夢/とある後輩の災難 | ナノ

就職決定?


「あの、お頭さん…」
「おー、どうしたー?えーっと、千梅ちゃんだっけ?」
「あ、吾妻でいいです」
「で、何だよ千梅ちゃん」
「(話聞けよ…)あの、私女ですし、ちょっとここに就職するのは無理かと…」


いきなり七松先輩が学園にやって来られ、突然こんな山奥へと連れて来られた私と竹谷。
そして何故か就職試験らしきものに合格をしてしまった。
やったー、皆の中で一番に就職先決まったぞー!と喜んでる私はおらず、「どうやって断ろう!」と悩み続けていた。
結果、「女」という武器を使って脱出することにした。竹谷には悪いが、私にはこんなとこ無理だ。
私はもっとほのぼの?としたお城に就職したい。平和に過ごしたい!七松先輩だけならまだしも、このお頭さんもちょっとおかしい!というか筋肉バカだと思う!


「え、じゃあもう小平太に嫁ぐのか?どっちにしろここに住むだろ?」
「はい、勿論です!」
「(くっそー…)いや、そうではなく…。他のお城に就職したいなぁと思いまして…」
「えー…。他のお城に就職したって楽しくねぇぞ?どいつもこいつも弱ぇし、すぐ脱臼するし…」
「(こえぇ人だなおい!)べ、別に戦いたいからってわけじゃないんです…。私、あんまり強くありませんし…」
「いやいや何言ってんだよ!千梅ちゃんかなり強いぜ!なんたって俺のあの攻撃食らって脱臼してねぇもん!」
「(やっぱりあれ攻撃かよ!脱臼しとけばよかった!)」
「それに小平太の女だしな!あと、千梅ちゃんみたいな小柄な子欲しかったんだよなぁ!ほら、ちょろちょろできるじゃん?」
「ちょろちょろって…」
「千梅ちゃんみたいな小さい子が入ってきても、今さっきので脱臼するか、仕事中に死んじまうからよぉ!あ、因みにうち年がら年中募集かけてんだ。力と体力に自信がある奴なら誰でも大歓迎!まぁそう言うただの筋肉バカはすぐ死んじゃうんだけどなー!そのせいで人手不足なんだよ、アッハハハ!」
「……竹谷、なにモブになってんだよ」
「帰りたい」
「私もだ」
「戦忍びの派遣会社だからよぉ、ほんっとよく死ぬんだ。まぁ死ぬのは今さっき言ったバカな奴らのことな。つっても、俺も小平太もバカだけど!」
「はいっ!」
「でよ、いっつも残ってんのは決まった奴らなんだよ。小平太は久しぶりの新入りで、ずっと残ってんだ!」
「私は死にません!」
「こいつ本物の化け物だよなぁ!アハハハハ!」
「(いや、それはあんたもだろ)」


どうやら七松先輩が就職したところは、裏世界ではかなり有名らしい。
戦忍び専用の忍者を育て、色んなところに派遣しているとのこと。
そのおかげで、評判悪い・いい関係なく、知り合いが多い。何でも、タソガレ忍軍ともお知り合いだそうだ。恐ろしい…。
忍務を失敗したこともないから、信頼も厚く、とにかく忙しい。
だからと言って募集をかければ、忍務中に死んでしまったり、今さっきの試験で落とされるんだと。
なかなか増えないくせに、仕事の量がはんぱないから、私たち二人が入って来てくれて本当に嬉しいとお頭さんは笑った。
いい人なのは認めるが、七松先輩と背丈があまり変わらないのに、七松先輩以上の力を持ってらっしゃるこの人がちょっと怖い…。


「と、ともかく私はここには無理そうで…」
「おっ!見ねぇ顔だなー」
「ほんとだ…。頭の知り合いで?」
「おー、お前ら。お帰りー」


そんな怖いところに就職したくない!
そう思って丁重にお断りしようかと思ったら、また邪魔が入った…。というか、気配を感じなかったぞ!?
後ろから声をかけてきたのは、仲間の方みたいで、七松先輩やお頭さん以上に巨躯なおじさんたちだった…。
竹谷と両手を合わせてガタガタと震え、身体を小さくさせた。もうやだほんと!
おじさんたち(若い人もいるけど)がその場でお頭さんと会話をして、七松先輩の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
七松先輩は今、ここの下っ端だ。だけど皆に可愛がられているのがよく解った。七松先輩素直だし、実力もあるからなぁ…。
七松先輩を撫でたあと、私と竹谷を見てズンズンとでかい身体を近づいけてきた。
そして、続々と集まってくるお仲間さん…。こ、怖いです…!


「嬢ちゃんと兄ちゃん。お前らよくこんなとこまで登ってこれたな」
「うわー、俺女の子見たの久しぶりっすわぁ!」
「おっ、兄ちゃんは獣使いか?獣の匂いがぷんぷんするな」
「ちっちぇええええ!ちょ、ちっちゃすぎだろこの子!」
「いや、お前らがでけぇんだよ。無駄に筋肉つけやがって」
「でもよぉお頭。こいつら、特に女子のほうちっちゃくねぇか!?」
「女子なんだから小さいに決まってんだろ。いいから屋敷戻れ。俺は今この子たち勧誘してんだから」
「え!?こいつらここに入るんですか!?」
「いえっ、私たちは…。ねぇ、竹谷!?」
「はいっ、まだ入るなんて一言も「入るよな、お前たち?」
「んだよ、小平太の知り合いか?」
「はい。こいつら私の後輩なんです。学生時代からずっと鍛えてきたので、それなりに使えます!」
「勧誘っつっても、試験に合格したから就職させるんだけどな!」
『合格したのか!?』


色んな人にもみくちゃにされ、色んな人に触られまくって、そのたびにビクビクしてしまう。
何なんだよ、この人たち!でっかすぎだし、声大きいし、なんか尻触られたし、ツンツンしてくるし…。人をオモチャにすんじゃねぇえええ!
と思って竹谷のほうを見ると、何故か若いお兄さん方に技をかけられたいた。た、竹谷ァアアアアア!


「千梅ちゃんは耐えたし、竹左ヱ門くんは避けたし。十分素質あるよ、こいつら」
「マジでか!小平太に続いて二人も入ってきてくれるんなら、もっと色んな仕事に行けますね!」
「女子なのにあれを耐えたのか…。すげぇな、あんた……」
「いえ、まぁ……いつも七松先輩にやられてたんで…」
「ヤ…?あんたもしかして小平太の女か!?」
「は?え、まぁ…」
「小平太テメェエエエ!」
「わっ、勘弁してくださいよ」


あー……男の世界だなぁ…。
学園も男ばかりで、そういったノリになったり、そういった話題がよく出てくるけど、ここはもっと凄そうだ…。
別に私は慣れてるからいいけどさ。普通の女の子がここに来たらドン引くんだろうねぇ。
男の人に技をかけられている七松先輩は、「苦しいです」って言いながらも余裕そうに笑っていた。
あまり見ない光景(だって普段は技をかける側の人ですから)を見ていると、お頭さんに肩を叩かれた。


「つーわけでさ、これから宜しくな!」
「……え、マジで就職決定なんですか?」
「今すぐにでも来てほしい」
「それはちょっと…」
「じゃあ来年から宜しくな!」
「いや、…あの、女の私ではちょっとここで生活するのには不便かなぁ…と」
「あー……そうだね。じゃあ千梅ちゃんが来るまでに千梅ちゃん専用の小部屋作っとくわ。あ、俺と一緒に寝る?俺一応お頭だから一人部屋だぜー!」
「結構です」
「即答かよ!ともかく、千梅ちゃんと竹左ヱ門くんが来るまで、準備しとくからなー!」
「いや、もう…マジごめんなさい…。すみません、私には無理ですよ…」
「何で?」
「出た、伝家の宝刀「何で」」
「は?」
「あ、突っ込む相手間違えた。えーっと…、体力ありません、ついていけません、力もないです」
「大丈夫!」
「どっからくるんすか、その自信は…」
「ところで、千梅ちゃん」
「なんすか…」
「腹減らない?」
『減った!』
「はァ!?」


お頭さんは私に質問をしてきたのに、答えたのは七松先輩含む、戦忍びの皆さま方…。
あ、竹谷落ちてる。


「今日はなに食う?やっぱ熊か?」
「頭ぁ、熊は昨日食ったから今日は猪にしやしょうぜ!」
「俺も猪がいいっす!」
「よーし、じゃあ猪な。小平太―」
「はーい!吾妻、竹谷、猪狩りに行くぞ!」
「竹谷、しっかりしろ」
「もう帰りてぇよぉ…。首いてぇよぉ…!」
「最低五匹はいるからな。お前ら、頑張って狩れよ!」
「「……はい…」」


「断る!帰る!」って言って逃げ出そうとしたけど、七松先輩だけじゃなく、その後ろにも飢えた獣が目をギラギラとさせて私たちを見ていたので、諦めて七松先輩のあとを追った。
いつになったら帰れるんだよ…。んでもって、就職却下してもらうにはどうすりゃあいいんだよ…!



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