夢/とある後輩の災難 | ナノ

未来の子供


!注意!
未来から千梅と小平太の子供(オリキャラ・名前変換不可)がやって来ました。





「母上!」
「は?」
「え?」


ようやく座学終わったーっ!と竹谷と喜びながら外に出て、固くなった身体をほぐしていると、見たことのない忍たまを見かけた。
竹谷に聞くも、「知らない」の一言。顔が広い竹谷が知らないなら、私も知らないや。あんまり人の顔覚えるの得意じゃないし。
誰だか解んないけど、その子…微妙に七松先輩に似た子は、誰かを探しているのか、周囲をキョロキョロと見まわしていた。
不思議に思いながらも竹谷と準備運動を続けていると、彼が振り返って私と目が合う。
顔まで七松先輩そっくりで、二人揃ってビクリと震えあがった。でも、目や雰囲気はちょっと違った。優しい感じかなぁ。
そんな子に、何故か「母上」と呼ばれ、私と竹谷の口から素っ頓狂な声がもれる。


「え…?…私?」


その子は嬉しそうに笑顔で私を呼び、タッタッタと近づいてくる。
振り返ってみるも、私の後ろには誰もいない。やっぱり私か。


「お前…その年にしてあんなでけぇ子がいたのかよ…」
「バカか。同級生ぐらいの子だぞ。無理に決まってんだろ」
「七松先輩に殺されるぞ?誰の子供だアァン?って」
「だからっ、違うって言ってんじゃんバカ竹谷!」
「母上!」


心配そうに見てくる竹谷に母親じゃない!と言っているにも関わらず、その子は空気を読むことなく私に抱きついてきた。
遠くにいたから解らなかったけど、結構大きい!身長は竹谷より少し低い程度だ。


「な、何言ってんの!?私、あんたなんて知らないよ!?」
「え…?ですが、その顔どう見ても母上ですよ…?あ、少々若くなられましたか?身長はあまり変わってないようですが」
「いやいや…。私まだ十四だよ?君は?」
「私も十四です!」
「無理だよ!産めないよ!つーか十四にしてその身体つき、たくましいなぁおい!」
「おー…すっげぇ綺麗に筋肉ついてんな…。まるで七松先輩みたいだ…」
「だね。顔も似てるし、声も、髪質も…」
「礼儀正しい七松先輩だな」
「だね!」


七松先輩みたいに、ボサボサとした長い髪の毛を結っている少年は私たちと同じ年齢だった。
身長は低いものの、しっかりと筋肉はついている。ちょっと羨ましい…。
まとう雰囲気や空気は七松先輩そのものなんだけど、どこか…こう…なんだろ。清潔感がある?いや、土で汚れてるんだけど、本質っていうかなぁ……。


「ねぇ、竹谷?」
「野生じみてねぇ?」
「あ、それだ!」
「母上」
「だから私は君のお母さんじゃないってば」
「でも私解ります!匂いだって一緒だし、顔だってそっくりです!」
「年齢考えて言えよ…。君も五年生だろ?産めるわけないじゃん」
「……」
「あれ?何で黙るの?傷ついた?」
「母上…、何だか口が悪いですね…」
「これが素だよバカ野郎。あと七松先輩のせいでもある!」
「いや、それはお前のせいだ。七松先輩は関係ねぇ」
「うっさい黙れ」
「母上母上」
「だーかーらぁ…!私は君のお母さんじゃないって何度言えば解るの!?ほら、名前言ってみろよ。絶対違うから」
「名前ですか?私は七松小太郎と言います」
「「七松!?」」


い、今なんて言った!?七松って言ったか!?あれか、七松先輩の弟か何かか!?
驚きのあまり声が大きくなって叫んだあと、竹谷に近づく。
集合だ集合!作戦タイム!ちょっと待っててね!


「七松先輩って弟いたのか?俺、初耳だぞ!?」
「私もだよ!つかあの人末っ子って言ってなかったか?」
「言ってたよな!?じゃあ何だよあいつ!…あ、…母上って言ってたから………」
「……何だよ…」
「お前と七松先輩の子供、とか…?」
「は?今日の座学でとうとう脳みそ溶けたのか?」
「お前ほんっと口悪いな。いや、でもそうとしか考えられねぇじゃん?」
「例え子供だとして、何で子供がここにいるんだよ。ドラえもんができるの何百年も先だぞバーカ」
「これが二次創作によくある展開だ」
「そこまで言っちゃう?」
「母上」
「え、ちょ、なに?」
「今日はなんだか可愛いですね!久しぶりにお会いできたらからでしょうか」
「ハァ!?」
「七松先輩の顔でタラシとか…。心臓に悪いなおい…」


ニコニコと最初から変わらない笑顔で……七松先輩に似た顔でそんなことを言われるものだから、恥ずかしくてたまんないよ!
若干顔が赤くなりつつ、咳払いをして彼……小太郎くんを真っ直ぐ見る。


「えーっとねぇ…、変なこと聞いていい?」
「はい」
「小太郎くんのお母さんの名前ってなに?」
「千梅」
「オウ、シット…」
「吾妻、お前日本人だろ」
「何だよこれ…。マジでなんだよ…!」
「でもよー、言われてみればお前に似てるわ」
「はぁ?」
「全体的に七松先輩な感じだけど、雰囲気とか目とかはお前似だよな。だからこう威圧的な感じしねぇし、野生じみてねぇ…」
「あー……そうなんだ…。私じゃ解んないなぁ…」
「ところで母上」
「だからっ……あー、…いや。合ってんのかなぁ…」
「何で制服を着ておられるんですか?」
「「だよなー…」」


何故こうなったか、私にも竹谷にも、小太郎くんにも解らないので、とりあえずゆっくり話せる五年長屋へと連れて行くことにした。
六年生に見つかったら面倒だしね。五年長屋ならなんとか匿えるでしょ。


「何だか少し新しいですね。あ、私の部屋はこっちなんですよ!五年生になってから学園に来るのは初めてでしたよね、母上!」
「……竹谷くーん。違和感ありまくりなのは私だけかなぁ…」
「吾妻さーん。僕もですよー…。ともかく簡単に説明してやろうぜ」
「だね。ねぇ、小太郎くん。ちょっといいかな」
「……」
「どうした?(そうやっていきなり黙るとこは七松先輩に似てるな)」
「何故、「くん」をつけるのですか?何だか他人行儀みたいでイヤです…」
「かわっ…!(可愛いいいいい!撫でてあげたい!)」
「落ちつけ吾妻」
「じゃ、じゃあ小太郎でいい?」
「勿論です!」
「あ、私からも提案していいかな?」
「はいっ」
「私のことを母上って呼ぶの止めてくれない?」
「え?」
「今から事情を説明するからね。だから、私のことは吾妻って呼んでよ」
「吾妻?それは母上の旧姓ですよね?」
「…。うん、やっぱりこの子私の子供だね」
「だな。つか名字じゃなくて名前でいいだろ」
「すまん。皆私のこと吾妻で呼ぶからそっちで慣れてんだ。小太郎、名前で呼んで」
「しかし…、そんな失礼なことは…」
「おいこれ本当に七松先輩の息子か?」
「きっと私の血を継いだんだよ。ほら、私って礼儀正しいじゃん?」
「間違った日本語使いまくってるけどな」
「黙れ童貞」
「うるせぇ貧乳」


ともかく、五年長屋の縁側に座り、息をつくことができた。
どうにか小太郎にも「千梅」と呼んでもらえるようなり、事情を話す。
とは言っても私たちも本当かどうか知らん。ありえん話だ。
でも小太郎は素直に私の言うことを聞いて、「解りました」と頷いてくれた。素直でいい子だねぇ…。いや、ただ細かいことを気にしてないだけか?


「で、未来の子が来たのはいいけど、どうすんの?」
「俺に聞かれても…。つーか俺関係ねぇじゃん」
「まぁいいではないか」
「千梅千梅!」
「ん?(呼び方が七松先輩そっくり…)」
「千梅の忍たま時代に会えて、私本当に嬉しいです!」


無邪気に笑う小太郎は本当に可愛いです!
彼の言動に毎度胸をキュンキュンさせながら、未来のことを少し聞いてみた。
こういうのってあまり聞かないほうがいい気がするんだけど、ちょっとぐらいいいよね。


「なに聞こうか…」
「なぁ、俺にも嫁さんいる?」
「竹谷必死すぎ」
「うるせぇ!で、いる!?」
「解りません」
「え、何でだよ!交流ぐらいあんだろ?」
「ありません」
「……。吾妻、卒業しても友達でいてくれよな…」
「当たり前だろ」
「じゃあ何でこんなこと言ってんだよ!」
「さぁ…?竹谷死んじゃったの?」
「おい!」
「いいえ。私たちの家は森の奥深くにあるので、あまり交流がないのです。父上は仕事でお忙しいですし、母上は弟たちの面倒や畑で忙しいので」
「あ、まだ子供いるんだ」
「はい。私が長男で、次男と「あーいい!喋らないで!」


聞きたいけど、聞きたくない!
口を抑えるとコクコクッと何度か頷いて、解放してあげる。


「そう言えば忍たまの制服着てるけど、小太郎も忍術学園?」
「はい!私も父上や母上のような立派な戦忍びになりたいのです!」
「やっぱり七松先輩は戦忍びになってんだ…」
「さすがだな…」
「千梅。私からも質問していいですか?」
「あ、うん。どうぞどうぞ」
「胸が何故こんなにも小さいのですか?」
「……」
「ブハッ!」
「まさかこんなに小さいとは…」
「小太郎…、ちょぉっと組み手でもしない…?」
「しかし、とても可愛らしいです!母上は優しくて、綺麗で自慢の母上なのですが、今目の前にいる母上は格好よくて可愛いです!やはり自慢の母上です!」
「……くそー…こんなこと言われたら殴れないッ!」
「……くくっ……未来の子供にまでっ…!も、なんの冗談だよ…ひぃ!」
「代わりに貴様を殴る」
「いたっ!」


お腹を抱え、目じりに涙を浮かべている竹谷の頭を殴って、何度か言い争っていると、小太郎がもじもじしながら「あの…」と声をかけてきた。


「どうした?小太郎も竹谷殴る?力どうせ強いんでしょ?思いっきり殴っていいよ」
「ふざけんなよ吾妻!子供に変な教育すんじゃねぇ!」
「あ、あのですね…。久しぶりに会ったから、その…。膝枕、をしてくれませんか…?上級生になってからあまり家に帰れないので……あの…」
「…」
「おい吾妻。無表情で胸をときめかせてんじゃねぇよ」
「だってうちの子可愛い。天使」
「ただの親バカかよ…」
「背丈変わんない私でもよければ来いよ!」
「ありがとうございます!」


上目使いでおねだりされたら、そりゃあ言うこと聞きますよ。
正座ではなく、中庭に足をおろして膝をポンポンっと叩いて、「どうぞ」と言うと、小太郎は恥ずかしそうではあったが、寝転んで頭を乗せた。


「千梅ー…」
「子供っていいね、癒される」
「顔は七松先輩そっくりで怖いけどな」
「雰囲気も性格も全然違うよ」
「母上ぇ…」
「(あ、ちょっと泣いてる…)」


顔の様子を見ようとする首を動かしたと同時に、私のお腹に抱きついてきた。
ぐすんぐすんと鼻を鳴らしているのも聞こえてきたので、背中を優しく撫でてあげる。
うーん…、私や竹谷は実家に帰りたいとか、寂しいとかって思わなかったんだけどなぁ…。小太郎は寂しいのか。
無言のまま竹谷を見ると、声に出さずに笑って空を見上げる。
こんな私でよければ、甘えるがいいさ!
そう思って、背中を擦りながら私も空を見上げて、幸せな時間をゆっくり過ごした。




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