憧れていた。
誰よりも輝いていた、あの光に。
誰よりも孤独だった、あの光に。
そして不意に憧れは恋へと変わり。理由とか、切欠を置き去りにしたまま。
ただ、好きだと思った。
そして。
好きだと思ったときにはもう全てが手遅れだった。
「青峰っち、」
名前を呼んでも振り返っちゃくれない。
アンタを夢中にさせるもんで、オレはアンタを振り向かせることが出来なかったから。
仕方ないと思いながらも名前を呼ぶことをやめられないのは、不意にみせる笑みがあの頃を思い出させるせいだ。
「青峰っちは、まだ……諦められないんスか」
「あ?何言ってやがる」
少しだけ変わったアンタと話していても。やっぱりこっちは見てくれなくて。
「黒子っちには、もう」
「うるせえ」
「新しい光が」
「黙れよ、黄瀬」
いるんスよ。って、最後まで言い切る前に、青峰っちは席を立って行ってしまった。
ファミレスにぼっちで残されるとか。笑えないんスけど。
それに、やっぱりあの頃に戻りたいとか。
「……ほんと、笑えねー」
何も知らないで、笑ってたあの頃。
青峰っちの隣には黒子っちがいて、オレは純粋にふたりに憧れていた。あの頃。
結局、オレもアンタも幸せになれないなら。何も知らないままでいたかった。
「そしたら、こんな感情だって、知らないままでいれたのに」
ポツリと零した言葉は、グラスのなかの氷が溶ける音に混じってきえた。
(隣じゃなくて遠いところにいる)