夏が、終わった。
いっぱいの汗を流して。
オレたちの二度目の夏は幕を閉じた。
あの夏祭りのときから真ちゃんの顔がうまく見れなくて、でももちろんバスケじゃそんなことは言ってらんない……というかバスケをしてるときだけは何も気にならなかった。
オレのパスを受けて3Pを打つあの姿が。
共にいられるコートが。
その時間が。
なにより愛しかったから。
「高尾」
「あれ?真ちゃん、」
「打ち上げ中に突然いなくなるな、後輩らが気にしていたのだよ」
「ぶはっ!その台詞、大坪さんたちに聞かせてあげたいわー」
「茶化すな」
「ぷぷ……っ、ごめんごめん」
打ち上げと称した部員達のお疲れさま会の途中。不意にコートに立ちたくなって、一人で近くのストリートバスケに出てきた。
すぐに真ちゃんに見つかったけど。
フェンスのところに転がっていたボールを拾い上げて、ドリブルをつく。
チラリと真ちゃんを振り返れば、無理に連れ戻す気はないらしい。
ただ何を言うでもなく此方を見つめている。
「真ちゃん」
名前を呼んで、パスを送る。
合図も、言葉も、何も要らない。
パスを受け取った真ちゃんはそれが当たり前のように、最初から決まってるかのように。
ゴールへとスリーを放った。
静かに吸い込まれたボールは、また、地面へと落ちて跳ねる。
「……ふ、っ」
あれ。
オレ、なんか、変だ。
そう感じたときにはもう視界は滲んでいて。
意味が分からないままに、感情が溢れて、それは涙になって眸から外へと零れおちていた。
真ちゃんが慌てたようにこちらへと駆け寄って来る。
「高尾、っどうした?!どこか痛むのか?!」
違うよ。
答えようと視線を上げたら、綺麗な真ちゃんの緑色の瞳とぶつかった。
あ、そっか。
ストンと、胸に落ちてきた感情が優しく形を成していく。
手を伸ばせば、届く距離で。
オマエはいつもこっちを振り向いていてくれたんだ。
立ち止まりこそしないけれど。いつでも、オレの存在を、認めてくれてたんだよな。
それに気づかないオレは、ずっと、オマエの背中ばかり見つめていると思ってた。
「真ちゃん」
今はもう。
こうやって、隣に並んでいたのに。
「好きだよ」
涙と一緒に零れおちた感情は、いつかの夏のはじまりのように。
「……ああ、」
上手に彼に抱きとめ掬い上げられた。
(それは夏の終わり)
そしてそれは、
二人のはじまり。