▽ お揃いの話 学校帰りのゲームセンター。 いつもは一人か同級生と来る場所に、今日は後輩の竹谷と一緒にやってきた。 部活動で忙しい竹谷と放課後や休日を滅多に遊ぶことができず、今日ようやく遊ぶことができた。 前世のことがあってからできるだけ一緒にいたいと思う二人は意味もなく顔を見合わせて笑った。 「よっしゃ、勝負しようぜ竹谷!とりあえずエアホッケーからな」 「先輩とは滅多にこないけど、友達とはよく来るんで負けませんよ!」 「俺だって負けねぇ!」 軽く運動するため、最初にエアホッケーを選び、背負っていたリュックを地面に投げ捨て、腕をまっくて唇をなめて向こうの竹谷を睨む。 「負けたら次のゲーム驕りな」 「うっす!」 耳が痛くなるほど強い力でゲームをする二人の周りには見物客が集まり、そこが終わって、次のゲームでも注目された。 さすがに目立ちすぎたな、と笑う先輩を見て、「そうっすね」と竹谷は苦笑して、UFOキャッチャーコーナーへと避難する。 「お、竹谷。あれ竹谷に似てねぇ?」 「どれっすか?」 「あのアホっぽそうな犬のぬいぐるみキーホルダー」 「アホっぽそうって失礼ですよ!じゃあ先輩はあっちの怖そうな犬のぬいぐるみっすね!」 「怖くねぇし!俺優しいし!」 「見た目は怖いっすよ」 「泣くぞこらぁ!」 うえーん。と泣き真似をする先輩を見て、竹谷は苦笑しながらコインをゲーム機にいれ、操作する。 あまり器用な性格とは言えないが、こういったことは上手にでき、2、3回で目当てのぬいぐるみをゲットし、先輩に差し出した。 「でも俺はどんな先輩でも好きっすよ」 「竹谷…。このタイミングでそんなこと言われたら勘違いされちゃう…」 「え?」 「この天然はよぉ…!何でお前モテねぇんだろうな」 「う、うるさいです!とりあえずこの怖いぬいぐるみは先輩にあげますから!」 「じゃあついでにあのアホっぽいのもとってくれ」 ジトー…とした目で見てくる竹谷の頭を撫でてあげると、ぶつぶつと文句言いながらまた動かして、今度は少し時間をかけてゲットした。 「取りましたけど、俺いりませんよ」 「じゃあ交換な」 持っていた怖い犬と交換して、無理やり竹谷のリュックにつけてあげ、自分もつける。 「これならいいだろ?」 ニカッと犬歯を見せて笑う先輩に、竹谷は若干照れながら笑って「ありがとうございます」とお礼を言った。 それを聞いた先輩も満足そうに笑う。 「先輩ってほんと、タラシですよね…」 「何で?」 「何でもないっす」 「じゃ次行こうぜ!」 「っす!」 表情は違うものの、お揃いのキーホルダーをつけた二人は夜遅くまで遊び続け、前世ではできなかったことをやり続けるのだった。 翌日。 「……だから勘違いされるって気づけよお前ら…」 「留さん?」 昨日のことを仲のいい留三郎と伊作に話すと、頭を抱えられたのだった。 |