冬の朝は好きだ。
体温で温まった布団に包まり夢見心地でうとうとと。夢と現実の境目でまどろむあの時間の心地良さは、何物にも変え難い。何時迄もそうして居たい程に。加えて俺は、抱き枕宜しくピカを腕に抱いているので、その良さも一入だ。生物特有の体温や触り心地の良い体毛が触れている箇所から伝わって来て、気持ち良い。
嗚、何だか眠くなってきた。次第に重くなっていく瞼もそのままに、再び夢世界へと旅立とうとした、正にその時。

ばさりと云う音と共に、寒気に包まれる体躯。寒い!身震いしながら体躯を縮こませて、ピカを抱く腕に力を込めて。何とか暖をとろうと試みるも、寒いもんはどう足掻いたって矢張り寒い。すっかり冴えてしまった目を仕方なしに開くと、眩しさの中にぼんやりと人影が見えた。

「いい加減起きろ、レッド」

呆れた様に溜息を吐きながら、右手を腰に宛て、左手に俺のそれとそっくりな掛け布団を持って立っているそいつは、何処からどう見ても俺の好敵手で。

「…グリーン」

呆とした表情のまま呟く様に名前を呼ぶと、早く顔を洗って来い、とまるで母親の様な言葉を返された。御前は俺のお母さんか。というか。段々覚醒してきた頭で漸く状況が飲み込めてきた俺は、そいつを一瞥し。

「グリーン! 御前、布団剥いだろ!」
「…それがどうした」
「どうしたじゃないっ。寒いじゃんか!」
「御前が起きないのが悪い」
「…っ、だからって剥ぐこと無いだろ!」
「ああでもしないと起きないだろう」

やれやれ、と頭を振りながら返された正論に、言い返せない。言葉に詰まってしまう。現に二度寝しようとしていた訳だし。グリーンが来なければきっと今頃俺は夢の国の住人になっていた事だろう。
然し、だからと云ってあの方法は如何なものか。確かに、驚きと寒さで目は覚めるけれど。

「……挨拶、出来なかったじゃんか」

朝起きて、顔を合わせたら真っ先にする事。当たり前で、でも大切な行為。
お早うの、挨拶。

そのタイミングを、すっかり逃してしまったのだ。きちんと、挨拶したかったのに。一日の始まりにグリーンに贈る言葉は、あんな文句なんかじゃなくて、そんな当たり前をあげたかったのに。

「…レッド、」

不意に名前を呼ばれて顔を上げると、グリーンの顔がやけに近くて。驚愕して思わず身を引こうとしたら、逆に強い力で引き寄せられて、そのまま口にキスされた。な、なな、

「なにして「レッド」
「……な、に」

――反則、だ。

「お早う」

そんな優しい顔で、優しい声で、こんな優しい言葉を囁くなんて。

「……っ、お早う」

嗚、もう、反則だ!











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当初考えていたものと大分違うものになった^^
……あれ?






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