▽ 就職のお話 黒い忍び装束に身を包んだ少年二人が、戦場を見下ろしていた。 「いいか小平太、ただ暴れたらいいってわけじゃねぇぞ。本当に就職したいなら「細かいことは気にするな!」 そう言って小平太は元気よく戦場へと駆け出し、残された少年は深くため息をはいて、追いかけた。 (ま、死なないとは思うけど、暴れすぎねぇように見ておかないとな) 先を走る小平太を見て、少年はいつも以上に気を引き締めた。 小平太は戦闘の天才だが、かなり雑だ。 学園にいるときはいいのだが、今は就職活動中。 もしここでヘマでもしたら自分も就職困難になってしまう。 就職目的で頑張っているのに、嫌われたりでもしたら大変だ。 だから暴れないよう、迷惑をかけないよう、小平太に目を光らしつつ、自分もアピールするように戦場で暴れまわった。 「お前凄いな!」 「名前は何て言うんだ?」 「まだ十五だろ?よかったらここに就職しないか?」 だと言うのに、小平太のほうが人気で、偉い人からスカウトをされていた。 小平太は「いえ、まだまだですから」と珍しく謙遜しており、そんな小平太を見た少年はギリッと奥歯を噛みしめる。 「待たせた!」 「うっせぇ」 たくさんの人間に囲まれてた小平太が少年に近づき、いつものように笑って片手をあげると、少年は子供のように拗ねた表情を浮かべ、ぷいっとそっぽを向いて素っ気なく答えた。 彼の名前を呼んでも、決して小平太の顔を見ようとはしない。 「確かに、俺がいい就職先一緒に探してやるって言ったけどよ…。お前ばっか目立ってんじゃねぇよ…!何で気に入られてんだよ!」 「おっ?何だ、泣いてるのか?」 「泣いてねぇし。っ…泣いてねぇもん…」 「なはは、泣いてるじゃないか。ほら、六年が泣いてたら示しがつかんから泣きやめ」 「うっせぇ!バーカバーカ、小平太のバーカッ!」 「鼻水垂らしたお前に言われてもなぁ…。あ、そうだ」 彼とこのお城に来る前、長次から持っておくよう渡されたティッシュを彼に渡し、ニカッと笑顔を向ける。 彼はティッシュをひったくり、豪快に鼻をかんで、「なんだよ」と涙声で聞いた。 「今日はいつもよりいい動きだったな!合わせやすかった!またお前と一緒に戦いたい」 笑ったあと、真顔でそんなことを言うのだから、彼の涙腺が再び緩み、盛大に涙をこぼしたのだった。 「バカ小平太ーっ、責任とれよぉ!」 「そうだな、一緒に就職するか」 「それは断る!」 「何で!?」 |