旦那それぞれ お嫁さんが留守にしている間の各家庭それぞれ。 ●七松家のバヤイ● 「父ちゃん、はらへったー」 「私も腹減った!」 「父ちゃんなんか作ってくれよーっ」 「んー…。でも女名前には大人しくしとけって言われたし…」 「父ちゃん、父ちゃん!おかし見つけた!ケーキも!」 「おお、よくやった!じゃあそれ食おう!他にもないか探して来い!」 『アイアイサーッ!』 「あ、でも父ちゃん。勝手に食べていいの?」 「大丈夫!証拠隠滅すれば女名前にもバレん!いいかお前ら、これは男同士の内緒だからな!」 『おう!』 「………」 『……』 「さて、私は大人しく、家を汚すなと言って買い物に行ったのですが…」 「…女名前、」 「何でこんなに汚れてるんだろうねぇ?小平太、何してたの?」 「な、何もしてないぞ!あ、でもちょっと子供たちと組手したり、相撲したりしてた!」 「へー……。にしても甘い匂いがするんだけど、気のせい?あれ中在家さん宅の奥さんと一緒に食べようと残してたんだけどなぁ…」 「うっ…。し、知らんなぁ…!ケーキなんて知らん!」 「小平太は知らないんだ。じゃあ子供たちに聞こうか」 『ッ!』 「偉い子なら解るよね?今のうちに謝れば許してあげる」 『食べました!』 「コラお前ら!父ちゃんとの約束忘れたのか!」 「ごめんなさい母ちゃん!父ちゃんがいいって言うから食っちゃった!」 「ごめんなさいぃ!」 「もうしません!」 「うんうん、素直でいい子たちだねぇ。それに比べてうちの旦那ときたら……」 「……女名前…」 「なぁに?」 「ごめんな「許しません」 怒った嫁には勝てない旦那様。 ●食満家のバヤイ● 「いいかー、今日は母ちゃんの休息日だ。お前らしっかり働け!」 「はい」 「いちいちうっせぇなぁ…。そんなこと言わなくてもやるっつーの」 「おい、父ちゃんにその態度はなんだ。お前罰として庭掃除な!」 「はぁああ!?庭は父ちゃんの領域だろ!?俺は妹の面倒見てるから自分が行けよ!」 「領域とかガキか!いいから庭掃除してこい!でも俺の工具とか触るなよ、危ないからな。あと娘は俺がおぶるからいい」 「ガキだもん!自分だけいいとこどりすんなよ!」 「じゃあお前換気扇の掃除とか、棚上の掃除できんのかよ!背ぇ伸びてから言え!あ、お前は風呂掃除と掃除機な。あと自分の部屋」 「自分の部屋はもう終わってるよ。兄ちゃんの部屋と妹の部屋も」 「さすがだな。お前もちったぁ弟を見習え!」 「うっせぇプチ不運野郎!」 「テメェ!どこでその言葉覚えてきた!」 「伊作の兄ちゃんが言ってた!あと文次郎!」 「あいつらぁ…!つーか元は伊作のせいだっつーの!」 「父さん、最初に布団干したいから手伝って」 「あ?ああ、そうだな。布団は重いからな。ほら、お前も早く行け!因みに午前中までに終わらせることができたら、新しいオモチャ作ってやる」 「オモチャ如きで釣られるかよ!それよりベイブレ改造してくれ!」 「はいはい。(やっぱガキだな)」 「さすが留三郎の子供たち。すっごく綺麗になったね」 「留三郎!母ちゃんから離れろ!母ちゃんに抱きついていいのは子供だけなんだぞ!」 「そういうときだけ子供に戻るなよ!母ちゃんは俺のお嫁さんですぅ!」 「助けてくれるのは嬉しいけど、喧嘩しないでよ…。あと苦しいです」 「母さん、僕、シーツも替えた」 「そう、偉いね。ありがとう!」 「女名前ー、今日ゆっくり休めたか?」 「うんっ。伊作くんとこの奥さんとゆっくり遊んできたー。留三郎が作ってくれた夕食も最高に美味しかったです!」 「いつも頑張ってくれるからな!」 「それは留三郎もでしょ。いつもありがとう!もう皆大好きッ!」 「俺も母ちゃん好きーっ。留三郎より俺のほうが母ちゃん好き!」 「俺のほうが好きだっつーの!」 「母さん、…僕も好き」 基本的に仲良し家族。 ●立花家のバヤイ● 「……父さん」 「何だ」 「母さんがいないだけで何でそんな不機嫌になるの」 「いないから不機嫌なんだ」 「でも母さんだってたまには遊びたいじゃん」 「それは知っている。だから外出許可はくれてやった。だが、滅多に見せないような笑顔で「行ってきます」って言われたら腹が立つだろう!」 「…だって久しぶりなんだし。というか、束縛しすぎると嫌われちゃうよ?」 「それはない。女名前は私に惚れ、私も女名前に惚れているからな」 「じゃあもっと自由にしてあげたら?」 「いいか、私たちは相思相愛だが、私は女名前から離れたくない。それは何故か。夫婦だからだ。いや、夫婦の前に恋人だな。いつまで経っても女名前への想いは消えん。消えるわけがない」 「(また始まった…)」 「そりゃあ女名前を自由にさせてやりたい。家庭に縛ると女名前がストレスで倒れてしまうかもしれんし、可哀想だ。だが、私が休みに日に出かけなくてもいいだろう…!せっかく仕事を終わらせて休日を作ったというのに…!」 「桜子姉さん、父さんが暴れそう」 「もう?まだママが出かけて二時間しか経ってないじゃない。撫子ー、ママに電話して」 「もうしてるわ。いつになったらママ離れできるんだろうねー」 「きっと無理だと思うよ」 「おい聞いているのか誠一!」 「聞いてるよ。今撫子姉さんがママに電話してるからもうちょっと我慢して」 「―――女名前が帰ってくるのか?ふっ、あいつも私から離れて寂しいだな。たかが二時間しか離れてないのに」 「パパって普段格好いいし、自慢のお父さんなんだけど、ママ関係になるとちょっと残念よね」 「撫子に同意。誠一、あんな男になっちゃダメよ」 「解ってるよ」 嫁依存症の旦那様に、呆れ通り越し、悟り出した幼い姉弟たち。 ●潮江家のバヤイ● 「そこ間違ってるぞ。慌てず計算しろ。お前ならできるだろ」 「はいっ」 「パパッ、わたしのは合ってる?まちがってない?」 「ああ、ちゃんとできてる。だが、できたと言って予習復習を怠るなよ」 「うんっ!」 「しっかり噛んで、しっかり食べろ。食材に感謝することも忘れるなよ」 「はい、お父さん!」 「パパが作ったご飯おいしーっ。今度わたしと一緒におかし作ろうよー!」 「ちゃんとママに台所を使っていいか許可をとってからな」 「おい大丈夫か?あんま無理すんじゃねぇぞ。持てねぇなら俺が持つ」 「だ、大丈夫です…。お父さんにきたえてもらってるから持てます…!」 「そうか。なら頑張れ。俺は手を出さん」 「がんばれー!洗濯物をたたむのはわたしにまかせてー」 「う、っく…!(お、おもたい…!でもがんばらないと…)」 「……。俺もお前には負けておれんな。少しその洗濯物を貰うぞ」 「あ……。ご、ごめんなさい…」 「何故謝る。俺はお前に負けたくなかったから取ったまでだ」 「……。ぼ、ぼくもっとがんばります!」 「頑張るのはいいが、自分にあった鍛え方をしろ」 「はいっ」 「パパかっこいーっ!」 「だ、大丈夫か?」 「ちゃんとママのお手伝いしてるから大丈夫だよう!あ、パパ。エプロンむすんでー」 「ああ…。ほら、できたぞ」 「じゃあパパ!わたしがんばって手伝うからなんでも言ってね!」 「それは頼もしいな。ママそっくりだ」 「えへへっ。いつかパパにおいしいご飯作ってあげるのが夢なんだ。あ、もちろん弟にもっ」 「いいお嫁さんになるぞ。自慢の娘だ。(絶対にやらんがな)」 「ほんと!?でもね、わたしパパのお嫁さんになるの!パパとずっと一緒にいるのー!」 「(ぐふっ…!お、落ちつけ俺…。深呼吸をしろ!……だ、ダメだニヤけちまう!)」 「と言うことがあった」 「ふふ、それは素敵な一日でしたね。顔がニヤけてますよ」 「…そ、そんなにニヤけてたか?」 「はい。だらしなかったです」 「そんなにか!」 「でもちょっと寂しいですね。娘があなたのお嫁になるなら私はあなたの何になるのでしょうか」 「……お、お前は死ぬまで俺の妻だろうが…。言っとくが、絶対に離さんからな」 「それは私の台詞ですよ」 よき父親、よき旦那。 ( TOPへ △ | ▽ ) |