大事な後輩? !注意! BL入ります。獣主×竹谷で、獣主→竹谷傾向です。 「では俺はこれで。すみません、忙しいときに…」 「いいって、気にすんな。しっかり挨拶してこいよな!」 「はい。ありがとうございます!」 荷物を背負った竹谷が頭を下げ、背中を向けて忍術学園から離れていくのを生物委員会のメンバー全員で見送って、委員会活動へと戻る。 「それにしても突然だったよねぇ…。なんだったんだろ」 「団蔵んちの馬借特急便だったし、余程重要なことだろ」 ついさっき、加藤村の馬借が学園にやってきて、竹谷に手紙を渡した。 何かと思えば、「結婚」の話。 竹谷もビックリしてたけど、それを相談された俺もビックリした。 詳しくはわかんねぇけど、竹谷の両親が結婚相手を見つけてきたらしい…。その人が今日やって来るから、早急に帰宅するように。との内容。 いきなりだったし、「どうすれば」と慌てる竹谷を見て、胸がモヤッとする。 何でだろうな。意味もなくイライラしてしまって、その手紙を破り捨ててやりたくなる。 その感情を抑えて、「帰って来いよ」と言ってやる。とりあえず、手紙の内容だけじゃ意味わかんねぇからな。実家に帰ってしっかり聞いてこい。 山犬の出産を控えているので生物委員会は大忙しだが、俺は何度も体験しているし、下級生たちも「やりたい」と言ってくれたから問題はない。 竹谷は申し訳ないように頭を下げて、何度もお礼を言った。 「さ、もう夜遅いからお前らは帰れ。夜は俺が面倒見るからさ」 「虎徹先輩、赤ちゃんが産まれたら起こしてくださいね」 「おうよ、一平ちゃん。虎若と三治郎と孫次郎も起こしてやるからな!」 「「「はいっ」」」 「孫兵、下級生任せてもいいか?」 「はい。では失礼します」 「お前も起こしてやるからな」 「お願いします」 今日の委員会も無事に終わり、残った俺は一人で山犬の隣に寄り添い、頭を撫でてやる。 まだ産みそうじゃないから大丈夫。 チラリと隣を見るも、そこには誰もいない。いつもだったら竹谷がいて、夜も一緒に付き添ってんだけど、今日はいない。 「なんだろうなぁ…」 竹谷の奴、結婚すんのか?早すぎ……じゃねぇんだよなぁ…。普通なんだよな。 でもよ、あいつは忍者になりてぇんだぞ?じゃあやっぱり結婚なんて早いだろ! しかも結婚したら、あいつと遊ぶ機会がなくなるってことだよな? 「………」 ふざけんなよ。と思わず声に出しそうになったのを、飲み込む。 どこの誰かわかんねぇ女がいきなり現れて、俺の大事な後輩を持っていくのか?お前より俺のほうが竹谷のこと知ってんだぞ? 結婚して、俺の隣からいなくなると思うとモヤモヤ、というより、ポカンと穴があいた。何も考えられねぇぐらい、苦しい。 は、何で…?可愛い後輩だからか?ずっと隣にいた奴がいなくなるからだよな?恋愛感情じゃねぇよな?……は!?恋愛感情!?竹谷は男だぞ!? え、なに。俺ってば男もいけたの?あははー…んなことねぇよ。俺は女の子が大好きさ。 「…でもなぁ…」 竹谷が誰か知らねぇ女と並んでいるのを想像した瞬間、忍者としての俺が表に出そうになった。 思わず殺気を飛ばしてしまい、山犬が震えている。 焦って殺気を消して、笑いながら頭を撫でて安心させてやる。ご、ごめんな…! そのまま空を見上げると、月が沈みかけているのに気付く。ああ、結構時間が経ってんだな。 そろそろ夜更けがきそうだったので、少しだけ仮眠をとろうと山犬の横に寝転ぶと、誰かが土を蹴る音をたてた。 「あ、いた!」 「……竹谷…?」 「お疲れ様です、虎徹先輩」 月明かりで誰か確認でき、名前を呼ぶといつもと変わらない笑顔を浮かべて近づいてくる。 その笑顔を見た途端、ホッと胸をなでおろす。……なんで?意味わかんねぇよ…!いつも見てるだろ! 「は、早かったな」 「ええまぁ」 苦笑しながら俺の横に座り、山犬の頭を撫でてやる竹谷にまたイラッとする。 いつもだったら何があったかうざいぐらい報告してくるくせに、何で今日に限っては隠そうとすんだ? 「で、どうだったんだ?」 「いやぁ……。なんつーか……あはは…」 「んだよ、隠してねぇで話せよ。それとも俺には話せねぇのか?」 やばい、口調がどんどん強くなってってる…。 イライラを抑えることができず、竹谷の顔を見ないままそんなことを言ってしまうと、竹谷は一度黙って、ゆっくり喋り出した。 「……両親が心配してるんす。ほら、この道っていつ死ぬか解らないじゃないですか…」 「…」 「だから、早く結婚して、子供だけは残しとけって…。あの、言い方はあれですが、子供が俺と弟の二人しかいないから親も心配なんすよ。無理言って学園に通わせて貰ってるんすから、結婚ぐらいならって…思って……。あの、…虎徹先輩怒ってますか?」 「は?別に怒ってねぇよ。両親が言うことも正しいだろ」 「そうっすか…。なんか、怒ってるように見えて…」 「だからッ、怒ってねぇって言ってんだろ!」 怒ってねぇのに何度もそんなこと言うなよ腹立つ! 胸倉を掴んで睨みつけると、焦って俺を見てくる竹谷。 「―――」 その焦る目に欲情した。 キョロキョロと目を泳がし、少しだけ潤ませて困っている顔に欲情した結果、身体が勝手に動いて竹谷の唇を奪う。 うん、女と同じで柔らかい。 すぐに唇と胸倉の手を離してやると、目を見開いて驚いてる竹谷が視界にうつった。 その顔を見て自然と目を細めると竹谷の肩が飛び跳ね、俺から少し離れる。 「………え、……な、に…?虎徹せんぱい…?」 「絶対死なないって言えば、結婚する必要ねぇだろ?」 「…は?」 「お前が、両親が亡くなるまで死ななければ問題ねぇじゃんって言ってんの」 「……いや、でも…」 「竹谷家の血は弟くんに任せろ」 「虎徹、先輩。あの、先ほどから意味がよく…」 「お前は俺が守る。絶対に死なさねぇ。だから結婚なんてすんな。それから、」 離れた竹谷の胸倉を再度掴んで、接吻できるぐらいまで引き寄せて目を細める。 ああ、ちょっと怖がってる目もたまんねぇなぁ。こいつって嗜虐心煽るのうめぇわ。俺、こいつのこういうとこがたまんなく好き。 「俺しか見れねぇぐらいにしつけてやるから覚悟しとけよ?」 動かなくなった竹谷の顎を掴んで、唇に噛みついてやった。 ▼ スィ子さんと匿名さんへ。 獣主が竹谷に恋愛感情を抱いて葛藤するお話。 短すぎたので、おまけ。 「竹谷ー」 「っはい!」 「今晩も山犬に付き添うだろ?俺も付き添うから布とか持ってこいよ。今晩は冷えるみてぇだぞ」 「わ、解りました…!」 「何だよ、出産に付き添うなんて初めてじゃねぇだろ?なにビビってんだよバーカ」 「い、いえ…そういう意味じゃなく「それとも、俺と二人っきりになるのがそんなに怖い?」っ違います!」 「へえ、じゃあ嬉しいんだ?そうか、そうか。勿論、俺も嬉しいぜ。大好きな八左ヱ門と一緒にいられるのは、接吻したくなるほど嬉しい」 「あ…の……。ち、近いっす…」 「別に普通だろ?いちいち反応すんなよ。それとも煽ってんの?俺が、嫌がれば嫌がるだけ興奮するの知ってるから煽ってんの?」 「そんなことはないっす…。でも……ちょっと…」 「(うっわ、噛みつきてぇ。噛みついて息止めたい。喉とか肩にも噛みついて跡残してぇなぁ…。絶対泣くだろ。泣いたらもっと止まんねぇのに、まいったまいった)ってなわけで八左ヱ門」 「は、はいっ!?」 「今晩楽しみにしとくから、ちゃんと覚悟して来てね?」 「覚悟!?あの、覚悟って…なんの……ですか…?」 「そりゃあ夜の狼さんのところに来る覚悟だよ」 「っ…!あ、……俺…っ、やっぱり…」 「ハチ、ちゃんと来るよね?」 「………はい…」 「うん、いい子だね八左ヱ門は。大丈夫、ちょっと可愛がるだけだから」 「あ……(先輩の優しい笑顔…は好きなんだけど…な…。意地悪な先輩は怖いし、歯向かえなくなるから…苦手だ…)」 「まぁ俺なりの可愛がりだけど」 「うっ…!(でも、自慢したいぐらい格好いいんだよな…)」 ( TOPへ △ | ▽ ) |