夢/嘘 | ナノ


子供ができました


●七松家のバヤイ●

「小平太、子供がまたできちゃった!」
「ほんとか!?よし、じゃあ名前決めよう!いや…、その前にあいつらに新しい弟ができたって教えないとな!」
「やっぱり男の子なんだ。でも嘘でーす。子供できてません」
「…嘘?」
「うん、今日エイプリルフールだもん」
「そうか…」
「…あれ?落ち込んだ?ごめんね、小平太」
「じゃあ作ろう!」
「えッ!?」
「新しい子供欲しいから嘘ついたんだろ?作るぞ!」
「いっ…ご、ごめん!そうじゃない!」
「なはは!すまん、よく聞こえん」
「ほんっとにすみません!」



●食満家のバヤイ●

「留三郎ー、子供できちゃ「本当か!?」…早いよ…」
「よくやったぞ名前!男の子か、女の子か!?できるなら女の子がいいが、どっちでも俺は愛すからな!あ、ちょっと待て…。部屋が足りねぇな…。どうする、引っ越すか?金なら心配するな。俺がちゃんと稼ぐから!お前はその子を傷つけないようにしろよな!」
「……ごめん、留三郎。子供ができたって嘘なの…」
「え?」
「まさかこんなに喜んでくれるなんて…。ごめんね?」
「嘘、か…。そ、そうか…!ああ、今日はエイプリルフールだったな。そうか…そうかっ…!」
「ごめんね留三郎ッ!泣かないで!」
「泣いてねぇよ!泣いてねぇし…ッ」
「泣いてるじゃん…。本当に申し訳ないです。そんなに欲しいならもう一人作りますか?」
「……作る…」
「うん、じゃあ私も頑張る」
「おう。で、次の子なんだが、名前は何にしようか。男の子だったら名前がつけていいから、女の子は俺につけさせてくれ!」
「立ち直りが早くてビックリだよ」



●潮江家のバヤイ●

「文次郎さん、子供ができました」
「え?(子供ができた?いや、おかしいぞ。一緒に寝ることはあっても、ヤることヤってねぇし…。じゃあなんだ。名前は他の奴とヤ……いやいや、何言ってんだ俺は。名前がそんな女じゃねぇのは知ってるだろうが。でも…こいつが嘘つくなんてないし……。ど、どういうことだ?……ハッ!もしかして先週、酔っぱらったときにか?うおおおお…、俺はなんて最低なんだ!酒の力に任せて名前を…!いくら結婚してるからってそれは卑怯じゃないか?ああ、卑怯だ。記憶がないのもまた…)」
「文次郎さん?」
「すまない、名前。酔っぱらったとは言え、お前に失礼なことをしてしまった。その、…乱暴にはしなかっただろうか?」
「…何のお話でしょう?」
「いや…、先週酔っぱらったときにお前を………」
「(ああ、なるほど)ふふっ、冗談ですよ、文次郎さん。子供はできておりません」
「……冗談か」
「驚きましたか?」
「す、少しな」
「でも、寂しいのは本当です」
「…そ、…そうか…!」
「酷い方ですね。女性が誘ってるのに…」
「…名前」
「はい」
「その……よ、宜しく頼む…」
「はい、喜んで」






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