▽ クリスマスのお話 「なぁんでクリスマスに野郎二人でデートしなきゃならねぇんだよ!」 「先輩が彼女に振られたから付き合ってあげてるんじゃないですか」 「振られたんじゃねぇ!ふっ……たわけでもねぇ…大人の事情でお別れしたんだ…」 「なんすかそれ…」 男女が肩を並べてイルミネーション輝く大通りを歩く中、青年とその後輩竹谷も肩を並べて歩いていた。 厚着のコートに両手をつっこみ、マフラーを大雑把にぐるぐる巻いて「さみぃ!」「彼女ほしい!」とうるさい先輩を竹谷は文句を言いながらも慰めていた。 悲しいことに自分にも彼女がおらず、バイトをして過ごそうとしていた日に突然呼び出され、「五分以内に来い!」と無茶ぶりをされて、今にいたる。 「つか竹谷、お前寒くねぇの?」 「いきなりだったからすぐに準備できなかったんすよ…」 「そりゃすまん」 「寒いのは平気ですけど、さすがによるになると寒いっすね…」 赤くなった頬と鼻の頭を見た青年は、少しだけ申し訳ない気持ちになり、「むー…」と呻きながら足をとめた。 通りの真ん中で足をとめた先輩を竹谷が慌てて腕を掴んで道の端へと避ける。 「せんぱ「ほら、これやる」 巻いていたマフラーを解き、ぶっきらぼうに竹谷に渡して、返事を聞くことなく勝手に歩き始める。 受け取った(強制にだが)竹谷は少しの間ぽかんと口を開いていたが、笑みに変えてマフラーを握りしめた。 「ありがとうございます、先輩!」 「俺のぬくもりが残ってるからあったけぇぞ」 「うっす!でもちょっと気持ち悪いっす!」 「うっせぇ!」 先輩同様にぐるぐるとマフラーを巻いたあと、急いで先輩を追いかける。 「人様のラブラブしているところなんて見たくもねぇ!家で鍋するぞ鍋!」 「いいっすね!肉とか酒たくさん買って、朝まで遊びましょうよ!俺、ゲームも買ったんすよ!」 「そんなんだから彼女できねぇんだよ…」 「振られた先輩に言われたくはないっすねぇ」 「うるせぇ!」 そして何故かいつものメンバーが集まり、今年も楽しいクリスマスを過ごすのだった。 |