる竹谷が視界にうつった。
その顔を見て自然と目を細めると竹谷の肩が飛び跳ね、俺から少し離れる。


「………え、……な、に…?虎徹せんぱい…?」
「絶対死なないって言えば、結婚する必要ねぇだろ?」
「…は?」
「お前が、両親が亡くなるまで死ななければ問題ねぇじゃんって言ってんの」
「……いや、でも…」
「竹谷家の血は弟くんに任せろ」
「虎徹、先輩。あの、先ほどから意味がよく…」
「お前は俺が守る。絶対に死なさねぇ。だから結婚なんてすんな。それから、」


離れた竹谷の胸倉を再度掴んで、接吻できるぐらいまで引き寄せて目を細める。
ああ、ちょっと怖がってる目もたまんねぇなぁ。こいつって嗜虐心煽るのうめぇわ。俺、こいつのこういうとこがたまんなく好き。


「俺しか見れねぇぐらいにしつけてやるから覚悟しとけよ?」


動かなくなった竹谷の顎を掴んで、唇に噛みついてやった。





スィ子さんと匿名さんへ。
獣主が竹谷に恋愛感情を抱いて葛藤するお話。

短すぎたので、おまけ。





「竹谷ー」
「っはい!」
「今晩も山犬に付き添うだろ?俺も付き添うから布とか持ってこいよ。今晩は冷えるみてぇだぞ」
「わ、解りました…!」
「何だよ、出産に付き添うなんて初めてじゃねぇだろ?なにビビってんだよバーカ」
「い、いえ…そういう意味じゃなく「それとも、俺と二人っきりになるのがそんなに怖い?」っ違います!」
「へえ、じゃあ嬉しいんだ?そうか、そうか。勿論、俺も嬉しいぜ。大好きな八左ヱ門と一緒にいられるのは、接吻したくなるほど嬉しい」
「あ…の……。ち、近いっす…」
「別に普通だろ?いちいち反応すんなよ。それとも煽ってんの?俺が、嫌がれば嫌がるだけ興奮するの知ってるから煽ってんの?」
「そんなことはないっす…。でも……ちょっと…」
「(うっわ、噛みつきてぇ。噛みついて息止めたい。喉とか肩にも噛みついて跡残してぇなぁ…。絶対泣くだろ。泣いたらもっと止まんねぇのに、まいったまいった)ってなわけで八左ヱ門」
「は、はいっ!?」
「今晩楽しみにしとくから、ちゃんと覚悟して来てね?」
「覚悟!?あの、覚悟って…なんの……ですか…?」
「そりゃあ夜の狼さんのところに来る覚悟だよ」
「っ…!あ、……俺…っ、やっぱり…」
「ハチ、ちゃんと来るよね?」
「………はい…」
「うん、いい子だね八左ヱ門は。大丈夫、ちょっと可愛がるだけだから」
「あ……(先輩の優しい笑顔…は好きなんだけど…な…。意地悪な先輩は怖いし、歯向かえなくなるから…苦手だ…)」
「まぁ俺なりの可愛がりだけど」
「うっ…!(でも、自慢したいぐらい格好いいんだよな…)」


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