▽ ヤシキさんに捧げたもの くノ一と忍たま。 同じ年に入学し、教室も長屋も違うが一緒に六年間を過ごしてきた。 時には協力し、時には敵対し…。お互いを高め合いながら成長してきた彼女と七松は、今までにない雰囲気の中にいた。 「な、なに…?」 壁と七松に挟まれた彼女は腰が引きつつもジーッと見下ろしてくる彼を見上げる。 七松は何を喋ることなく彼女を見下ろし、少し経ってから「なぁ」と名前を呼んでさらに近づいた。 「接吻していいか?」 「えッ!?」 「したい」 「はぁ!?」 返事を聞く前に、片方の手で彼女の腕を捕え、片方の手で顎を掴む。 優しくなんてことはなく、強い力で掴まれるものの、悲鳴はあげない。 彼女だって六年間くノ一をしてきた。 すんなり唇を奪われることなく、空いてる手で七松の喉を掴んで抵抗する。 「お?」 「理由もなくされたくない!」 「私、お前のこと好きだぞ?」 軽いノリでそんなことを言うものだから、額に青筋を作ってさらに力を込めて抵抗すると、七松はとても楽しそうに目を細めて笑い、無理やり唇を奪う。 男女の力の差は歴然で、おまけに呼吸もまともにさせてくれない接吻。 「ん」 「…っの…!」 「うん、やっぱりいいな!」 「はぁ…?」 「私、お前のそういうところが好きだ。六年間一緒に学んできて、お前なら私の背中を任せることができる!だって、こんな風に抵抗する女、滅多にいないもんな!あと睨んでくるのも!」 「……だから好き?」 「おう!」 「なにそれ……」 シンプルな考えというか、七松らしい思考回路というか…。 七松がどんな性格か知ってはいたが、こうも単純で真っ直ぐなのは初めて知った。 知って、呆れてしまった。 呼吸を整え終えたあと、呆れながら顔をあげる。 「でも断るよ。そんな口説き文句じゃ落ちてやらない。というか落第点」 「そうか。なら追いかけて、お前が満足する口説き文句を囁こう」 「できるといいね」 「なぁに、私が本気を出せば簡単だ!」 「私の六年舐めないでよ?」 「私の六年も舐めるなよ?」 |