▽ 01 朝 恋口家の朝は元気いっぱいです。 まず、長男と末っ子が一番に起床して、町内を走り回ってきます。 そうしている間に次男が起床して朝食の下準備と素振りを始めます。 次に長女が起床して朝食とお昼の弁当をしっかり作り、次女を起こしてあげます。 「ただいまー!いやー、いい汗かいたー!」 「ただいま!今日もしっかり走った!」 「お帰り二人とも。朝食は既にできているから手を洗って食べろ」 「お帰りなさい、兄さん、千梅。汗もしっかり拭いて下さいね」 「おはよぉ…。二人とも今日も朝から元気だぁ……」 「楓、朝食を食べながら寝るな。行儀が悪い」 うるさいですが、しっかり者の長女と次男のおかげでバタバタとはしません。 朝食中は長男と末っ子がやかましいですが、誰も気にしていません。 朝食を食べたあとは次女と末っ子が食器などの後片付けを、次男は洗濯をして、長男と長女を見送ります。 「では先に行ってくるぞ。武蔵、戸締りはしっかりな」 「行ってくるなー。お前ら、今日も楽しい学生生活送れよ」 「行ってらっしゃいませ。戸締りはお任せ下さい」 「虎徹お兄ちゃん、千秋お姉ちゃん、いってらっしゃい!」 「トラにぃ、しっかり働けー」 両親がいないこの家を支えているのはこの二人だけです。 高校卒業と同時に就職をし、学生である三人をしっかり支えています。 なので三人は迷惑かけることなく、皆で協力して二人を支えております。 長男と長女を見送った三人はきちんと家事をこなし、学校へ向かう準備をします。 高校生である次女と末っ子は仲良く登校します。 大学生である次男が大体最後になります。 「ただいまー」 「重たい…」 「ごめんね、千梅ちゃん。荷物持たせちゃって…」 「いいのいいの。楓より私のほうが力持ちだし」 しっかり学校で学んだあと、次女と末っ子が夕食の買い物をして帰宅します。 二人は部活に入部していないので、用事がない限り大体最初に帰宅します。 遅くなる場合は次男に。もっと遅くなる場合は長男と長女に連絡します。 「ただいま帰りました」 「お帰り、武蔵くん」 「おかえり、武蔵にー」 晩ご飯を作っている間に次男が帰宅します。 それから、残業がない限り長男と長女が帰宅してきます。 夕食の時間になるまでは自由行動です。 長男と長女と末っ子は大体身体を動かしています。 次女は次男に宿題を聞いてます。たまに長女と末っ子も混ざります。 「今日も学校は楽しかったか?」 「楽しかった!でも張り合いがいなくてさぁ…」 「千梅ちゃんね、今日も色んな部長や先輩たちに追い回されていたんだよ」 「ははは、さすが千梅だ。それもいい鍛錬になる」 「なりませんよ…。千梅、あまり目立った行動はするべきでない。いくら強いとは言え、何があるか解らない」 「武蔵くんは過保護ですねぇ。俺が鍛えてやってんだぜ?やられるわけねぇじゃん」 「慢心は敵ですよ、虎徹兄さん」 「そうだぞ虎徹。千梅、日々の鍛練は怠るな」 「はーい。そう言えば今日、楓告白されてたよね?」 「なんだと!?お兄ちゃんそんなの許しませんからね!」 「虎徹は楓のことになると過保護になるな」 「楓、相手は誰です?」 「武蔵も…。何故楓だけそう過保護になる。護身術ぐらい身につけさせているだろう?」 「千秋ッ、そういう問題じゃないんだ!そういう問題じゃない!」 「そうです。そういう問題ではないのです。無防備で無警戒だから心配なんです…。勘違いされやすい性格ですので、断ったとしても執拗に楓を…」 「あ、大丈夫。ちゃんと潰しておいたから」 「よくやった千梅!さすが俺の妹!」 「ありがとうございます、千梅!」 「……楓、お前も大変な兄を持ったものだな」 「愛されてるのは嬉しいんだけどねー。っていうか千梅ちゃんっ。何でそんなことしたの!」 「だ、だって…!竹谷にも頼まれてるし……」 「…ハチが?」 「俺が守れねぇから頼むって……。それでご飯奢ってもらうし…」 「……もう、しょうがないなぁ」 「今度竹谷ボコろーっと」 「…」 「本当、面倒くさい兄弟だな」 楽しい夕食が終わると、年下から順番にお風呂に入り、各自自由行動に入ります。 「あ、ハチから電話だー!」 「………七松さんが…来る…だと!?」 「なんだ伊作、仕事の電話か?ああ、すまない。留三郎からも電話あったからつい」 「なぁ武蔵くん。我が家の女の子たちはリア充してると思わないか?」 「楓だけだと思いますが?それに、虎徹兄さんもしてるじゃないですか。リア獣」 「それ多分漢字違うよ。お前は彼女とかできた?」 「………」 「武蔵くーん、どうしたの?凹んだ?」 「…最近の……最近の女性はよく解りません…。付き合ってくれと言われたから、交換ノートからでって言ったら「はぁ?」と…」 「ぐふっ…!(もう勘弁してくれ。俺の腹筋死にそうやばいこれやばいこれ。なんなのこの子。何でこんな古いんだよ…!文次郎か!)」 「慎みがないと言えば気持ち悪いと言われ、結婚が関わるから真剣に考えたいと言えば重たいと言われ…。私はどうしたらいいのでしょうか…!」 「あー………ふっ…!いや、お前はそれでいいと思うぞ。いつか大和撫子がお前の前に現れるといいな」 「はい…」 「虎徹お兄ちゃん、武蔵お兄ちゃん。電話も終わったし寝るね。おやすみなさい!」 「私、七松さんが来るみたいだからちょっと外出て来ます…」 「は?小平太来るの?家に上がってもらえよ」 「夜分遅くに邪魔はしたくないと言ってました」 「あいつ、妙なところで真面目だよな」 「こんな夜遅くに来ること自体が……まぁいいですが、あまり遅くならないように。これ羽織って下さい」 「ありがとう、武蔵にー」 「なんだ、楓。寝るのか?風邪ひかないようにな」 「あ、千秋お姉ちゃんもおやすみなさい!お姉ちゃんも早く寝てね?」 「ああ、やることすませたら寝るよ。おやすみ」 「さて。お酒飲むかなー。千秋、お前も付き合う?」 「頂こうか」 「武蔵くん、おつまみ作ってー」 「適度にお願いしますね」 「で、千秋。仕事?」 「今日取引で問題が起きてな…。全く、だから私みたいな下っ端に任せるなと言ったんだ」 「それでもお前がやるから期待してんだろ。 そっち関係はわかんねぇからこれ以上言えねぇが」 「与えられた仕事はこなしたいし、やるからにはきちんとやり遂げたい。すまん、ただの愚痴だ」 「解ってる解ってる。お前普段愚痴とか言わねぇからこういうときに全部吐き出しとけよ」 「そういう虎徹はどうなんだ。営業、大変なんだろう」 「大変だけど、喋るの嫌いねぇから大丈夫。先輩たちはムカつくけど、後輩可愛いし」 「お前はどこに入っても先輩たちに恵まれないな」 「プチ不運だろ?」 「ははっ。ああ、武蔵ありがとう」 「…」 「どうした武蔵。お前も酒飲む?二十歳超えてるしいいぜ?」 「……いつも、ありがとうございます。私が大学に通えるのはお二人のおかげです」 「改めて言われると照れるなー。ねぇ千秋ちゃん?」 「大したことではない。それよりつまみありがとう。もう寝るんだろう?すまなかったな」 「いえ…。では、お先に失礼します」 「おー」 「おやすみ。武蔵は真面目だな」 「誰に似たんだろか」 「ところで、千梅はまだか?あの男相手だから仕方ないが、常識がなってない!」 「そう怒るなって。つかあがってもらおうぜ。俺も小平太も酒飲みてぇし」 「それは断る。私はあの男が苦手だ」 「えー……楽しいのに。っと、帰って来たみたいだな」 「遅いぞ千梅。あまり遅くなるようなら会うんじゃない。……どうした、何かあったか?」 「な、なんでもない!おやすみなさい!」 「千梅!」 「まぁまぁ。そこは聞いちゃダメだよ、お姉ちゃん」 「しかし…。頬が赤かったような…」 「相手はいくつも離れた男だぜー。察してやれって」 「…あの男だけは許さんぞ」 「怖いねぇ…。よし、俺らも寝るか。戸締り確認してきまーす」 「はぁ…」 こうして、恋口さんちの一日は終わります。 |