夢/とある後輩の災難 | ナノ

腐女子、大量発生中


「ねえ竹谷くん。相変わらず千梅とは仲良しなの?」
「お、おう…。そりゃあな。吾妻がいねぇと俺生きていけねぇもん」
『キャーッ!』
「な、何でそんな喜んでんだ…!?なぁ俺、変なこと言ったか?」
「七松先輩の相手的な意味でだよ!」
「相手ってなに?夜のこと?え、でも千梅と七松先輩が付き合ってるんだよね?なのに竹谷くんも出てきちゃうの?え、3P!?」
「千梅くんっ、そこんとこ詳しくお願い!」
「言っとくけど私、女だからな!?」
「あーはいはい。で、夜はどんな感じ?激しいの?あ、ごめんごめん!そんなこと聞かなくても想像通りだよね。やっぱり七松先輩は鬼畜攻めっと…」
「ちょっと止めて下さいよ先輩!私は長こへ派なんです!七松先輩は男前受けなの!鬼畜なんかじゃありません!」
「はぁ?ちゃんとよく聞いてた?七松さんって暴君じゃん。暴君イコール鬼畜でしょ?原作設定を無視するの私嫌いなんだよねぇ。原作考えてのBLにしなきゃ」
「そうそう、やっぱり原作は大事にしないと…」
「(原作って何だよ…。じゃあ彼らはホモじゃねぇよ…!こいつら矛盾してんよ!)」
「吾妻、俺帰りたい…。何で誘ったんだよ…!しかも何だよこれ。何で俺と兵助が裸になってヤってんだよぉ…!」
「竹谷、あんまり見るんじゃありません。心を無にしろっつっただろ」
「あとあいつら何言ってんだ…?お前もなんか酷いこと言われてんぞ?」
「私は大丈夫だ。怖いなら耳抑えて、目ぇ瞑ってろ。終わったら教えてやるから」
「おう…。頼んだ!」
「任せろ。………だから、メモ取ってんじゃねぇよ!」
「千梅くんってほんと男前ね…。で、でも私は千梅くん総受け派なのっ…!お願い、マンションではどんな感じか教えて!」
「「くん」つけんな!」
「よ、呼び捨てになんてできないよ!だって皆に怒られちゃうじゃない…。総受けのお姫様なんだから…」
「あーっ、もう面倒くせぇ!いいや!好きに呼べっ。但し、竹谷への質問は一切禁止ね!こいつマジで一般人なんだから!」
「ほら見なさいっ。原作は千梅×竹谷くんじゃない!」
「千梅くんっ、男前すぎっ!でも夜になると逆転するんだよね…!?お願い、じゃないと私作った本、全部処分しないといけなくなっちゃう!」
「ところで千梅」
「なにっ!?」
「七松先輩といつキスした?」
「うえっ!?」
「七松さん×千梅さんきたーっ!」
「えー…、私、竹谷くん×千梅くんが聞きたかったなぁ…」
「じゃあ次、善法寺さん×千梅くんでお願い!」
「あ…なら次は尾浜くん×千梅で!」


周囲が騒いでる中、友人だけは真っ直ぐと私を見てくる。
答えるまで逃がさない。彼女の目はそう言っていた…。
七松先輩とキスって……。そ、そんなことこんなとこで……っ。


「そ、それは…、お前に言うことじゃない、じゃん…っ」
「はいきた。本命の前になると照れる子。やっべぇええええ最高に萌える!今の千梅、すっごい輝いてるよ!羞恥で真っ赤になる受けはやっぱり最高!」
「千梅くん可愛いっ!ほら見て下さいよ先輩っ。千梅くんはやっぱり受けですよ、受け!」
「千梅×竹谷くんからの…竹谷くん×千梅ね…。ま、まぁ……いけないこともないわ…」
「ヤってはないにしろ、キスはしてんでしょ?今日はした?」
「し、…………て、…ない…」
「千梅くん可愛い千梅くん可愛い千梅くん可愛い!」
「ペロペロしたい!」
「やばい、模写じゃ間に合わない!写真いいですか!?」
「許可する」
「ちょっと!」
「いいから答えなよ。答えたら止めてあげる」
「うっ……。ううう…!答えないと、ダメ…?」
「はいその上目使い頂き。千梅さ、実は無自覚マゾだよね」
「え?そ、そんなわけないじゃん!」
「あーごめん違った。無自覚で「虐めてオーラ」が出てるよ」
「なにそれ…。違うし!違うっ。出てない!」
「必死なのがまた嗜虐心を煽るわぁ!こうやって七松先輩も千梅を虐めてるんだろーなー!うふふ、いいねぇいいねぇ!」
「うーっ…!た、竹谷!」
「ど、どうした?もういいのか?って、泣いてんじゃねぇか!け、喧嘩か!?喧嘩はよくねぇぞ!?」
「やっぱり来るんじゃなかった!」
「やっぱり王道は竹谷くん×千梅くんよねぇ…」
「あーん、七松さん×千梅くんをもっと見たいし聞きたい!」
「コラ千梅。ちゃんと答えなさい。あ、竹谷くんでもいいや。竹谷くん、千梅と七松先輩がいつキスしたとか知ってる?」
「うえっ!?」
「もうっ、千梅と同じ反応しないでよ!萌えるじゃない!親友だから口癖とかがうつっちゃうんだよね、萌えます萌えます」
「隊長、既に私たち萌えてまーす。竹谷くんに抱きつく千梅くんカワユス!最高!」
「お、…俺…知らない…っ!そういうの俺に聞くなよっ!」
「真っ赤になってるーっ。竹谷さんの照れた顔も最高!千梅くんと竹谷さんって最高の受けっ子じゃないですか!て言うか百合よ百合!」
「千梅、お前への質問だぞ!ちゃんと答えてやれよ!」
「だってっ…!」
「あーもう抱きついたままでいいから答えて。いつ、どこで、どんな風にキスされた?」


恥ずかしくなって竹谷に抱きついたまま、彼女に顔を向けると、彼女は先ほど以上に真剣な目で私を見ていた。
手にはボールペンとメモ帳。周りの女の子たちも黙ってカメラを回している。
い、言わないと逃がしてくれない…。でも、だからってあんなことを口に出すのは恥ずかしいよ!
そう思ったけど、覚悟を決めてゆっくり口を開いた。


「この間……」
「うんうんっ」
「竹谷と遊んで家に帰ったら、七松先輩と出会って…」
「それでそれで!?」
「「また竹谷と遊んだのか?」って言われたから、「うん」って答えたの…。そ、そしたらキスされた……」
「(友人と先輩のそう言った話聞くのって辛い…)」
「嫉妬か…。最高に萌えるじゃない!王道ネタはいつだって萌える!ハゲ萌えるわ!で、舌は入れてきたの!?あ、でも七松先輩なら噛みつきそうだよね!」
「……もうっ、…勘弁して下さいっ…!」
「せめてそれだけは答えて!」
「噛みついてきたあと、舌を入れられましたァ!」
『ありがとうございます!』


ハッキリ言ってやると、全員から頭を下げられお礼を言われた。
今なら羞恥心で死ねそうだ!


「竹谷ッ、帰るよ!」
「おう!」
「竹谷くん、久々知くんに宜しくね」
「お、おー……」


逃げるように部屋をあとにして、走って自転車まで向かった。
すぐに竹谷が乗って、私が後ろに乗る。
大学敷地内を出ようとして、最後に振り返る。
すると彼女たちは私たちを写真に収めていました…。
最後の最後まで彼女たちは立派な腐女子でした。
もうどんなメールが来たってシカトしてやるからなぁ!


「言っとくけど俺、兵助のこと好きじゃないからな」
「知ってるよ。わざわざ言わないで…」
「だって…」
「そういう人種なんだよ…」
「あと七松先輩に突っ込まれてた…ッ。俺、一生オムツ生活とか嫌だッ…!」
「竹谷くん、巻き込んどいてなんだけど、誰にも言わないでね」
「言えるかよ!あいつらも嫌がるだろうし、何より七松先輩がキレそうで怖い」
「ですよね…」


それから数日後。
彼女からのメールを全て無視していたら、立花先輩が私のところにやって来ました。


「吾妻、なかなか面白い友達を持ってるじゃないか」
「はい?」
「巷では、竹谷×吾妻というのが流行ってるらしいな?」
「………あのクソアマァ!マジで立花先輩に送りやがったな!」
「なかなか面白そうだったから、その友人を招いた。さ、準備しろ」
「立花先輩のバカッ!大嫌い!」
「私は吾妻のこと好きだぞ。この際だ、私×吾妻を布教しようじゃないか」
「ニヤニヤした顔で話してんじゃねぇぞ!竹谷、助けて!」
「しょっぱなから公式、ありがとうございまぁああああす!」
「で、出たーっ!お帰り下さいお帰り下さい!」
「お久しぶりです、立花先輩。言われた通り、全ての本を持って参りました。今日は宜しくお願い致します」
「ああ、久しぶりだな。ゆっくりしていけ」
「はいっ、そのつもりです!」
「もうやだ死にたい」


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