小さくなりました !注意! 夢主が一年生より小さくなっております。 「幼女ハァハァ」とかいう表現はありません。それは管理人の心の中だけです。 皆が皆、夢主を可愛がっているだけの私得夢になりますので、苦手な方は進まないようお気をつけ下さい。 「くわぁ…!……はぁ…。…おーい吾妻ー…、そろそろ起きろよー」 「……っうー…」 「唸ってねぇで早く起きろ。じゃねぇとまた七松先輩が上に乗っかって………って……おほー…ど、どこのお子様かしら…?」 今日もいつもと同じような一日が始まると思っていた八左ヱ門だったが、同室の親友を起こそうと布団をめくったら、知らない子供が丸まって寝ていた。 子供…一年生より小さい女の子は、ブカブカの寝間着に埋もれ、もそもそと動きだしてゆっくり目を開ける。 「んん……」 「……吾妻、だよな…?」 布団をめくったままの体勢で、とりあえず聞いてみた。 なんとなく、一年生だったころの千梅に似ているような気がする。 他の誰かがこの部屋に侵入したら、きっと解るわけだし、あいつが誘拐されるなんてまずありえない。誰得だと。 子供の千梅は当分の間ボーっとしながら何度か欠伸をして、八左ヱ門を見上げると首をコテンと傾げた。 「おにいちゃん、だれ?」 「おほッ!?」 幼い声で逆に質問をされては、どう答えていいか解らない。 とりあえず冷静になるようその場に座って、目を瞑る。すぐに開けても、目の前にはやっぱり幼い女の子しかいない。 「えーっと……」 「ここ、どこ?」 「あー……どうしよう…」 「おにいちゃん、だれ?」 「あ、すまん!えっと、俺は竹谷八左ヱ門。お前は?」 「たけざもん…?」 「……ハチでいい。で、名前は?」 「わたし、千梅!」 「やっぱり吾妻かよっ…!」 がっくりと頭を垂らし、深い溜息を吐く八左ヱ門と、周囲をキョロキョロと見回して見たことのない部屋に興味を抱く千梅。 「ここどこー?すごーい、なにあれー!」 「何で子供になってんだよ。あれか?善法寺先輩に薬盛られた……ああああああ昨日、落とし穴に落ちた先輩に砂かけてやったとか言ってたわ!あれか、あれだな、あれしかねぇ!で、薬盛られたんだ!だから止めろって言ったんだよ俺はよぉ!」 「おにいちゃん、だいじょうぶ?あたま、いたい?」 部屋を走り回って楽しんだあと、頭を抱えてブツブツ言ってる八左ヱ門に近づいて、下から覗きこむ。 先ほどまで笑顔だったのに、今はとても心配そうな、少し泣きそうな表情だった。 思わず胸がきゅんと鳴ってしまった八左ヱ門だったが、腹かけ一枚の千梅を見て、慌てて布団をかけてあげた。 「ちょ、ちょっと待ってろ!確か一年のころの制服があったはずだ…!」 「おにいちゃん、いたいのとんでった?」 「可愛いなぁちきしょう!吾妻のくせに可愛いんだよバーロー!」 八左ヱ門は依然寝間着のまま、押入れから一年生のときの制服を探す。 千梅は一人遊びを始め、ときどき布団に潜っては顔だけ出して、「おまんじゅう!」と叫んでいた。 子供の何気ない仕草や行動は本当に可愛い。下級生でさえ可愛いのに、さらに小さい子がそんなことをしているのだから、顔がニヤけてしまう。 「ほら吾妻。これ着ろ。さすがに腹かけ一枚じゃ寒いだろうし、何よりお前は女の子だからな」 こんなときだけ女の子扱いする八左ヱ門だったが、それを突っ込む人間は誰一人いない。 しかし、布団から顔を出した千梅は何だか拗ねている様子で、八左ヱ門が「どうした?」と制服を広げたまま聞くと、ぷいっと顔を背けた。 「吾妻じゃないっ。千梅だもん!」 「お前ほんっとふざけんなよマジなんなんだよ吾妻のくせに!千梅さん、これ着てください!」 「はーい!」 下の名前で呼ばれた千梅はすぐに機嫌を良くして、バッと布団から出た。 八左ヱ門に手伝ってもらいながら、なんとか一年生のときの制服に着替えたのだが、やはりブカブカ。 だが、今千梅が着れる服はないのでしょうがない。 千梅は動きにくそうだったが、そこは我慢してもらって、自分も制服に着替える。 「千梅、お兄ちゃん着替えるから……その、こっち見ないでくれるか?」 「なんで?」 「恥ずかしいんですぅ!いつものお前だったら全然そんなことないのに、今日は恥ずかしいんですぅ!」 「うー…わかった…」 「うわあああああ!両手で両目を隠すとか超可愛いんだけど!もうやだっ、この子、今日から俺の子です!」 「―――うるさいぞ八左ヱ門!いい加減にしろバカ!」 ぺちん。と小さな手で小さな目を隠す仕草に、ドキドキが止まらなかった八左ヱ門は朝から大声をあげてしまい、隣部屋の三郎を召喚してしまった。 スパンッ!と勢いよく戸を引いて、青筋を浮かべた三郎と、怒鳴り声にビクンっと身体を跳ねさせ、目を開けてしまった千梅と、デレデレの八左ヱ門。 しばらくの間沈黙が続き、廊下から足音が聞こえてきた。 やって来たのは、寝間着も崩れ、髪の毛もボサボサな三郎の同室、雷蔵。 「ふ、わぁああ…。どうしたのさぶろー……。はっちゃんまた死んだの…?」 「俺そんな頻繁に死んでねぇぞ!?」 寝ぼけておかしなことを話す雷蔵と、ようやく突っ込みをいれる八左ヱ門。 三郎は子供の千梅を凝視したまま時が止まっており、千梅も三郎を見つめ返していた。 子供は目を離すことをしない。そこまで幼くないが、千梅は負けじと三郎を見ている。 「……あれ?はっちゃん、童貞卒業したの?」 「まだしてません」 「じゃあ何で子供いるの?あ、わかったー…。七松先輩と千梅の子でしょ。ほら、似てるもん」 「違います。この子が正真正銘、千梅です。な、千梅?」 「……」 「…三郎。千梅から目を離してやれよ」 「いや、待て八左ヱ門。今なんて言った?」 「は?こいつは千梅だって言ったけど?」 「………あ、解った。また伊作先輩に薬盛られたんだね。可愛いねー」 「雷蔵さんの推理力と順応性にビックリですが、その通りだと思います」 子供に戻れるわけないだろ!と突っ込みたいが、それを可能にしてしまうのが、六年生の善法寺伊作なわけであって…。この学園のマッドサイエンティストであって…。 先日、千梅が伊作に悪戯をしていたのを見ていたので、それの報復だろうと、三郎もようやく状況を理解して、受け入れた。 「ハチ、あれこわい…」 「見た目だけだ。ああ見えて不器用な奴だから、とりあえず抱きついてやれ」 「は?おい、変なこと言うの止めろ。私は子供が苦手なんだ…」 「よし、行け!突撃だ、千梅!」 「とつげきーっ」 怖いと言っておきながら、「突撃」と言われると突撃してしまうやんちゃっぷりに、雷蔵は「あはは、小さくなっても千梅なんだねぇ」とのんびり笑った。 足に抱きついてきた千梅に、三郎は「いっ!?」と声をもらす。 どう反応していいか解らず、そのまま固まっていると、千梅から先に離れて八左ヱ門の元へと戻り、八左ヱ門の服の裾をクイクイッと引っ張った。 「どうした?」と屈んだ八左ヱ門に千梅は、「たのしくない…」と、元気のない声で呟き、八左ヱ門の足に抱きつく。 三郎は若干凹み、雷蔵は「かわいー」とほわんと笑顔を浮かべ、八左ヱ門は、 「俺の子マジ可愛いいいいいい!」 と千梅を抱きあげ、頬ずりをしてあげた。 勿論、喜ぶ千梅。キャッキャと笑って、八左ヱ門を抱き締める。 「もー…。ろ組うるさいよー。朝っぱらからなにしてんのー?」 「…………」 最後にやって来たのが、い組の二人。 「ねっむーい!」と言いながらも大きな声を出している勘右衛門と、一切喋らない兵助。 しかし、八左ヱ門に抱っこされている千梅を見て、勘右衛門の動きがピタリと止まった。 「千梅じゃん!あははっ、やっぱり小さくなったんだ!伊作先輩に薬盛られてたもんねぇ!」 「おにいちゃん、だれ?」 「俺?尾浜勘右衛門でっす」 アキレス腱を伸ばしながらウインクをして答えると、千梅は首を傾げる。名前が長すぎるので覚えられないのだ。 「いや待て勘右衛門。お前…善法寺先輩が千梅に薬盛ってるとこ見てたのか!?」 「え?あ、うん。教えてあげようとしたんだけど、先輩すっごい目でこっち睨んでくるからさー。ごめんね?でも可愛いし、いいんじゃない?ね、兵助?」 「……」 「ほら、兵助も「うん」って言ってる」 「言ってねぇじゃん!お前って奴ぁ…!」 「とりあえず伊作先輩のとこに行きなよー。小さい千梅は可愛いけど、やっぱり小さいと大変でしょ?」 「勘右衛門に同意。一年生より小さい子供は苦手なんだ…」 「三郎は優しいからねー。踏んじゃいそうで怖いんだよね」 「……」 「あっはは、三郎も可愛いとこあんじゃん。兵助、俺たちは顔洗いに行こう」 「………勘ちゃん…」 「んー?」 「吾妻が小さい…」 「ねー!あとから豆腐小僧ごっことかできるんじゃない?」 「勘右衛門、さっさと顔を洗って朝ご飯を食べるぞ!」 「じゃ、僕たちも準備終わらせてくるね」 「八左ヱ門、吾妻の面倒はしっかり見ろよ」 「お、おお…。まぁ見るけどよ…」 ようやく静かになった朝だったが、これからが大変なのであった。 (△ TOP ▽) |