▽ 日向ぼっこの話 「口笛せんぱーい、今日も暇そうですねぇ」 「まぁ穴掘りに勤しんでる喜八郎くんに比べればな」 今日も委員会は竹谷に任せて、生物委員長は六年長屋の縁側で日向ぼっこをしていた。 膝や脇、足元にはたくさんの猫や犬が気持ちよさそうにお昼寝をしている。 「委員会出なくていいのか」 「はい、穴掘りが優先ですから」 「そんなこと言ってたら仙蔵に怒られるぞ」 「口笛先輩は竹谷先輩に叱られますよ」 「言うなぁ」 苦笑しながら膝の上の猫を優しく撫でてあげると、猫は目を瞑って喉をならす。まるで、「気持ちいい」とでも言ってるようだった。 「…」 「どうした?穴掘りに行くんじゃなかったのか?」 彼に近づき、目の前で屈んで下からジッと見上げる後輩に、首を傾げる。 彼の行動は少し解りにくい。動物の扱いに長けている自分でさえ、時々解らないから困る。 「気持ちいいんですか?」 「は?」 「それ」 「それ?」 七松とは違うストレートな物言いに、さらに首を傾げながら、喜八郎が指さす箇所を見る。 「ああ、猫か」 「気持ちよさそうな声出してました」 「そりゃあ動物使いですからねぇ」 うっすら笑いながら猫を撫でると、またミャアとないて、喜八郎は「ふーん」と呟く。 「……何か言いたそうな顔してんなぁ」 「動物使いなら解りますよね?」 「人間専門じゃねぇよ」 「でも、解りますよね?」 「無茶ばっかだな喜八郎は…」 はいはいと言いながら猫を膝からおろし、横に座らせる。 頭を撫でながら謝ると、少し悲しく鳴いて、大人しく丸まった。 「はい、どうぞ」 「え、先輩がそういうなら…」 冗談混じりに、しかし真顔でそんなことを言う喜八郎に彼は笑って膝を軽く叩く。 土で汚れた制服のまま縁側にあがり、彼の膝に頭を乗せた。 「堅いです」 「男だからな。文句言うな」 「頭は撫でてくれないんですかー?」 「ちょっと待てよ。その前にその、てっこちゃんを置け」 「撫でないんですかー?」 「解ったから頭を動かすな!ほらっ!」 足もバタつかせ暴れる喜八郎の頭を撫でると、ピタリと動きを止めてジッと先輩を見上げる。 「動物先輩」 「ん?」 「先輩が飼育してくれるなら、僕犬でもいいです」 「こんな扱いづらい犬は嫌だなぁ」 喜八郎の頭を撫でる手は大きくて温かく、ゆっくり目を閉じたあとすぐに寝息をたてた。 「って、寝るのはえぇし」 それでも彼は起きるまで撫でるのを止めなかった。 |