▽ SS企画 その26 ぽかぽかと温かい日差しを縁側廊下に座って、全身で浴びる。 手には美味しいお茶。横には大好きな人。 たったそれだけなのに、この空間が凄く気持ちよくて思わずニヤけてしまった。 幸せなのに、もっと幸せになりたいと思ってしまった私は、湯呑をお盆の上に戻して長次の手をぎゅっと握る。 長次も眠たかったのか目を瞑っていたけど、開けて私を見てきた。 えへへ。と笑って、指を絡める。所謂、恋人繋ぎだ。 二人っきりでないとできないことをしたら、腕を後ろに引っ張られて押し倒された。 廊下で頭を打った…。痛い…。 「長次…」 何するの?と声をかけようとしたら、太陽をその大きな背中で隠して私を見下ろしていた。 押し倒したというのに、いつもと変わらない何を考えているのか解らない表情。 長次の長い髪の毛がサラリと肩から落ちて、私の頬に微かにくすぐる。 長いと言っても仙蔵ほどじゃない。距離が近くて呼吸が止まりかける。 「何で?」 何でいきなり押し倒したりしたの。でもちょっと雑だね。頭痛いよ。 と言ってやりたいのに、長次の真面目な顔が言葉が詰まらせる。 意志を読み取ることができない目に居心地悪さを感じて目を背けると名前を呼ばれ、目を強く瞑った。 「ッわ!」 「何で逃げた…?」 すると耳元に唇を寄せて囁く。 くすぐったいし、なんだか甘いしで、腰がぞわぞわする。 無意識に逃げようとしている腰を長次に掴まれ固定されたあと、今度は顎を捕まれて無理やり長次に向かされる。 逃げたいと思ったけど、それ以上にこの体勢が恥ずかしくて…。 口をパクパクさせていると、口元をフッと緩めて笑った。 ああああもう……その表情ずるいよ…! さらに顔を近づけてきたので、観念して目を瞑ると、「冗談だ」と言われて恐る恐る目を開ける。 長次はもう元の体勢に戻って座っていた。 「え…?」 なんだろう。 恥ずかしいと思ったし、止めてほしいと思ったけど、実際に止められると凄く寂しい…。 今さっきとは違う意味で戸惑うと、繋いでるままの手に力がこもる。 「してもよかったのか?」 長次はずるい。 その「して」には色んな意味が含まれている。 別の言い方をしたら、私に合わせてくれてるんだろうけど、今のは違う。 私を色々考えさせて、戸惑ったり、焦ったりしたり、照れたりしている私の反応を見て楽しむつもりなんだ。 そんな策士でちょっと意地悪な長次も好きだけど、苦手だな。 「長次が好きなようにしていいよ」 だからそうやって答えてあげると、「ずるいな」と笑って瞼に触れる程度の接吻をしてくれた。 |