夢/30万打 | ナノ

七夕にお願い


七夕にお願いをしました。



●久々知家のバヤイ

「兵助は七夕のお願いもう書いた?」
「書いた」
「どれ。『豆腐に囲まれたい』……やっぱり豆腐かい…」
「俺は豆腐を愛している!」
「でも父さん、もうはんなりさん豆腐のぬいぐるみに囲まれてるじゃないか」
「いいか、あれは観賞用だ。俺が言っているのは、食べる豆腐にだ。いや、食べる豆腐も勿論観賞用に入るんだが」
「それ長くなる?」
「……俺の息子が冷たい…」
「兵助が豆腐豆腐って言ってるからだよ。豆腐に愛してるって言うしさー…。ねー?」
「うん。父さんは俺らより豆腐のほうが好きなんだ」
「っそんなことない!豆腐も好きだが、お前らだって好きだ。愛してる」
「だって、よかったね」
「母さんこそ。よかったね」
「…何だか反応が冷たくないか?……お、俺はいい旦那にも、父親にもなれてないのだろうか…。どうすれば……っ!はっ、こういうときは勘ちゃんに電話して…」
「もう、また勘右衛門に頼って…。ちょっとは兵助で考えたらどう?」
「勘右衛門さんも忙しいんだよ」
「うっ…。………じゃ、じゃあ…抱き締めてもいいか…?」
「いちいち聞くのが真面目だよね」
「うん」
「ダメだったか!?」
「あはは、そうじゃないよ。そんなこと言わないで行動してほしいって言いたいの。はい!」(ギュッ)
「っ名前1…!」
「ほらおいで。今の兵助なら逃げないよ」
「俺はいつも逃げないぞ!?」
「……」(ぎゅ)
「このままであれだけど、この子のお願い聞いてくれる?」
「お願い?何だ、俺にできることか?」
「うん。兵助にしかできないこと。ほら」
「………『頭なでてほしい』」
「何だ、そんなことか。いつでも撫でてやるぞ。よしよし」
「…っ!」
「(兵助も不器用で真面目だけど、この子も不器用で真面目だよね。似たもの親子とはまさに二人のことだ)」
「名前1に似て可愛いよな」
「嬉しいけど違うよ父さん。母さんは綺麗なんだ」
「え?あ……、ありがとう…。(サラリとそんなことを言うとこまで似なくても…。嬉しいけどね)」

『今年も家族三人、仲良く幸せに暮らせますように』



●尾浜家のバヤイ

「よーし、ちゃんと書いたかー?」
「父さん、父さん!これでどうっ!?」
「なになに…。『甘いものたくさん食べたい』?お前さぁ、もうちょっと望みは高く持とうよ。こんなのいつものお前じゃん」
「だって食べたいんだもん!」
「そんなこと言うなら俺だって名前1を食べたい!」
「勘右衛門!なに言ってんの!?バカなこと言ってないでさっさと吊るしちゃって!」
「バカなことじゃないもーん。名前1は甘くて、柔らかくて、中も最高に「勘右衛門ッ!」ったぁ!今本気で殴ったでしょ!?」
「ええ、殴りましたとも!子供の前で変なこと言わないでよ!」
「大丈夫だよ母さん!おれ、全部わかってるから!」
「解らなくていいの!それぐらいの年齢で全部解らなくていいの!」
「いいかー、女の子には優しく接するんだぞ。相手の気持ちをよぉく理解して、欲しがってる言葉を見つけてあげるんだ。それができたらお前もモッテモテー!」
「モッテモテー!あ、七夕それに変えよーっと。『女の子にモテますよーに』…。父さん、これでどう!?」
「よしよし、それでこそ俺の息子だね!可愛い女の子と付き合ったらすぐに連れてくるんだぞー?」
「もっちろん!何人までなら大丈夫?」
「んー……お前ぐらいの年だったら…五人、いや…三人まで!」
「解った。じゃあ四人連れてくる!」
「うっわー、この子超こわーい!将来ゆうぼー!」
「……はぁ…何でこんなにそっくりになったんだが…」
「え、でも息子が女の子にモテてたら嬉しいでしょ?」
「嬉しいでしょ?」
「そりゃあ嬉しいよ。嬉しいけど。………まだ私の息子でいてほしいもん…」
「なにそれーっ。名前1超可愛い!俺にもそんなこと言って!束縛してーっ!」
「父さん、母さんから離れて!おれの母さん超可愛い!おれ母さんの恋人になるー!」
「はぁ?名前1は俺の恋人ですけどぉ?お前が生まれる何年も前から俺のですぅ。だから離れるのはお前な?」
「だからなに?父さんが母さんを愛してるのは知ってるけど、母さんと長い時間一緒にいるのはおれのほうだよ?おれのほうが好きだし?」
「あ?なに調子乗ってんの?優しく言ってるうちに止めとけよ?」
「だって昨日も一緒にお風呂に入ったし、一緒に寝てるもーん!母さんはおれのほうが好きってことじゃん!」
「そ、れは……名前1がダメだって言うから…!本当は俺が#名前#とお風呂に入って、一緒に寝るんだよ!お前だって妹か弟欲しいだろ!?」
「欲しいけどまだいりませんー。それに、母さんと二人っきりにしたらセックスするだろ!そんなの許さない!」
「夜なんだからするに決まってるじゃん!解ってんなら邪魔すんなよっ。空気読んで自分の部屋に行け!」
「いい加減にしろバカ旦那にバカ息子!」

『少しだけ静かになりますように』



●不破家のバヤイ

「うーん、うーん…」
「雷蔵、まだ悩んでるの?」
「えへへ…、なかなか決まらなくて…。皆はもう書いたの?」
「長男のほうはね。長女は雷蔵と同じく悩んだまま寝ちゃってます…」
「あらら。あ、でもなにか書いてるよ?」
「ほんとだ…。『おにいちゃんといっしょにいる』だって。可愛いなぁ!」
「お兄ちゃんのこと好きだもんねぇ。で、そのお兄ちゃんはなんて書いたの?」
「ぼ、ぼく…?『お父さんとお母さんと妹といっしょにいる』って書いた…」
「あはは!一緒だね!」
「だ、ダメだったかなぁ…?」
「そんなことないよ。うん、じゃあ僕も決まった!『家族皆と幸せに暮らせますように』!」
「雷蔵……それ私がもう書いた…」
「えッ!?あ、ほんとだ!もー……皆一緒かぁ…」
「でも、全員一致だから願いは叶うよ。これからも家族四人で支え合っていこうね!」
「勿論だよ、名前1!」
「ぼくもがんばる!お父さんみたいに強くなって妹を守る!立派なお兄ちゃんになる!」
「それは頼もしいな。じゃあ僕は名前1を守らないとね。名前1もこの子みたいに天然でドジっ子だしね」
「そ、そんなことないよ…。……雷蔵時々意地悪するし、雷蔵じゃなくてこの子に頼むもん…!」
「ダメだよ。名前1が頼っていいのは僕だけ。ね?僕を一番に頼って?」
「……上目使いは卑怯」
「してないよ」
「してるよ…。解った、一番に頼る」
「ありがとう名前1。愛してるよ」
「っ不意打ちも卑怯!」

『幸せな時間が続きますように』



●鉢屋家のバヤイ

「……」
「…」
「はぁ…、お約束というかなんというか…。あんたたちねぇ、ちょっとはイベントごとに興味を持とうよ」
「七夕だろ?何故私がどこぞの知らないカップルの出会いを祝ってやらないといけないんだ」
「いや、違うし。そうじゃないし」
「母さん、願いは自分の手で叶えるものなんだよ」
「そっ……れは合ってるけど、もうちょっと子供っぽい考えを持とうよ、息子さんや…。ほら、紙用意したから書いて。雷蔵んとこの笹に一緒に吊るすから」
「ならば仕方ない。『雷蔵とこれからも仲良く付き合っていけますように』」
「はや…」
「まぁこれからも付き合っていくんだがな」
「キモ。『雷蔵一家と仲良く付き合えますように』」
「私と変わらないじゃないか」
「だって雷蔵一家って癒されるんだもん…。あ、書けた?」
「『雷蔵さん一家とこれからも付き合っていきたい』。もちろん、付き合っていくけど」
「……どうしよう、オチがない」
「夫婦シリーズの鉢屋家にヤマもオチもないから仕方ないだろ」
「オチなら竹谷さん一家がつけてくれると思うよ」
「だな。あとは八左ヱ門に任せて私は昼飯でも作るかな。チビ、特別にリクエストを作ってやるぞ」
「ぼく母さんのご飯が食べたい」
「クソガキが」
「はいはい。じゃあ三郎と一緒に作るからちょっと待っててね」
「名前1、ちゃんと父親を敬うように躾してくれ」
「ちゃんと子供を観察しようとしない父親に言われたくありません」
「は?」

『ちょっとだけ素直になりたい。なれますように』



●竹谷家のバヤイ

「よーし、笹持ってきたぞー。お前らつけろー!」
『おーっ!』
「…わざわざ山まで行ってきたの?」
「いや、七松先輩んちから貰って来た」
「そう。で、七松先輩はどうやって?」
「山からとってきたらしい…」
「だよねー。さて、私も吊るすか」
「お前なに書いたんだ?」
「『お金が欲しい』」
「おほー……」
「竹谷は?」
「『嫁が八左ヱ門呼びになりますように』」
「おほー、無理な話ですなぁ」
「何でだよ!いい加減下の名前で呼べよ!お前のせいで子供たちも俺のこと竹谷って呼ぶんだぞ!?自分も竹谷のくせに!」
「癖って怖いよねぇ…」
「とーちゃーん!ちょっと手伝ってくれ!」
「夜覚えてろよ…!どうした?」
「おれ、一番上につけたいから肩車してくれ!」
「おー、任せろ!よいっしょっと…、どうだ?届くか?」
「ばっちり!」
「とうちゃん、おれもおれも!」
「おれもやってーっ」
「待てまて、順番だ。そこに一列に並べ」
「今日も皆わらわらと…。で、あんたらなんて書いたの?」
『『七松くんから一本取れますよーに』!』
「「……」」
「じゃあまずは父親である竹谷が七松先輩から一本取らないとね!」
「おまっ、できるかぁ!」
「父親は子供たちのお手本だよ?頑張ってね、八左ヱ門!」
「うっ…!そこで名前呼びすんなよなぁ…」

『今年こそ七松家に振り回されませんように!』





匿名さんより。
五年生家族の誰かで七夕なお話。


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