▽ 探偵のお話 その8 前回のバレンタインネタ続き。 「先生はああ言ってたけど…。何だろう、あげないといけないのかな。でもいらないだろうし…。とりあえず食満さんと潮江さんにあげよう!おおっ、丁度いるではないか!食満さん、潮江さーん!」 「おっ、お前か。どうした?また鍛錬しに来たのか?」 「いきなり来るのはやめろ。こっちも仕事があるんだ」 「あ、今日は違います。これ、ばれんたいんってやつで、お菓子を婦女子から男性へと渡すらしいです。よかったら食べてください」 「ああ、お前そんなんだけど、料理はできるもんな」 「一言多いっすね、食満さん」 「冗談だよ。うまいからありがたく頂くぜ。ほら文次郎」 「…お、おう…」 「やだお父さん…照れてる?」 「誰がお父さんだ。……まぁ、好意は無下にできん。甘いのは苦手だが頂こう」 「俺よりこっちのほうが一言多くないか?」 「不器用な方ですよね、潮江さんって」 「うるせぇなぁ…!留三郎、早く仕事に戻れ!」 「テメェこそその仕事早く終わらせてきやがれ!七松さんが待ってるだろうが!」 「お前に言われんでも戻るわ!」 (小平太の部屋へ) 「七松さん、書類を持ってきました」 「ああ、ご苦労。……甘い匂いがするな。何か食べたのか?珍しいこともあるもんだ」 「あ…。いえ、#名字#から頂いて…」 「#名前#から?何を?」 「まだ中身は…「開けろ」……」 「文次郎、開けろ」 「はっ。………これは饅頭?」 「で、文次郎。誰からもらったって?」(ニコッ) 「(殺気が…)先ほどそこで出会った吾妻から頂きました」 「私には?」 「……」 「そうか。ならば少し席を外すぞ。文次郎はそこにいろ、いいな?」 「御意」 「それと、饅頭は食べるなよ?私が許可するまでお前たち(番犬)は何も口にしてはいけないって教えたよな?」 「ええ。行ってらっしゃいませ」 「ああ、行ってくる」 「(#名字#…。七松さんの分もちゃんと用意してんだろうな…。見たところなかったぞ…?)」 (食満さんと#名字#) 「ところで#名字#。お前、七松さんの分は作ったのか?」 「え?いや、作ってませんよ?」 「ハァ!?な、なんで作らなかったんだよ!」 「こんな庶民くさいもん食べなくても、七松さんならもっと美味しいもの食べれるでしょう?」 「そうじゃねぇんだよ!うわ、俺これいらねぇわ…!」 「あ、酷い!折角作ったんだから食べてくださいよ!ほら食え!」 「止めろ!食べさそうとするな!殺される!」 「毒なんて盛ってねーよ!食えよ、うまいからさ!」 「そうじゃねぇんだよ!おまっ、ほんとバカだな!女子力あるけど、ねぇわ!」 「はぁ!?」 「七松さんにあげろってば!」 「だから、あの人には必要ないでしょう!?」 「誰がそんなこと言ったんだ?」 「あ…」 「あ…(やべぇ…)」 「留三郎、いいものを食べているな」 「いえ…。すみません、俺はこれで…」 「ああ、それが嬉しいな。饅頭を持って文次郎のところに戻れ。命令だ」 「御意に…」 「さて#名字#」 「……な、なんでそんなに殺気を…!」 「え?私、今ちゃんと笑ってるだろ?」 「それが余計に怖いです…!」 「#名字#。私には?」 「……用意してませんよ」 「何で?何で二人には用意して、私には用意してないんだ?おかしいよな?それともお前はバカなのか?解っていたが、そっちのバカではなく、人の気持ちを理解できないほうのバカなのだな。少し残念だぞ」 「…怒って、ますよね…?」 「怒ってなどないさ。ただ、虫の居所はすこぶる悪いだけだ」 「(ひぃいい!ニコニコと迫って…っ。こわ…!)」 「何で逃げるんだ?近づいてるだけだぞ?」 「いや…その……あはは…」 「まぁお前がちゃんと作ってこなかったからこうなってるわけであって…。私の言いたいことは解るな?」 「すぐにお饅頭を作って献上させて頂きます」 「もうそんなのいらん」 七松さんの声が低音に変わって顔をあげると呼吸ごと唇を食べられてしまった。 |