夢/とある後輩の災難 | ナノ

未来の子供


「吾妻と竹谷、みーつけた!」


なわけないよねぇ!
後輩シリーズにオチがないとかダメですよねぇ!
はぁい、暴君様の登場ですよ!


「今から裏裏裏裏………おい、そいつ誰だ?」


ルンルン気分の暴君様、七松先輩は六年長屋から顔を出し、私たちに近づいてくる。
竹谷が身体で小太郎を隠そうとするも、目ざとい七松先輩にすぐに見つかってしまい、目を細めて睨みつけてきた。
その殺気を感じてか、小太郎は私に抱きついたまま顔をあげ、先輩を見るなり「父上…?」とボソリと呟いた。こりゃもう未来の子確定だな…。


「こ、これはですね…。そのっ…!」
「お前、なに吾妻抱きついてる。離れろ」
「父上もお若いですね」
「父上?私はまだ吾妻を孕ませておらん!」
「言い方ァ!」


何でそんな卑猥な言い方しかできないんだよあんたは!
そこは、「私に子供はおらん」とかでいいじゃんっ。


「吾妻ッ、これは一体どういうことだ!それとも私に喧嘩を売っているのか?」
「売ってません!違うんですよ、ちょっと話を聞いて下さい!ちょ、なに拳に殺気込めてんすか!竹谷ヘルプッ」
「竹谷」
「お二人の問題ですから…」
「この野郎ォオオオ!」
「よくも白昼堂々と、しかも六年長屋の近くでそんなことできるな…。一発じゃすまさんぞ」
「痛い痛い痛い痛い!」
「まだ殴ってない」
「殴らなくても解りますから!」


嫉妬するならもっと可愛い嫉妬でお願いしますよぉ!
泣きながら首を左右に振るも、怒った七松先輩の耳には届いておらず、私を睨んだまま拳を鳴らしている。
竹谷はモブと化して気配を消しているので、役には立たない…。


「―――お前、父上じゃないな…」


今日こそ死ぬ!そう思った矢先、小太郎の低い声が緊迫する空気に割って入ってきた…。
先ほどまで可愛く甘えていたのに、今の小太郎は殺気を滲ませ、小平太を臆すことなく睨んでいた。
正直な感想を伝えようと思います。
私がネズミで、目の前の七松先輩は獅子。そしてネズミに抱きついているのも獅子。
とてつもなく怖いです。


「だから、私はまだ吾妻を孕ませてないと言っただろう?」
「父上は母上に対してこんなことせん。父上の顔を借りた偽物だろ?」
「(未来の七松先輩は暴君じゃないのか?)」
「まぁ例え吾妻がお前の母上だろうと、私は許さん」
「私もお前を許さん」
「ならばし合うか?」
「構わん。お前などすぐに倒してやる」
「ほぉ…」


可愛い子かと思いきや、好戦的なところはしっかり受け継いでらっしゃるようで…。
しかも忍たまとは思えないほどの殺気に私のライフはゼロよ!こえぇよこいつら…!何なんだよほんと!
お互い瞳孔を開いて、中庭を降り立つ。と、同時に苦無と苦無が交わる音が響き渡る。


「竹谷ぁ…」
「何だよ」
「見えるか?」
「はっ」
「見えないよねぇ…」
「しっかり暴君の血を受け継いでんじゃねぇか、小太郎の奴…」
「暴君を産み出してるのか、未来の私…」
「で、どうすんだよこれ…」
「とりあえず中在家先輩呼んで来てよ」
「だな…」


竹谷に頼んで中在家先輩を呼んできてもらい、簡単に事情を説明すると、暴れている二人をあっという間に止めた。
彼も七松先輩同様、人外だよね。何で止めれるんだよ…。コツがあるらしいが、一般人の私には全くだよ!


「吾妻っ、そいつから離れろ!私のほうが強い!」
「千梅、あいつは偽物です。確かに強いですが、母上を殴るなんて偽物としか思えません。私が守ります!」
「吾妻!私の言うことが聞けんのか!?」
「少し黙れ、偽物。私の千梅に近づくというなら、本気でその首を落とす」
「んだとぉ!?」
「……中在家先輩…」
「…どうした…?」
「私どうしたらいいんでしょうねぇ…」
「……。未来に帰るまで、しっかり面倒見てあげなさい」
「今面倒だから考えるの放棄したでしょ」
「してない」
「ちょっとは?」
「した。……してない」
「おいこら。うえーん、竹谷ー!」
「あ、俺当分の間雷蔵たちの部屋で寝るから」
「また裏切るのかよ!」


小太郎が未来に帰るまで、私と竹谷の部屋で面倒を見ることになりました。
ついでに七松先輩も…。


「千梅、前みたいに一緒に寝ましょう!」
「前?吾妻、お前…。前もこいつに会ったのか?一緒に寝たのか?」
「偽物、邪魔だ。さがれ」
「お前が下がったらどうだ。吾妻は私のだ」
「偽物にやる千梅はおらん。千梅は私のだ」
「いいや、吾妻は私のものだ!」
「(ああああもう!頼むから静かに寝かせてくれ!)」



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