夢/とある後輩の災難 | ナノ

リップクリームの話


「―――あ、リップがない…。ねぇねぇ、誰かリップ持ってない?ちょっと貸してー。唇が痛くて痛く…」
「貸してってことは、ちゃんと返してくれるのか?」
「三郎うるさい。お前には借りんわ。らいぞー!」
「いいよー。僕たくさんあるし。はい、どれがいい?」
「うっわ……。なんでこんなにたくさんあるの?つか統一性がないね…。メンソレータムに色つきリップ、その他諸々」
「えへへー。なくしたと思って買ったら色んな場所から出てくるんだよねー」
「雷蔵、私が言うのもなんだけど、鞄の中とかもうちょっと綺麗にしよ?」
「え、綺麗だよ?」
「これだから大雑把は!ところで勘ちゃんはどんなリップ持ってるの?」
「俺?俺はねー……。はい、これ!」
「これ、今女性に人気のリップじゃん。しかも匂いつき」
「ちょっと前にデートした子から貰ったんだー!もう別れちゃったけど使い心地いいし使ってんの。よかったら千梅にあげるよ」
「勘ちゃんプレイボーイすぎ。その子が可哀想だからいらないよ…。つかまた別れたんだ」
「だって束縛するんだもん」
「あーそう。兵助は?」
「俺か?俺は勿論「豆腐ですか、そうですか」違う!豆乳だ!」
「んなもんねぇよ豆腐馬鹿!」
「本望だッ!」
「うぜぇえええええ!」

「おーい、吾妻ー」

「竹谷!よかった!ツッコミが私しかいなくて辛かったんだ!」
「ふっ、満を持して登場した俺…。格好よかったか?」
「いや、別に」
「そこは便乗しろよ。あ、そうだ。お前この間俺んち来たときリップ忘れてたぞ。ほら」
「おー!竹谷んちに忘れてたのか。どおりで探しても見つからないはずだ!ありがとー」
「どういたしまして」
「お前らほんとに仲がいいな…。吾妻に至っては七松先輩の彼女だろ?何でそんなホイホイと他の男の家に遊びに行くんだよ」
「え、だって竹谷じゃん。竹谷が私襲うわけないじゃん。ね?」
「おうよ!こんな貧乳相手に俺の息子が反応するわけねぇ!」
「はい、今ので今月のエロ本をお前に貸すことがなくなりましたー。つーかもう一生貸さねぇ」
「すみません吾妻さん。本当にごめんなさい。貧乳だなんて本当のこと言ってすみません。ちょっとはありますもんね、ちょっとは」
「お前マジで殴るぞ」
「だって本当のことじゃん!」
「まず、女の子がエロ本買うってほうに突っ込んでほしいよね、兵助」
「まぁそれが吾妻だしな」



「あー、もう竹谷嫌い。さっさと帰ろー」
「俺もお前嫌い。貧乳は帰って乳でも揉んでな!まぁ無駄な努力だけどな!」
「ぐぬぬ…!」
「千梅ー、リップまた忘れてるよー」
「あ、ごめん雷蔵。ありがとう!あばよ、童貞野郎!」
「あばよ、貧乳娘!」
「―――……あれ?このリップ、なんか前より短い…」
「……あ、悪い。そっち俺のリップだ。お前もメンソレータムとかややこしいんだよ」
「間接キッスかよ!」
「ばっ…!おまっ、照れんだろ…。そういうこと大声で言うなよな…」
「や、やだ私ったら…。ごめんね、八左ヱ門くん……その、……でも…私、嫌いじゃない、よ?」
「千梅…。へへっ、俺も嫌いじゃねぇぜ。寧ろ………あ、あれだ……っ、その…」
「な、なに…?」
「俺もっ…俺も、う、う、う、…嬉しいぜッ!」
「八左ヱ門くぅん…!」

「何だってあいつらはいつも小芝居をするんだろうな。雷蔵、そろそろ帰ろう」
「でも同じような展開だけど、ネタ被りしてないのが凄いよね」
「あはは、俺は嫌いじゃないよ。見ててすっげぇ楽しい!」
「でも勘ちゃん。今日はデートがあるとか言ってなかったか?」
「あ、そうだった!じゃあ俺帰るねー。兵助、寄り道せずに帰れよー」
「今から寄り道する勘ちゃんに言われたくないのだ」
「ところで三郎。あの二人はどうするの?」
「バカは放っておくに限る。それに、オチも読めてるしな」
「……ああ…そうだね…」

「俺たち、両想いだったんだな…。へへっ、今まで気づかなくてごめんな」
「ううん、私こそ。ふふっ、八左ヱ門くんと付き合えてすっごく嬉しい!」
「誰と誰が付き合うんだ?」
「私と八左ヱ…………すみません、七松先輩」
「(一瞬マジで心臓が止まった。もうやだ死にたい)」
「で、誰と誰が付き合うんだ?」
「これは冗談ですよ冗談!私と竹谷が付き合うわけないじゃないですか!」
「でも今そう言ったじゃないか。お前は私のなのにおかしな話だよな」
「ですからっ、冗談なんですよ!ね、竹谷!?」
「そ、そうですよ七松先輩!俺が先輩の女を取るわけないじゃないですか!(つか取れねぇよ!)」
「そうか。でも私そう言った冗談嫌いだ」
「「すみません!」」
「次言ったら二人とも鉄拳制裁な!」
「「了解です!」」
「よし、じゃあ帰るぞ!今から竹谷んちに行ってエロビ見る!」
「「はい、喜んで!」」

「……何で彼女と一緒にAV見るんだろうね…」
「それが吾妻だからな。今更だよ、雷蔵」
「そうだね。うん、今日も二人のおかげで楽しかった!」




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