ハチが小さくなってしまった! 「うん、なかなかいい出来だ」 「は、鉢屋先輩…」 「ごめんね、彦ちゃん。でも今日一日私の言うことを聞いてくれるって約束で、宿題見てあげたしね?」 「そうですけど…。でも、だからと言って何で竹谷先輩に変装させられたんですか?」 「んー、ちょっとね。最近犬遊びしてなかったなーって…」 「犬遊び?」 「ともかく、今から彦ちゃんは八左ヱ門だよ。八左ヱ門らしく振舞ってね?」 「が、頑張ります…っ」 「じゃあ行こうか」 「どこへですか?」 「いーからいーから」 「名前ー、いるか?」 「あ、三郎。どうしたの?ハチならいないよ?」 「いや、お前に知らせておかないといけないことがあるんだ…」 「どんなこと?」 「驚かずこれを見てくれ。(彦四郎、おいで)」 「………」 「……えっと…、ハチ?」 「理由は解らないが、八左ヱ門が一年生みたいに小さくなってしまったんだ…」 「えッ!?そ、それ本当なの、ハチ!」 「(コクリ)」 「そんなっ…。…………でも可愛いね」 「因みに服は一年生に借りてきた。若干性格も今と違って、大人しいぞ」 「一年生に戻ったからかな?ハチ、私のことは解る?」 「んっと…、名前せんぱ、…じゃなくて名前…です…」 「可愛いーっ。ちょっとこっち来て!ギュッってしたい!」 「(は、鉢屋先輩っ…)」 「(いいからいいから)」 「で、では失礼します…!」 「あはは、ハチなのに固くなってるー!でも頬プニプニで気持ちいい!三郎も触ってみなよ!」 「名前が言うなら触らせてもらおうか。……おお、プニプニして気持ちいいな。これは癖になる…」 「ハチ、ほら膝抱っこしてあげる!もっとギュッってしたい!」 「えー…」 「(名前の奴、本当に八左ヱ門だと思って可愛がってるな…。やはり女の子、可愛いもの好きか)」 「可愛いけど羨ましいなぁ…。だって一年生に戻ったってことは、また最初からじゃん?私もハチや皆と一緒に戻ってずっとここにいたいよ」 「名前先輩…。(そっか、名前先輩たちはもう五年生で、あと一年しかないんだよな…)げ、元気だしてください!」 「あはは、ありがとうハチ!小さくなってもやっぱりハチはハチだね!かーわーいーいー!」 「名前、あまり八左ヱ門を強く抱き締めるな。苦しんでるぞ」 「あ、ごめんごめん!」 「―――鉢屋先輩。言われた通り、竹谷先輩を連れて来ました」 「あれ?庄左ヱ門くん?どうしたの?」 「さすが庄ちゃん、タイミングばっちり」 「……ハチ?」 「お、俺がいる!?え、何で!?お、俺は…俺だよな!?」 「落ちついて下さい、竹谷先輩。あれは鉢屋先輩の手によって変えられた彦四郎です」 「庄ちゃんったら相変わらず冷静ね。というわけだ、名前に八左ヱ門」 「えー、そうだったの?全然気づかなかった…。あ、ごめんね彦四郎くん」 「い、いえ…。あの、騙してしまってすみません…」 「ううん、いいよ。気にしないで。楽しかったしね!」 「だな。八左ヱ門の顔だけど、性格がいいから可愛かったぞ。今度は雷蔵や私に変装させようかな…」 「もー、三郎。あんまり後輩で遊んだらダメだよ、可哀想でしょ?」 「そう言うな、名前。それとも名前は誰か好きな人に変装させてほしいとか?」 「三郎っ」 「すまんすまん」 「お前ら俺を無視すんじゃねぇ!」 「―――ああ、解りました」 「黒木?」 「膝の上に乗った彦四郎を見て、なんか見たことがあると思ったんです。お二人のやりとりを見てようやくわかりました。三人を見てると何だか家族みたいですね」 「「「え?」」」 「ちょ、ちょっと庄左ヱ門!変なこと言わないでよっ…」 「そう?だって本当にそう見えるんだもん」 「名前が私の嫁で、彦四郎が私の子供か…。ははっ、なかなかいいな。名前、幸せな家庭を築こう」 「あははっ!可愛い子供とちょっと意地悪な旦那さんに囲まれたらきっと幸せだろうね」 「ッ誰が許すかァ!おい三郎、名前から離れろ!あと、えっと…彦四郎だっけ?名前の膝の上から降りろ!んでもって俺の顔やめろ!」 「すみませんッ!」 「あー…せっかく可愛かったのに…」 「何もそこまで怒らなくていいだろう?彦四郎、気にしなくていいぞ」 「そうだよ。元はと言えば鉢屋先輩の責任だし」 「容赦ないね、庄ちゃん…」 「事実を言ったまでです」 「まぁ落ちつきなよハチ。三郎のいつもの悪戯じゃない。というか私は楽しかったよ」 「お前が楽しかっただろうが、俺は楽しくねぇ!」 「そんなムキになることじゃないじゃん。可愛いんだし」 「そこじゃねぇ!つか三郎っ、横で笑ってんじゃねぇよ!」 「いやなに、やっぱり犬遊びは楽しいなと思ってたところだ」 「だからッ、俺や名前で遊ぶのは止めてくれって何度も言ってるだろ!」 「すまんすまん。じゃ、彦ちゃん庄ちゃん、帰ろうか」 「あの…、竹谷先輩。すみませんでした…」 「ボクからも謝ります。すみませんでした」 「お前らは悪くないんだから謝るな。そいつの説教は任せた」 「「はい」」 「ちょっと…、声揃えて言わないでくれよ…」 「さ、行きますよ鉢屋先輩」 「あーあ、行っちゃった…。せっかくほのぼのしてたのに何でそんなに怒ってるの?」 「お前さ、三郎のこと…………」 「三郎が、なに?」 「いや、やっぱいい」 「えー?でもなんか言いたそうな顔してるよ?」 「………。名前は、あれか?…その、子供好きか?」 「子供は好きだよ。可愛いよね!」 「そうか。お、俺も子供好きだぞ」 「あー、っぽいよねぇ。ん?じゃあ何で怒ったの?」 「それは……。(黒木の言うように、本物の家族に見えたから嫉妬したなんて言えるかよ…!)」 「ハーチィー?」 「名前、俺頑張るから!」 「よく解んないけど、頑張って!」 「おう!」 ( TOPへ △ | ▽ ) |