食満家の休日 「もうっ、留三郎いい加減にしろよ!」 本日は日曜日。 留三郎も子供たちもお休みな日曜日は、戦争が起こる。 まず、娘の争奪戦が始まる。 大抵次男が漁夫の利で勝つんだけど、今日は留三郎が勝った。 朝から娘にデレデレしている留三郎を、誰が武闘派だと思うだろうか…。それぐらいだらしない。 留三郎が娘を勝ちとれば、不機嫌になるのは長男。長男も妹を溺愛しているから仕方ないんだけど、ちょっとシスコンが強い。 次男も楽しくなさそうな顔するものの、長男ほどではない。 可哀想だったので、長男を膝の上に乗せて頭を撫でてあげると、顔を真っ赤にさせながら「な、なんだよー!」とちょっとだけ抵抗する。 逃げる様子はないので、そのまま可愛がってると、次男もやってきた。 男の子は母親を鬱陶しがるとか、恥ずかしくて甘えてこないとか言うけど、我が家の息子たちはそんなことない。 可愛くて私もだらしない顔をしていると、娘を抱っこした留三郎がやってきた。 何も言うことなく私に娘を抱っこさせ、後ろに腰を下ろして抱き締める。で、私を抱き締めたままテレビを見ていると、長男がそんなことを言って立ち上がった。 「どうしたの、いきなり」 「父ちゃんはずるい!妹だけじゃなく母ちゃんも取るんだから!」 「取るも何も、名前1は俺のだろ?」 「今の母ちゃんはオレのだ!父ちゃんは向こう行ってろよ!」 「我儘言ってんじゃねぇぞ。名前1も娘も俺のだ!」 「ちょっと留三郎…。それはちょっと言いすぎだよ…」 長男は留三郎を小さくしたみたいに、そっくりだ。性格は違うのかと思えば、性格も一緒だ。 負けず嫌いで、好戦的。そしてちょっとおバカで、泣き虫なところも…。 留三郎の言葉に長男は目を吊り上げ、拳を握りしめてプルプル震えている。 留三郎はちょっと大人気ないよね。あんなこと言うけど、息子も可愛くて仕方ないくせに。 「母ちゃんっ、母ちゃんはオレのこと好きだよな!?」 「うん、私も好きだよ。ほら、泣かないで」 「オレ、泣いてねぇし!オレ強いからぜってぇ泣かねぇし!」 目じりに涙を溜めているのにそんなことを言うものだから、思わずフッと笑ってしまい、長男は涙をこぼして泣きだした。 「オレ泣いてねぇもん!母ちゃんのバカッ」 「はいはい、泣いてないね。強い子だもんね」 グスングスンと鼻を鳴らしながらお腹に抱きついてきたので、娘を留三郎に預けて背中を擦ってあげる。 それを今まで黙って見ていた次男もそっ…と身体を預けて、私に甘えてくる。 次男は長男ほど好戦的でも、負けず嫌いでもないが、実は甘えたがりなのを知っている。感情表現を出すのが苦手なんだよね…。 だから次男も抱き締めてあげると、嬉しそうな照れ臭そうな笑顔を見せてくれた。 「名前1ー、あんまり甘やかすなよー」 「甘やかしてないよ?」 「いーや、甘やかしてる!男はもっと厳しいほうがいいんだ!」 「えー…。でも私だって息子を可愛がりたいんだよ?」 「……じゃあ俺を甘やかしたらいいだろ!」 「留三郎はダメ!母ちゃんが甘やかしていいのはオレと弟と妹だけ!」 「だからっ、名前1は俺のでもあるって言ってんだろ!」 「父ちゃんはゼイタクしすぎなんだよ!母ちゃんからはなれろよ!」 「絶対ぇ離れねぇし!名前1は俺のことが大好きで大好きで仕方ねぇから嬉しいよな!?」 「母ちゃんはオレと弟と妹のほうが好きだもん!だから、父ちゃんより嬉しいよね!?」 「名前1!」 「母ちゃん!」 とても嬉しい言い争いに、何も答えることなく笑顔のままでその日は過ごしました。 もー…すっごい幸せ! ▼ アスカさんより。 食満家で嫁めぐりのお話。 短かったのでおまけ。 お昼ご飯。 「ほら、口が汚れてるよ」 「とって!」 「もー…。しょうがないねぇ」 「名前1、甘やかしすぎだぞ!自分でとらせろ!」 「だってどこについてるかわかんねぇもーん」 「この野郎…!」 「母さん、ぼくもついてる?」 「うん、ここついてるよ」 「と、とって…?」 「はいはい」 「名前1!」 「ちょっとぐらいいいじゃない。ほら、娘にご飯食べさせてあげないの?」 「パァパ!」 「お前らあとから覚えとけよ…!」 お昼寝。 「母ちゃんの横はオレとこいつな!で、オレの横が妹で、そのとなりが父ちゃんな!」 「名前1から一番遠いじゃねぇか!」 「父さん。ボク、母さんの横で寝たい」 「ぐっ…!」 「それに、父ちゃんは毎日母ちゃんとねてんだろ?ちょっとはガマンしろー!」 「まぁ…、子供の言うことも一理あるしね?お昼寝ぐらいいいよね、留三郎」 「小首傾げんなよちきしょー…。可愛いだろ!」 「母ちゃんだっこー!」 「母さんだっこ…!」 「二人とも可愛い!」 「でもやっぱムカつく!」 お風呂。 「どうせなら全員で一緒に入ればいいだろ!」 「そこまで広くないし、しょうがないよ。母親は息子と、父親は娘と親睦を深めようと思います」 「名前1、お前ノリノリだろ」 「そりゃあ…。留三郎といちゃいちゃしたいとは思うけど、甘えてくる息子たちは可愛いもん…」 「俺はお前が可愛いと思う!」 「ありがとう、留三郎。留三郎は格好いいよ!」 「っじゃあ!」 「でも今日は息子二人と入る」 「名前1ー!」 「(ちょっと泣きそうな留三郎可愛いっ)」 ( TOPへ △ | ▽ ) |