夢/コネタ | ナノ

▽ 探偵のお話 その5

出会い。



「…。なんだこれ」
「うう……お腹すい、た…」
「もしもーし。おっさん大丈夫ー?」
「お嬢ちゃん…めしくれ…」
「おやまぁ。お弁当食べますか?」
「食べる!」



「ほー…。おっさん探偵で、久しぶりの仕事が入ったんだけど、お腹減りすぎて倒れた、と」
「正解!うめぇ!久しぶりの飯だ!」
「汚い食べ方だな…。落ち着いて食べろよ…」
「お嬢ちゃんは口汚ねぇな。嫁いけねぇぞ」
「余計なお世話です。弁当返せ」
「全部胃袋でーす」
「あーあ…。まぁいいけどさ。ところでおっさん、名前は?」
「おっさん止めてくんない?これでも二十四なんだよ?」
「私十四」
「そうだよなー…十四からしたら俺なんておっさんだよなー…」
「ほら早く名前教えてよ」
「聞くなら自分から名乗らねぇと」
「うわ、うざ」
「最近の若者は…。それでも学生?ちゃんと言葉遣い習ってんの?」
「そこらへんがおっさんくさいです。すみませんね、素行が悪くて。興味ない他人にはこんなんです」
「それはよくねぇな。お嬢ちゃん、もっと視野を広げないと」
「視野を?」
「そ。世の中何があるか解らない。もしかしたら俺がお嬢ちゃんの将来の旦那様になるかもしれないんだぜ?旦那様にそんな口の聞き方ダメだろ?」
「ない」
「例えばの話。両親が借金まみれになって、お嬢ちゃんを金持ちの俺のところに嫁がせたいんだけど、俺はもうお嬢ちゃんの本性を知ってるから断るよな?そしたら君の家はどうなる?一家揃って首釣る?」
「…」
「極端な話な。でも、このご時世ありえるだろ?」
「……」
「だから、学ぶことは大事。知ることも大事。賢い生き方をしねぇと、世の中に食われちまうぞ?特に素直すぎるお嬢ちゃんなんていいエサだ。俺が殺人鬼かもしれないのに声をかけて、ご飯もあげるなんてなぁ?襲われてたかもしんねぇぞ」
「……。だから探偵やってるんですか?」
「…。まぁな。知らないことを人よりたくさん知ることができるなんて楽しくないか?そりゃ大変だけどよー…人にお礼言われるのは嬉しいし、自由に動けるのは楽しいんだ!貧乏だけど、楽しいほうがいいだろ?」
「おじさん変わり者って言われませんか?」
「世の中がもう変わってってるだろ。人と違うことをするのも好き」
「ふーん…」
「探偵興味ある?」
「わかんない」
「そうか。じゃあ今度遊びに来いよ。お嬢ちゃん素直だけど柔軟性あるからきっとこの仕事向いてると思うぜ?」
「……」
「弁当のお礼もしたいしな!はい、ここね。まぁ困ったことがあってもここおいで。一回だけなら無料で助けてやる」
「けち」
「世の中とはそういうものなのです。それから俺の名前は#名字##名前#。お嬢ちゃんは?」
「#名字##名前#」
「じゃあな#名前#ちゃん!弁当ご馳走さん!」



それから探偵事務所に通うようになりました。