そんな関係 「……」 五年ろ組所属の忍たまが一人、生物委員が飼育している一頭の豚を眺めていた。 豚は鼻を鳴らしながら地面の匂いをかいで、自分を凝視してくる人間に視線を向ける。 彼は、いや彼女はしゃがんだままニコッと笑顔を作って、豚の頭を撫でた。 「いやー…、君って本当美味しそうだね。ほんっと…、いつ見ても…」 目をキラキラと光らせ、ゴクリと生唾を飲み込む。 ペットとして飼育している豚だが、彼女にとってはただの食用にしか見えておらず、頭を撫でながら「美味しそう」を連発する千梅。 「おまっ、何してんの!?うちのアサコをそういった目で見るな!」 そこへ、生物委員の委員長代理であり、千梅の同室兼悪友である竹谷八左ヱ門が現れ、「美味しそう」と言っている千梅から豚のアサコを引き離した。 大事そうに豚を抱え、千梅を睨みつけるも、彼女は不機嫌そうな表情で八左ヱ門を睨みつけた。 「だって美味しそうじゃん」 「だから!アサコをそういった目で見るんじゃありません!この子は可愛い俺のペットですッ」 「あ、そう。で、いつ食べるの?」 「アサコは食用じゃねぇって言ってんだろ!」 「豚が食用じゃないなんて聞いたことがありません!いいから食わせろよ!」 「アサコはやらん!アサコ、安心しろ…。お前は俺が守るからな…!」 まるで恋人を守るかのような優しい眼差しで豚のアサコを見つめ、優しく頭を撫でてあげると、アサコは八左ヱ門の言葉を理解したかのようにブヒッと鼻を鳴らした。 「きぃいいい!何よさっきからアサコアサコって…!私とアサコ、どっちが大切なの!?」 「悪い…。お前は好きだが、アサコは愛してるんだ…。本当にすまない…」 「こ、この泥棒猫!いや、泥棒豚めッ!竹谷は私のだからね!絶対に渡さないんから!」 「おい吾妻!アサコは関係ねぇだろ!責めるなら俺を責めろよ!」 「そっ…そこまでアサコのことを…!?……くっ…、こんなに二人が愛しあってるなら私の入る隙なんてないじゃない…。解ったわ。竹谷はアサコさんに譲るわ…」 「吾妻…。解ってくれたのか!」 「ええ。でも、諦めたわけじゃないんだからね!」 「ありがとう吾妻。それでも嬉しいよ」 「精々幸せになりなさいよね!」 千梅が泣き真似をしながら二人(詳しくは、一人と一頭)から少し離れて、振り返る。 「で、いつになったらその豚食べんの?」 「食わねぇっつってるじゃん。茶番に付き合ってやったんだから話ぐらい聞けよ」 「あれはあれ。これはこれ。つかマジでその子のこと好きなの?」 「当たり前だろ!見ろこの豊満なボディを!目もクリックリで可愛いし、鳴き声も可愛いし、お尻も魅力的だ!」 「竹谷…」 千梅が憐れみを含んだ目で八左ヱ門を見ると、八左ヱ門はアサコに頬ずりしながらデレデレになった、だらしない顔をこちらに向ける。 「そんなんだから彼女できねぇんだよ」 「え、マジで?」 「うん、マジで」 「………でもアサコは捨てられねぇ!」 「あっそ。じゃ、私夕食食べてくるわ。えーっと、今日は確か………。竹谷ー、今日のB定食なんだっけ」 「おー…、確か豚丼だったわ」 「「………」」 「アサ「違うからな!」 (△ TOP ▽) |