夢/とある後輩の災難 | ナノ

暴君と自由人と苦労人


「長次ー、ちょっと聞いてくれー」
「……。どうした、小平太…相談か…?」
「うん…。あのな、千梅の奴、最近私を見ると逃げるんだ…。私何かしただろうか…?」
「無理やり振り回してるとか…」
「してない。あいつらがちゃんと、「行きます」って言ってから振りまわしてる」
「なら他に事情があるんじゃないのか…?話はちゃんと聞いてあげたか?」
「聞いた。でも逃げる…」
「………。解った…、私が話してこよう…」
「うん…」

一階ロビー部屋でゲームしている二人のところへ向かう。

「ちょ、竹谷。今の卑怯!マジ卑怯!赤甲羅とか卑怯すぎる!」
「バカ野郎!勝負に卑怯もねぇよ!もういっちょくらえ!」
「いぎゃあああああああよっしゃああああ、スターきたーっ!」
「ちょ、吾妻!それは卑怯だ!」
「勝負に卑怯もくそもねぇんだよバーカ!」
「ぎゃああああ!」
「…吾妻、竹谷」
「あ、なんすか中在家先輩。甘いもんはここにはありませんよ。うっし、一位!」
「くそー…連勝かと思ったのに…」
「ゲームは止めてちょっとこっちに来なさい…」
「え?お、おい竹谷…お前なんかしたか?」
「い、いや……何もしてねぇよ。吾妻は?」
「私も……。あ、この間伊作先輩の悪口は言った」
「またかよ!」
「二人とも、早く座りなさい…」
「「あ、はい…」」

長次の目の前に正座する二人。

「吾妻」
「はい」
「小平太から逃げてるって聞いたが、……その、逃げてるのか?」
「え?あー……逃げてるって言うか…まぁ、あれですよね、あんなに振りまわされたらちょっと…。あと、竹谷とか他の子と遊ぶ約束してますし…」
「それをちゃんと小平太に伝えたか…?」
「伝えましたよ。でも、「何で?」しか返ってこないんですよー…。人の話聞いてくれませんよ、あの人」
「それは吾妻の言い方が悪い…。小平太にはもっとシンプルに伝えないと……」
「伝えても無理なんですよ!あの人、地球は俺を中心に回ってるってマジで思ってる人ですよ!?」
「吾妻、悪口はよくない…。小平太のこと嫌いなのか…?」
「好きっすよ。好きですけど、私にだってプライベートとか、色々あるんす。それを解ってくれないんです。あと最近横暴さが酷い」
「小平太は吾妻のこと好いてる。ワガママだと思うかもしれないが、吾妻ももうちょっと小平太に構ってあげてくれ…」
「(……俺思ったんだよ。これ、俺関係なくね?え、ここにいる意味ねぇよな?これって七松先輩と吾妻の話だろ?)あのー…中在家先輩…」
「…どうした?」
「俺、関係ない、ですよね…?じゃあちょっと席外しますね」
「ちゃんと座っていなさい…」
「えッ!?あ、でも俺っ…」
「座ってなさい」
「あ………はい…」(しゅん…)
「…。吾妻、小平太にはちゃんと言わないと解らないから…」
「(ほらっ、吾妻のほう見るんじゃん!俺関係ねぇじゃん!)」
「……解りました…ちゃんと伝えます…」
「解ってくれてよかった…。小平太には私から伝えてこよう」
「マジっすか。中在家先輩から言ってくれると助かります。お願いします!」
「じゃあ…」
「ういっす!」

(バタン)

「なぁ吾妻!今の場面に俺必要だったか!?いらねぇよな!?」
「え?ああ、……ほんとにね。何でいたの?」
「俺が聞きてぇよ!俺関係ねぇのに説教された気分だよ!」
「まぁまぁ。ほら、ゲームの続きしようよ」
「よっしゃ、今度こそ勝ってやる!俺の右腕が火を吹くぜ!」

(バンッ!)

「うわああああ!」
「にぎゃああああ!」
「長次から聞いてきた!吾妻、お前私に言いたいことがあるそうだな!」
「うえっ!?つか早くね?いや、それより何でこのタイミングで!?」
「話聞いてやるから話せ」
「い、いや…。今は特に…」
「そうか、じゃあ私が聞こう」
「(何でだよ)」
「何で逃げた?」
「えー……まだ引っ張るんすか…」
「あ?」
「えっとですね…」

小平太が座るので吾妻もまた正座して、何故か流れで八左ヱ門も正座する。

「私にも色々とやりたいことがあるんです」
「色々って何だ?」
「色々は色々です。プライベートな問題です」
「……」
「睨まないで下さいよ…」
「私よりそっちのほうが大事なのか?」
「何でちょっと女々しいこと言ってんすか…」
「私のものが私に逆らうのが腹立つだけだ」
「(まさに暴君)えーっと…、その…あれですよ、ねぇ竹谷?」
「え!?(ここで俺に振るの!?いや、無理だって。つか俺関係ねぇし!)」
「またそれだ!吾妻はすぐに竹谷ばっかだな!」
「だ、だってこれ竹谷も関係ありますし…」
「何だ」
「あー……竹谷とゲーセン行ったり、ご飯食べたりしてるんです。あと女の子の友達とも遊んでるし…。だから、ずっと七松先輩に付き合えないです」
「じゃあ私もゲーセン行く。ご飯も食べる」
「……七松先輩、いっつもゲーセンの機械壊すじゃないですか…。ご飯だって……。私そこまでお金ありませんし、無理ですよ」
「お金ないのにゲーセン行くのか?」
「(くっそ、耳ざとい…)ともかく、竹谷とか他の子と遊びたいときだってあるから、無理です」
「それと、逃げるのとどう関係があるんだ?」
「(解れよ!何で今の流れで解んないんだよ!……はっ、私の言い方がいけないのか。シンプルに言わないと…)七松先輩とは遊べないから逃げてました」
「逃げなくてもいいだろう?」
「逃げないと無理やり連れて行くじゃないですか!」
「だって誘ったんだもん」
「だもんって可愛いなちきしょう!」
「あ?」
「すみません!」
「お前、私のこと嫌いだろ」
「そんなことないです」
「だって好きって言わない」
「どうしたんすか、今日は。ほんとに女々しいですね」
「女々しくない。ずっと気になってた」
「細かいことは気にしない性格じゃないんですか?」
「細かくない」
「わお…」
「吾妻、お前私のこと嫌いだろ」
「………っすよ…」
「聞こえん」
「好きですよー…。好きですが、他の子と遊びたいときだってあるんですよぉ…、何で解ってくれないんすかぁ…」
「それは解った」
「え!?」
「でも何で逃げるのか解らん」
「だからッ!」
「あのッ!」
「何だ?」
「俺、どう見ても関係ないっすよね…?じゃあちょっと「うるさい黙ってろ」っ……すみません…」
「そう言うことなんです。七松先輩のことは嫌いじゃないです。でも、いっつもはいられないです。他の子とも遊びたいです」
「他の子って竹谷とだろ?竹谷とは一緒にいれるのに、私とはいれないのか?」
「な……なまつ先輩が無理なこと言わなければ一緒にいたいですよ…」
「無理なことなんて言ってない!現にお前たち私について来れるだろう?」
「頑張ってるからですよー…。七松先輩に嫌われたくないから頑張ってるんですぅ…!でも遊ぶのぐらい好きにさせて下さいよー…」
「むう……。じゃあ逃げずにちゃんと言え。何で言わん」
「(前に言ったら「何で」って言われたからだよちきしょうめ)」
「ちゃんと言わないとダメだって長次が言ってた!」
「解りました、次回からはちゃんと伝えるようにします」
「おう!」
「じゃあこれで終わりですね」
「で、何で前は逃げてた?」
「まだ引っ張りますか!」
「だって他に理由があるだろう?」
「うっ……。あーもうっ、竹谷!」
「うえッ!?な、何だよ…」
「全部言ってやれ!」
「お、俺がッ!?いや……つか俺…関係ない…」
「竹谷は関係ない!私はお前に聞いてるんだ!」
「で、ですよね!俺関係ないですよね!?じゃあ帰らせて頂きます!」
「竹谷、ちゃんと座ってろ!」
「なっ…(んでなんすか!俺関係ねぇじゃんよ!)……はい…」
「ともかく色々です!他にしたいことがあったから逃げたんです!これで満足ですか!?」
「だからッ、何故それをその時に伝えん!」
「それはすみませんでした!今度からちゃんと伝えますのでもう許して下さい!」
「やだ!」
「何でだよ!」
「だって吾妻、私のこと嫌ってる!」
「嫌いじゃないです!好きです!嫌いだったもっと遠くまで逃げてます!大学も辞めてますし、実家に帰ってます!」
「ほんとか?」
「ほんとっす。七松先輩が好きだから振り回されても嫌いにならないし、ここに残ってます」
「っ私も好きだぞ!」
「…………」
「吾妻?」
「……ありがとう、ございます…」
「おう!」
「(おいマジふざけんなよ。勝手に巻き込んで、勝手に喧嘩して、勝手に仲直りか?彼女いねぇ俺の前でやんなよ!)」
「じゃあ遊びに行くぞ!」
「それはお断りします」
「何で?」
「今は竹谷とゲームしてるからです」
「何で!」
「ですから、竹谷とゲームしてるから無理です。さあ、ちゃんとお伝えしましたよ!」
「………吾妻、何か勘違いしてないか?」
「え?」
「私は、「行くぞ」と言ったんだ」
「………命令系だ!」
「私が言うことは?」
「……ぐすん、ぜったーい…」
「よし行くぞ!竹谷、何してる。お前も来い」
「……」
「お前なに泣いてんだ?男のくせに気持ち悪い…」
「俺、今だけ二人のこと嫌いっす…」



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