▽ SS企画 その28 伊作先輩と一緒に任務に出かけたのはよかった。よくないけど、まぁよかった。 なんだかんだで六年生だからかなり頼りになるし、主に後方支援だから私との相性もいい。性格は悪いが。 でも私が伊作先輩との息をうまく合わせることができなく、敵に放った毒薬を私も一緒に吸い込んでしまい、その場に倒れる。 喉が苦しくて、水が欲しくてたまらない。喉に爪をたてて、この苦しみから逃れようとするも、喉だけじゃなく目も痛みだした。 とうとう息をすることもできなくなって、目も開けれなくなったとき、「私は死ぬんだ」と悟る。 こんなところで死にたくないと思った瞬間、強い口調で名前を呼ばれて頭から水を浴びた。 「この薬飲んで!早く!僕は水をまた汲んでくるから、横になってとにかく呼吸をして。痛くてもするんだ。いいね!?」 痛みと苦しみで伊作先輩がいるのをすっかり忘れていた…。 テキパキと的確な指示をしたので、私も大人しく彼に従った。 いつもは大嫌いな憎らしい先輩だけど、やっぱり先輩だし…。 薬を飲んで、意識して呼吸を整えていると、伊作先輩が戻ってきた。 「ひたすら喉を洗って。顔も、目も洗って」 「…っあ…」 「喋ったらダメだよ。ね?」 私には滅多に見せない真面目な表情を見て、コクリと頷く。 汲んで来てもらった水で喉を何度も洗っていくと、次第に呼吸するのが楽になってきた。 目も何度も洗ったから痛みが和らいだ。 「……ありが、う……」 「いいよ…。元はと言えば僕の薬のせいだ」 「でも…っ…あ……っ!」 「後輩を傷つける先輩がどこにいる?先輩としても忍びとしても今の僕は失格だよ…。ごめんね」 なんとあの伊作先輩が謝った!私のことが嫌いなのに! 俯いて悔しそうな表情をする伊作先輩に「いいですよ」と途切れ途切れに答えると、苦笑いを浮かべた。 「おんぶ、しなくても歩け、ますっ…」 「いいからジッとしてなよ。解毒剤飲んだとは言え、足痺れてるだろ?」 「そ、だけど、歩ける…!」 「じゃあ降りてみなよ。無理だろう?はい、ジッとしといてねー」 任務も伊作先輩が終わらせてくれて、終了。 痛みはすっかり引いたのだが、足腰が痺れて立ち上がることができなかったので、伊作先輩におんぶしてもらって学園に戻っているのだが、これは恥ずかしい。 何より伊作先輩におんぶはなんだか怖い!明日あたりに小言を言われそうだ…。 「……ごめんね」 「…もういいですよ」 「でもやっぱりすぐには死なないんだよなぁ…。ねぇ、やっぱり一回ぐらい解剖させてよ」 「断るっ」 いい先輩のは知ってるけど、解剖だけは勘弁してくれ! おまけ 「あとはゆっくり休むことだね。はい、寝て」 「解ってますよ…。でも…」 「任務のことは僕に任せていいからゆっくりお休み。君に迷惑をかけたんだ、これぐらいやらせておくれ。それとも僕じゃ頼りにならないかい?」 「そうじゃなくて……」 「大丈夫だから。元気じゃない君は何だか寂しいからさ」 「(イケメン顔でそんなこと言うなよ…!)解りました、寝ますから…。あとお願いします」 「うん。何かあったらすぐに呼ぶんだよ。じゃ」 「はぁ…。…………イケメンは心臓に悪い…」 「―――毒吸ったのか?」 「わっ!?な、七松先輩っ!?」 「お前もまだまだだな!いつも近距離同士の者と戦っているからそういうことになるのだ」 「ぐっ……ごもっともです…」 「もっと鍛錬が必要なことがよぉく解ったから、元気になった鍛錬だぞ!」 「(マジか!)あー……はい…頑張ります…」 「それと、お前伊作が好きだったのか?」 「え?」 「珍しく伊作に噛みつかないんだなと思って」 「いや……えーっと、伊作先輩って顔はイケメンですよね?」 「そうか?」 「(あー、この人はイケメンとかそういうの解らないんだろうなぁ…)普段とのギャップにやられたんです」 「ふーん…。解った、ちょっと待ってろ」 「え?…私、休みたいんだけど…」 (それから) 「ほら」 「……花?」 「病人と言えば花だって長次が言ってたからな!早く元気なれよ。そして鍛錬だ!」 「…ふふっ。そうですね、ありがとうございます。一日安静にしてたら大丈夫だと思いますよ」 「おう!」 |