彼と彼女のすれ違い !注意! コネタの恋口さん設定です。 社会人七松×女子高生後輩主になってます。 七松さんは独り暮らし。 「お、お邪魔します…」 「おう、あがれ」 初めて七松さんの家にあがってしまった…。 緊張で身体が強張り、一つ一つの行動がどうしてもぎこちなくなってしまう。 持ってきた学校の鞄と小さなバックを握りしめ、靴を脱いであがると、七松さんも自宅にあがって扉を閉める。 「(ああ……とうとう来てしまった…!)」 今日は珍しく家に誰もいないので、泊りに来いと言われた。 兄弟数名には反対されたけど、数名は賛成してくれ、私も泊まりたいとお願いをした。 七松さんと恋人になって数年経ったが、私に色気がないせいで全くそういうことはない。 私も苦手だから嬉しいんだけど、我慢してるんじゃないかと心配になってくる。謝りたくなる。 す、少しぐらい頑張らなければ! そう思って素直にお泊りに来ました! 「でも、別に学校まで迎えに来て頂かなくても…」 「お前の兄に頼まれてるんだ」 泊まりに行くと決まって、今日。七松さんがわざわざ学校まで車で迎えに来てくれた。 確かに歩くには結構距離があるけど、無理ではない。 でも、嬉しかったなぁ。いつもとは違う七松さんの顔が見れて、すっごく嬉しかった。 シンプルな服装なのに、こんなにも格好よく見えるのはきっと好きだからだ。いやいや、本当に格好いいんだってば。 「…そういうときだけ過保護になるんすよねぇ」 「ともかくあがれ。茶とコーヒーどっちがいい?」 「どちらでも」 「じゃあコーヒーな」 一人暮らしなので狭い部屋なのかな?と思ったら、そうでもなかった。 ベットと二人用のソファ、テレビとテーブル。それらを置いてもそれなりのスペースがある。 それより一番驚いたことが、 「部屋が綺麗だ…」 「あんまり家にいないから、散らかすことがないんだ」 そう、綺麗なのだ。 ベットが多少乱れている程度で、乱れていない。もっと言うと生活臭がしない。 持って来た荷物は部屋の隅に置いて、どこに座ろうかと思ってその場に立ち尽くしていたら、後ろからコーヒーを持った七松さんに笑われ、ソファを顎で指す。 「ほら」 「ありがとうございます」 控え目にソファに座って、コーヒーが入ったマグカップを受け取る。 七松さんは私にマグカップを渡したあと、隣に座って来て、思わず身体が過剰に反応してしまった。 だけどバレることなく、目の前に置かれていたテーブルの上に置かれているリモコンに手を伸ばす。 「この時間帯ほとんどいないから知らないなぁ…」 「私もテレビはあまり…。夕食の準備してますし。あ、そうだ!夕食どうしますか?私作りますよ!買い物にも行きますし!」 カップを机に置いて、早口で喋り立ち上がる。 あ……あからさますぎたかなぁ…!べ、別にこの空間がくすぐったいとかって思ってないんだからね!七松さんの体温が伝わってきて、熱くなったとかじゃないから! 「今日ぐらい休めばいいだろ」 「いえいえ!お泊りさせて頂くんだし、何かお礼を…!」 「真面目だなぁ、お前は。じゃあ適当に作ってもらうか」 「お任せ下さい!」 よっしゃ、セーフ!セーフだ千梅! 七松さんはコーヒーを飲み干し、カップを洗面台に持って行ったあと、適当に投げていた仕事用の鞄から財布を取り出し、お尻ポケットに突っ込んだ。 私も鞄から慌てて財布を取り出して七松さんの元へと向かう。 「いいよ、私が出す」 「いえ!」 「お前なぁ、少しは甘えるってこと覚えたほうがいいぞ?」 「……で、では…」 「よし。近くにスーパーがあるから便利なんだ。私もよくお世話になってる!」 「へー…」 七松さんは笑って自分のことを話してくれた。 社会人と高校生だから時間が合わない。七松さんの仕事は何だか忙しそうだし…。 だから色んなお話が聞けて嬉しい。 「(それに、何だか新婚さんみたいだ)」 「千梅ー、私ハンバーグ食べたい」 「兄と同じようなリクエストをするんですね」 部屋に戻ると恥ずかしいけど、やっぱり嬉しい。頬がにやけてしまう。 七松さんと一緒に食材を選んで、買って、また家へと戻る。 「私も手伝おうか?」 「私が作りますので、七松さんは休んでてください」 「えー、私こう見えて器用だぞ?」 「私一人のほうが早いです」 「じゃあテレビ見てる。長次からDVD借りたんだー」 私よりいくつも離れた人なのに、むくれる七松さんは可愛かった。 ソファに戻って、中在家さんから借りたDVDを静かに見始めたので、私も黙々と夕食の準備に入る。 普段から家でしていることとは言え、他人のキッチンは少しやり辛い。 それに、食べる相手は好きな人。が、頑張らないと…!でも早く完成させないと! 「…」 「…」 映画と料理を作る音だけが部屋に流れる。 作り始めたときは窓の外はほんのり明るかったが、夕食が完成することにはどっぷり暗くなっていた。 いつもよりは遅いけど、そこまで待たせてない…はず。 「七松さん、食器勝手に借りますね」 「おー」 映画に目を奪われたまま答えてくれて、何だかおかしくなった。 格好いいのに可愛い、年上の恋人。 可愛いなんて言ったら怒られるけど、胸のときめきが止まらない。ふふ、乙女な自分気持ち悪い。 「七松さんのハンバーグは少しでかめに焼きましたー。中もしっかり焼けてますよ」 「おおおお!家じゃないと食べれない大きさだな!ありがとう、いただきます!」 「野菜も食べて下さいね」 「私はいらんと言ったのに入れたのはお前だろ。お前が食え」 「ダメっす。野菜も大事っす!」 「ハンバーグの中にも入ってる!」 「それじゃあ足りないですってば!」 攻防をしながらも夕食を食べ終わり、食器を片づけてから再び沈黙が訪れた。 途中だった映画をつけて、続きを見る七松さん。 私は……どこに座ったらいいんだろうか。 七松さんの隣、ソファに座りたいけど、何だか恥ずかしいし…。 だからソファの横に座ると、七松さんが首を傾げて私を見てきた。 「何でそこ座るんだ?ソファのほうが尻冷えんぞ?」 「ん、んー…」 「ほら」 少し動いて自分の横をぽんぽんと叩いてくれる。 膝立ちしてそこまで近づき、隣に腰をおろす。勿論、できるだけ七松さんに触れないように。 一緒になってテレビを見るけど、全く意味が解らない。 「(この態度…やっぱり失礼だよね。でもどうしたらいいのか解らないんだよ…。意識しすぎるのも失礼みたいだし。…あー……どうしたらいいんだろう。…いや待て千梅。夕食も食べた、あとはお風呂入って寝るだけだ。なんだけど、泊まりに来てんだぞ。私もそういう覚悟できたんだぞ…!どどどどどうしよう!どうしようっ!やっぱりお風呂はきちんと入りたいよな。今の私滅茶苦茶汗臭い!うー、お風呂入りたい。でも「お風呂入っていいですか?」って聞けばそういう空気になりそうだし…。だからそれでいいんだってば千梅!その覚悟できたんだ、いい加減腹を括れよ!それに私に色気ねぇから頑張らないと!そう、頑張れ千梅!何をだよ千梅!あー……考えるのしんどい…。まずはいい加減制服脱ぎたい。服は貸すから持ってこなくていいって言われたから持って来なかったけど…)あ、あの七松さん…」 「んー?」 「あの……いい加減制服を脱ぎたいのですが、服って…」 「ああ。よいしょ…。えっと、……はい。私のスエット貸してやる」 「ありがとうございます。……折角なんでお風呂頂いてもいいですか?」 「おー。好きに使っていいぞー。長次とかも勝手に入るし」 「じゃあ先に失礼します」 よし、今の流れならおかしくない!よくやったぞ、千梅! 立ち上がって風呂場へと向かう。 狭い洗面所には洗濯機があり、その上に仕事で着るシャツが積み重なっていた。 多分…まとめて洗濯するつもりなんだろう。大雑把だ。 「朝にでも洗濯してあげるかなぁ」 洗濯なんて、洗濯機に投げてスイッチ一つで終わりなのに何故だ。 あ、でも一枚なら逆に勿体ないか。 制服を脱いで、しわにならないように適当な場所にたたんで置く。 → → → → (△ TOP ▽) |