▽ 飢えてる話 いつものように、忍務が終わってから川へと向かった。 月明かりで水面にうつる自分を見てニヤリと笑う。 手や忍び装束が血で汚れ、黒く変色している自分に先ほどのことを思い出し、また体が震える まだほしいとクナイを握る手に力が入り、殺気が抑えられない。 理性を失いかける中、まだある理性が「落ち着け」と自分を説得してくる。 いつもこうだ。 激しい忍務を終わらせると自分を抑えることができない。 だからこうやって一人で自分を落ち着かせ、学園へと帰っている。 「―――それ以上近づいたらお前でも…」 背後の気配に向かってそう言うと、「まぁ落ち着けよ」と軽い口調が返ってきた。 「うるさい。それともお前が私の相手をしてくれるのか?」 首だけ後ろに回し、鋭く彼を睨みつけ殺気を放つ。 これほど戦いに飢えてる小平太を見ることは滅多にない。クナイを構える小平太に目を細める男の子。 「何だよ、やる気か小平太…?別にいいぜ、俺も飢えてるからな」 「そうか、なら武器を構えろ。なしでも構わんぞ」 「なんて…、飢えてる場合じゃねぇんだよ。生き残りがいるぞ。またやりそこねてる」 「そうか」 男の子の言葉に瞳孔を開いた小平太は彼の横を通りすぎ、森へと消える。 「飢えてんのは解んだけど、あからさますぎるんだよ…。頼りになるんだけどな」 その場で笑ったあと、まだ生暖かい血で汚れた手で口布をあてたあと、小平太を追いかけた。 「まぁ、俺も飢えてんだけどな」 |