夢/嘘 | ナノ


「抱いてくれ」と潮江に言う


「潮江先輩」
「なんだ。喋ってる暇があったら早く終わらせろ。まだ三徹だって言うのに全員寝ちまいやがって…」
「潮江先輩、私を抱いて下さい」
「…」
「聞こえませんでしたか?抱いて下さい」
「いや、聞こえてる。…どうした、とうとうお前も目を開けながら眠れるようになったのか?」
「いえ、眠たそうだったので嘘をついてみました。目が覚めましたか?」
「……お前が嘘を言うほうに驚いて目ぇ覚めた」
「そうですか?私も嘘ぐらいつきますよ」
「そうか、それは面白いことを聞いた。……名前」
「はい、なんでしょう」
「抱いてやろうか?」
「…それは、嘘ですね。嘘をつく方ではないので驚きました」
「目ぇ覚めたか?」
「おかげさまで」
「ならさっさと手を動かせて終わらせろ」
「はい。……ということは私が女性側ですね」
「まぁ女みたいに細かく気づくし、後輩の面倒見もいいしな。ははっ、会計委員会の母親つーことか?」
「団蔵も左吉も左門も可愛いから、お母様と呼ばれても嫌な気がしません」
「ならば俺が父親だな。確かに呼ばれても嫌な気はしねぇな」
「ですね。潮江先輩、こちら終わりました」
「俺も丁度終わった。俺は下級生を連れて行くから片づけ頼んだぞ」
「はい、解りました」



「(昨日は遅くまでかかってしまった…。今日も遅くなるんだろうな)」
「名前先輩!」
「団蔵。どうしたんだい?」
「あの、オレ…。いつも名前先輩を母ちゃんみたいだなって思ってます!」
「……え?」
「え?だ、だって昨晩、「お母様と呼ばれたい」って…。それに潮江先輩とできてるって…」
「すまない団蔵、それは忘れてくれ…。あれは眠気からくる戯言だ…」
「でも神崎先輩も田村先輩も左吉も、皆聞いてましたよ。神崎先輩は同じ組みの次屋先輩に話したって…」
「………申し訳ありません、潮江先輩ッ…!」
「あの、名前先輩…」
「団蔵、お願いだからこのことは誰にも言わないでおくれ。いいね?」
「わ、かりました…。けど、その間に一ついいですか?」
「私にできることなら何でも」
「かっ…、母ちゃんって…呼んでもいいですか…!?」
「…(可愛い…)。委員会のときなら問題はないが、普段は止めてくれ」
「わかりました!」
「(頼むから三郎の耳には入らないでくれよ)」







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