自分たちの六年生 !注意! 一つ、六年生卒業ネタが含まれております。その後、五年生たちも卒業していきまます。 二つ、オリキャラが複数できてきます。就職先ネタです。 三つ、後半につれ忍者している要素が増えてきます。怪我・流血・拷問・死ネタからの転生を含みます。 本編やオチのネタバレになりますので、これから先はワンクッションを置きません。 死ネタが苦手な方はこのお話を読まないようお気を付け下さい。 だからといって、甘い要素がないとかそういうのはありません。 全て忍者として割り切って読んでください。 「ご卒業おめでとうございます」 冬から春に変わる季節、いつも私たちで遊び、振り回していた一つ上の先輩たちが卒業した。 忍者に卒業なんてないが、一応区切りということで私服姿の七松先輩に頭をさげると、「おう」と明るい声が返ってきた。 「…と、ところで七松先輩。先輩はどこに就職されたのですか?」 今日まで、聞いていいのか解らなかったので聞かないでいた。 七松先輩のことだから「忍者がそう簡単に話すわけないだろ」って言って話してくれないと思ったからだ。 女々しい話だが、私は七松先輩が卒業されてもこの関係を続けていきたいと思っている。 だから…どこに就職したとか知りたかった。これから、どうやって彼と話せばいいのか解らない。居場所を知りたい。居場所だけでいいんです。 「ようやくか」 「え?」 「いや、聞いてこないからもう終わりたいのかと思った」 アハハ!と笑う七松先輩にもやもやしていたものが一瞬で消え去って、私も笑みをこぼす。 七松先輩は戦上手で有名なお城に就職するらしい。タソガレドキ城や、ドクタケ城とは違い、悪い噂は全くない。 ああ、だとしたら大丈夫だ。あの二つのお城に比べたら命の危険もない。 それでも戦忍びとして雇われたらしいので、どうなるか解らないがなと笑って、私の頭をぽんぽんと撫でる。 「そこは実力主義だから、私も腕を試しやすい。それと、」 「それと?」 「城勤めのほうが安心だろ?」 それはどういった意味でしょうか?と聞く前に理由が解って、締まりがなくなる頬を俯いて隠した。 本当にこの人は何も考えてないようでしっかり考えてて…。それをさらっと言うものだから心臓がいくつあっても足りない。 「七松先輩、私…。私、女である前にくノ一です。私もそこに就職したいです。吾妻千梅として七松小平太の背中をいつまでも追いかけてたい」 「そうか!それは楽しみだ。ならば私は、お前に抜かされないようそこで鍛錬に励むとしよう」 「それ以上強くなってどうするんですか。でも待ってて下さい」 「ああ、待ってる」 私の頭の上から大きな手を離れ、彼の背中を見送ってから、私たち五年生は忍術学園の最上級生へとなった。 「最上級生になるのって思ってた以上に辛いな…」 「辛いな…」 なったのはいいんだけど、かなり辛かった。 今まで弱音を吐いたことは……まぁあったり、なかったりしたんだけど、最近は私と竹谷だけじゃなく皆げっそりしている。 授業や実習、忍務でくたくたなときに委員会や後輩たちの面倒もあって本当に辛い。 それを乗り越えてこられた先輩たちを改めて尊敬したが、それと同時に彼らは化け物だったと再確認できた…。 「千梅せんぱーい!」 「公彦」 でも、やっぱり後輩は可愛いもので…。 今年入学してきた一年生の三次公彦(みよしきみひこ)は体育委員会所属の可愛い後輩だ。 何故か私に凄く懐いてくれてる。頑張り屋だし、真面目に委員会も出てるので私も滝夜叉丸も可愛がっている。 ただ、三之助とは仲が悪い…。あとしろべと金吾ともあまりうまくはいってなくて、それもまた頭を抱えている問題だ。大したことじゃないけど。 きっと七松先輩ならうまくやるんだろうな。滝たちも私が委員長をするのはよく思ってないんじゃないかな。前の委員長が偉大すぎたんだ。 「はぁ…」 「千梅せんぱい、どうしたんですか?ぼくでよかったら相談にのりますよ?」 「あはは、ありがとう公彦。それよりどうした?」 「はいっ、千梅せんぱいとご飯を一緒しようかと!」 「あ、もうそんな時間か…。そうだね、行こうか。竹谷も食うだろ?」 「おー、行く行く!やっぱり飯は大事だよな!」 「えー…竹谷せんぱいも来るんですか?…空気読んでくださいよ」 「ほんっとお前は憎たらしいガキだな」 「ぼく、竹谷せんぱいきらいだもん!」 「クソガキ!」 「竹谷落ち着けって」 「だって吾妻!」 「六年生のくせになっさけなーい!千梅せんぱい、早く行きましょう!」 これがなければなぁと思いつつ、私もあまり強く言えない…。どういったらいいのか解らない。 六年生ってどうあればいいんだろうか。 そう考えるもふと頭によぎるのは七松先輩たち。 その前の先輩たちも素晴らしかったけど、やはり一番関わりが強かった彼らのことばかりを考えてしまう。 「(…そう言えば、そろそろ七松先輩から文が届くはずだけど…)」 文は送らないと言われていた。面倒だし、時間がないからだと言っていたけど、何かあったら私や忍術学園に迷惑をかけたらいけないという本心が見えた。 だから私も特に寂しいとも悲しいとも思わなかったけど、今度の実習先の件で文を送らせてもらった。 「千梅せんぱい、少しの間いなくなるってほんとですか?」 「うん。ちょっと実習にいこうと思って…。ほら、頬にご飯粒ついてる」 「えへへ!でも千梅せんぱいがいないのさみしいです…。滝せんぱいだけだと…」 「大丈夫。滝は口うるさいけどしっかりしてるから。おい竹谷、お前もご飯粒ついてんだよ、ガキか」 「まじか!」 三人で夕食を食べたあと、公彦を部屋に送って自室へと戻る。 結局六年間同じ部屋になったな、竹谷。 「あ、文が届いてる」 「七松先輩のところか?」 「うん」 部屋に文が挟まっていたのでそれを取って、中身を確認。 外はもう暗いので部屋に灯りをともして、文字を一つ一つ追っていく。 「……よし、許可貰えた。数日の間ちょっと実習していくるわ」 「よかったな。あそこあんまり実習受け入れないらしいのに」 「多分七松先輩が口添えしてくれたんだと思う。あーあ…結局七松先輩に頼ってるよなぁ」 「俺たちも先輩たちみたいな立派な六年生になりてぇな。ほら、さっさと布団敷け」 「おー…。布団敷いたら鍛錬付き合ってくれ」 「勿論!頑張って強くなろうぜ!」 七松先輩が就職したお城は、いいお城として有名だけど、なかなか就職できないらしい。 そこに就職した七松先輩はやっぱり凄い。こうやって実習を受け入れてくれるように口添えしてくれたのも……。 そんな先輩に恥をかかせないため、いつも以上に真面目に頑張らないと! 布団を敷いて上の制服だけ脱いでサラシだけになったあと、六年中庭で竹谷と向かい合う。 ここに、先人たちもいたかと思うと力が湧いてくる。私も強くなれると錯覚してしまう。 「負けたほうが明日の昼食、驕りな」 「おーし、頑張っちゃうもんねー!」 竹谷もあれからさらに強くなった。いや、竹谷だけじゃない。兵助も勘右衛門も三郎も雷蔵も皆強くなった。 さすが男の子のだねと笑うものの、下級生のころに比べてどんどん差が生まれていくことに苛立ちではなく、嫉妬を感じてしまう。 だけどどうあがいても私は女なわけで…。だから、女にしかできないことや技と見つけていくのが今の目標。 「よっしゃ、もらったぁ!」 「竹谷、私女!」 「ぐっ…!」 「とー!」 「った!おまっ…それずるいぞ!」 「どうとでも言うがいいさ。はい、私の勝ちなので明日のお昼ご飯奢ってくれよ」 言うほど女も悪くないってもんよ!身内にしかきかないけどね。 「でもよ吾妻。その技、俺らにしかきかねぇぞ」 「解ってるよ。どうにかしないとねぇ…」 「俺らには効果的だけどよ」 「遊びでしか使えないから私は好んで使いたくないけど」 「じゃあ使うなよ」 「だってお昼ご飯がかかってたんだもーん!」 縁側廊下に腰をおろして、月を眺めながら今さっきの鍛錬について語り合う。 こうやって語り合うことができるのもあと数か月かと思うと寂しくなるけど、しょうがないよね。忍者だもん。 「でも私あんまり力ないからねぇ」 「くノ一よりは強いだろ?」 「あの子たちが持っているものを私は持ってないよ」 女なんだからくノ一教室にいけばいい。そしたらくノ一として強くなれる。 なのに私はこっちを選んだ。男じゃないのに男の道を選んだ。 だから中途半端なことしかできない。中途半端にしか強くなれない。そこに寂しさや嫉妬を感じるのはお門違いだと私は思うんだけど、どうなんだろうか。 考えるのが好きじゃないから、このままにいるけど、本当は今からでもくノ一教室に行くべきなんだろうか。それはもう嫌だなぁ…。 「吾妻…」 「ま!いくら女でも七松先輩に憧れてしまった以上、頑張ってあの背中を追いかけたいっすわ」 「…だな。七松先輩だけじゃなく、六人ともそれぞれの強さを持ってたからな。俺も…強くなりたい」 「おー、強くなろう!」 竹谷と笑い合って、月に拳を向けたあと、バサッと背中に何かがかかって振り返る。 「千梅ー、いくら鍛錬後とはいえ、そのままでいるのは風邪引くよ」 「わー、ありがとう勘右衛門」 「お前たちは変わらず元気だな…。私はもう眠たいよ」 「あはは、僕も」 「俺、本読みたいから静かにしてほしかったのに…」 なんだかんだで結局集まる皆が大好きだ。 私たちには私たちの六年生を目指して頑張ろうね! (△ TOP ▽) |