夢/とある後輩の災難 | ナノ

新しい生活


「どうされましたか?」
「お頭が集合だって。朝食はあとにして外に来てくれ」
「「え?」」


あの、食べるの大好き!お頭さんが、朝食をあとにするだと?
もしかしたらあの文にはとても大切なことが書かれていたのかもしれない…。大きな戦が始まるのかもしれない。
目を見開いて動きを止めたあと、「はい」と答えて外に出る。
外には珍しく全員(忍務に行ってない先輩たち以外)が集合していてちょっと驚いた。
だって、夜の見張り組も起きてるもん。絶対に寝坊する先輩も起きてるし…。


「お前らに大事なことを言うのを忘れていた…」


静かに喋り出すお頭さんの声に、背筋が伸びた。
この声色は……戦前の声色だやっぱり戦があるのか…。できれば、兵助、三郎と雷蔵のお城と敵対しませんよーに!


「明日、タソガレ忍軍と合同演習があったんだった。悪い!」


だと思ったらこれだよ!!
ほんっとこのお頭はダメすぎる!大雑把だし、適当だし、大事なこともこうやって忘れるし!
しかもタソガレ忍軍と合同…………え…?


「「合同演習!?」」


声をあげたのは私と竹谷の二人だけで、先輩たちは「それがどうかしたか?」とでも言うような顔で私と竹谷を振り返る。


「え、あのタソガレ忍軍と合同演習するんですか!?」
「そう言っただろ?お前ら、ちゃんと俺の話聞いてたか?」
「いや、聞いてたんすけど…。その、驚いてしまって…」
「ったく…。小平太、ちゃんと教えといてくれよな」
「解りました。お前ら、準備が終わったら私のところに来い」
「「はい…」」
「で、今回の演習だが…」


ビックリした気持ちでお頭さんの話を聞くけど、あまり頭に入ることなく終わり、すぐに朝食に入った。
んで、なんやかんやと流れるように明日の準備を手伝わされ、終わるころには日はすっかり暮れ始めていた。
途中で昼食準備とか、村まで買い出しとか色々あってこんな時間だ…。
今日はいつもとは違う流れだったので、身体が少し疲れてしまった。
先輩たち全員がお風呂に入ったあと、私もお風呂に入って、待ってた竹谷と一緒に七松先輩のところに向かう。
七松先輩は大広間の、私が寝る近くに布団を敷いて先輩と談笑をしていた。
相変わらず髪の毛はボサボサだが、笑う顔は学園にいたときとは変わっていない。
いや、大人っぽくなっているけど、本質が変わっていないから、笑顔も変わってないように感じる。
時々、大人っぽくてドキッとするけど、ここでできるわけもないので、変なところで安心している。
……ああ、でも接吻ぐらいはしたいかなぁ…。当分の間七松先輩にも触れてないし…。それは少し寂しいかな……。


「聞いているか、吾妻」
「…すみません。少し湯あたりしてしまって…」
「お前が入るころには冷めてるだろ?」
「うっさい竹谷、黙ってろ」


寝間着のくせに胡坐かくんじゃねぇよ!見たくねぇもんが見えてんだよ!長屋にいたころからだけどな!


「タソガレ忍軍と関係があることは覚えているな?」


七松先輩も足をたてて話始め、そちらを見ないようにコクリと頷くと、七松先輩も頷いた。


「でな、気まぐれではあるが時々こうやって合同演習が行われるんだ」
「気まぐれで行うものなんすか?」
「こっちの都合と、向こうの都合が合えば毎日でもやりたいらしいぞ。私も楽しみだ!」
「楽しそうなところ申し訳ないのですが、あの…タソガレ忍軍って……保健室に来ていたあの曲者の人、ですよね?」
「それ以外に誰がいる?」
「私あの人苦手なんすよ…」
「あー…俺もあんまり得意じゃねぇなぁ。何考えてんのか解んねぇし…」
「でもいい勉強になるぞ!私も何度やられたか…。しかしっ、明日こそ倒す!」


一人燃えていると、どこからか枕が飛んできて竹谷の後頭部と七松先輩の顔面に当たる。
私は身長が低かったため当たらなかった。あの人たちが枕を投げても凶器になるから怖いんだよ…身長低くてよかった…。


「竹谷、今日こそ先輩方を倒すぞ」
「っすね。タソガレ忍軍の前にまずは下剋上っす!」
「おーよ、やれるもんならやってみろ!」
「いつもみたいにボコボコにしてやるよぉ!」
「今朝の恨みっす!」


とかなんとか言って、枕投げ開始。
私もいつもだったら参加するんだけど、今日は何だか疲れたので一足先に寝ようと仕切りの向こうに向かう。
うん、やっぱりこの閉鎖された空間好きじゃないな。はぁ…男に生まれたらどれだけよかったか…。


「吾妻」
「は――――………」
「久しぶりだな!」
「…な………」
「今度休みが合ったらまた私の実家に行こう。ああ、その前に吾妻の実家にもきちんと挨拶せねばな」
「……」
「…吾妻?……そんな顔してると、またするぞ?」
「っおやすみなさいませ!」


枕を持って、溜息を吐いたあと、名前を呼ばれたので顔をあげると触れるだけの接吻をされて目を見開いて驚いた。
ニコニコと笑いながら何か喋っていたけど、全く脳内に入ることなくポカンとしていると、今度は顎を掴まれ、至近距離でそんなことを言われたので、ようやく意識を取り戻して七松先輩から離れる。
た、確かに接吻したいとか思ったけどさ…!なんであの人は心の声が聞こえるんだよ!不意打ちすぎて心臓が痛い!


「(でも嬉しいとか、こんなところで言えない…!)」


明日も早く起きて、しかもタソガレドキ城に行かないといけないのに!


「小平太ー、敵に背中向けるとはいい度胸だな!くらえっ!」
「くらいません!」
「(七松先輩のバーカ!でも大好きだ!)」


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