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▽ 探偵パロ その14

七松さんに「いいお茶が入ったから来い」と部屋に呼ばれ、嫌だけどお邪魔することにした。
行かなかったら食満さんか潮江さんのどちらかが迎えに来きて連行するので、拒否したところで答えは同じ…。
重たい足取りで探偵事務所から七松さんが経営しているという屋敷に入り、七松さんのお部屋へと向かった。


「お、お邪魔します…」
「よく来たな。そこに座ってくれ」


爽やかな顔で笑ったあと、ソファに座れと命令。優しく言っているけど、これは命令だ。
一歩歩くたびに何かされるんじゃないか、何かあるんじゃないかと警戒してしまう。
ふかふかのソファに腰を浅く落として、お茶が出されるのを待つ。


「菓子もいるか?」
「けっ結構です…!」


早くここから出たい。一人でこの部屋にいるのは怖い。
出されたお茶を一気に飲み干し、「ごちそうさまでした」と言って逃げるように扉へ向ってドアノブを掴むと、扉が動かなかった。
血の気が引いて何度もドアノブを動かしたが、開かない。
その扉に大きな手がつく。
背後に大きな気配。動きとともに心臓が止まって、ぎこちなく振り向くと、ご機嫌な七松さん。


「どうした、早く逃げないのか?」


楽しそうに喋る七松さんは本当に私のことを玩具としか見てない。
有無を言わさないあの雰囲気、言葉、…いや、全てが怖くて身体の芯から震える。
ドアノブから手を離し、扉に背中をつけて対峙すると、反対の手もついて逃げ場を失ってしまった。
顔を近づけてきたので俯いて拒絶する。


「接吻は「止めて下さいって言うんだろ」


そもそも接吻とは好きな人とやるものであって…。七松さんのことは好きじゃない。
この唇だけじゃなく、全て、将来の旦那様に捧げるものだ。
だから好きじゃない七松さんに触ってほしくない。
それを前にも言った。けど、


「言っただろ。お前は私のだって」
「…」


私は認めてない。やだって言ってるのに何で…!
でも離れることも、激しい抵抗をすることもできず…。
そうしている間にも唇はあっという間に奪われた。
接吻なんてどうやるか知らない。苦しいだけのもの。接吻は…幸せな気分になれるって聞いていたのに…。
いつもみたいにひたすら口を結んで我慢してたら、すぐに止めてくれるのに、今日は離れない。
何度か舐められ、時々噛まれていると、背中に鳥肌がたった。
そわそわする。むずむずする。気持ちいいなんて思ってしまった。
それより息をさせろ。苦しい。もうやだ。死ぬ。


「っは…」


口は開けたくなかった。だって、七松さんはそれを待ってるんだもん。
少し酸素を吸い込もうと口を開けた瞬間、顎と腰を掴まれて唇を唇で塞がれた。
ろくに酸素も吸ってないから意識は朦朧として、抵抗する力もない。
七松さんが満足したころに離され、扉に寄り掛かりながら座りこんで、呼吸を整える。


「お前はバカだよな。こうなるの解ってお茶を飲みに来るんだから…」


違う。お前が来いと言うから来るんだ。来なかったら誘拐するだろう。
どっちにしたって結果はこうなってた。解っているから私に関わってほしくないのに…。
腰が抜けて立てない私を抱きかかえ、先ほどまで座っていたソファ…ではなく、七松さんが仕事をしている机に連れて行かれる。


「…え…」
「机かソファ、どっちがいい?」


机に私を座らせたあと、机に両手をついて、下から「ん?」と見上げてくる七松さんに本能的に恐怖した。
何も喋れないでいると、「そうか」と笑って首元を緩め、また接吻をしてきた。
身体が動かない。抵抗できない。何だか気持ちよくて頭がふわふわする…。
七松さんの動きに全部任せていると、身体が熱くなってきた。
唇が離れると、口端からだらしなく涎が垂れてしまった。
それを拭うことができないほど、身体に力が入らない。


「警戒心はあるのに、無防備。外国から取り寄せたんだが、効果はそれなりだな」
「……」
「まぁ初めてのお前にはこれぐらいじゃないとな。薬飲まさないと、」


背中が痛い、固い、冷たい。
天井と七松さんが視界にうつっても、自分が押し倒されたなんて解らずぽけーっと見ていた。
すっごく気持ちいい。触られると眠たくなるほど気持ちいい。


「処女のお前じゃ死ぬからな」


唇に接吻されたあと、頬、首筋に舌を這わせてきた。
愛撫されているような感覚。気持ちいい…。
袴に手をかけ、乱れていくけど、それを止めようとも思わない。
もっと触ってほしくて名前を呼ぶと、私から離れてニヤリと笑う。


「でも、今度は薬なしな。抵抗するお前も見たい」
「七松さ、ん…」
「記憶がなくなってそうだが、まぁいいだろう」


サラシに手をかけられ、どんどん露出していく身体。破廉恥だ。恥ずかしい。でも止めてほしくない。


「安心しろ。責任はもうとるつもりだから」