▽ SS企画 その22 よいしょ。と、相変わらず色気のない声で自分の上に乗ってくる女の子。いや、今は男の子と言ったほうがいいだろうか…。 夜遅くになっても帰ってこないから、まだ七松先輩と鍛錬しているのかと思ったら、気配を殺して戻って来た同室の子。 見間違いか、若干普段より大きく見えたが、いつの間にか腕を拘束されていてそれどころではなくなった。 「何するんだ!」と拘束された腕から同室の子に視線をうつすと、彼女は…いや彼は怪しく笑って、無理やり布団に座らされ、冒頭通り押し倒されたのだった。 「絶景だね竹谷!」 「お前何がしたんだよ!つか、なんか…普段より胸がねぇ…?」 「普段からありませんー!って言わせないでよ酷い!あ、あとこれ、伊作先輩のせいで男の子になっちゃいました」 「マジか!まぁ善法寺先輩はいつものこととして、何でこんなことすんだ?」 「いや、折角男の子になったんだから、普段できないことやろうかなぁと思いまして…」 「………自分一人でシろよ!」 「突っ込みたいじゃん!」 「言葉に気をつけろ!お前女だろ!?」 「今は男の子でーす!」 「テヘペロしても可愛くねぇからな!止めろっ、離せ!何でよりによって俺なんだよ!」 「えー…だって自分より身体が大きい奴攻めてるほうが…なんかゾクゾクするくない?」 「しねぇ!俺、ケツに突っ込まれる趣味ねぇから止めてください!」 「これも経験だって…。つか室町だよ?男色流行ってるよ?ね、先っちょだけ!」 「坊主の間だけですぅ!それに男のその台詞は信じるなって言われたんだ!」 「誰にだよ。お前も男だろ。いいからじっとしなよー」 「うわあああ!止めろバカ!男に突っ込まれたくねぇ!」 「あーもう!それ以上口開くとブチ犯すぞコラ」 先ほどまで笑っていた彼だったが、目を鋭くして見下す。 女だったらきっと逃げ出すことに成功していた。 だけど、今は男だ。小柄とは言え、力は凄まじく逃げ出すことができない。 彼の本気の表情に冷や汗を流す八左ヱ門。 逃げようとすればするほど衣類は乱れ、彼が「いやらしー」とクスクス笑って身体を重ねた。 「はっちゃん、私が気持ちよくしてあげるね?」 「ふおおおお!バカっ、おまっ……止めてぇええええ!」 「俺、女の子になっちゃう!」 ガバッ!と勢いよく彼を跳ね飛ばして逃げることに成功したと思ったら、自分の上には彼はおらず、それどころか部屋が真っ暗だった。 不思議に思いながら自分の身体を確認すると寝間着が寝相で乱れていた。 そそくさと整えて、隣で寝る同室の女の子に目をやると、静かに寝息をたてている。 「夢か…」 夢でよかったと心から安堵の息をもらしたが、本当に夢だったのかと疑心暗鬼になる。 本当はあのあとヤられてしまったのではないか。ヤりすぎて気絶したんじゃないか…。 怖くなって自分の身体を調べてもどこも痛くなかった。 それでも安心できなかったので、女の子に近づいて手を伸ばした瞬間、彼女はその腕を掴んで八左ヱ門の胸を殴ったあと、馬乗りになる。一瞬のできごとだった。 寝ぼけているせいで、彼女の目は据わっている。 夢の中の彼より軽く、柔らかかったので安心したのだが、非常にこの状態は恐ろしい。 太ももを叩いて名前を呼んでも、彼女は反応しない。 「お、おい…?ごめんな、その……寝てるところ邪魔してよ…」 「……。可愛い女の子だねぇ…私、そこまでそういう知識ないけど、頑張るよー?」 「おいいい!俺、女の子じゃねぇから!なんだよちきしょう!結局夢の続きになるのかよ!ばっ、乳首触るな!」 「うるさいなぁ……。それ以上喋るとお姉さん、君をブチ犯しちゃうぞ」 「本当に申し訳ありません!起きてください!」 夢とは違い、いとも簡単に逃げ出すことができた八左ヱ門は思いっきり女の子の頬を叩いて、起こしてあげました。 |