錻と玩具








『頭がイカれちまったんだよ』





大抵の人間は私が巨人の生態調査に関する実験へ臨むことに批判的だった。

気違い。変人。倒錯者。

異物を視るような視線。
木霊する中傷の声音。

最初からその全てが気にならなかったわけじゃない。










「たくさん喰ってくれたね

オマエが喰った人間は美味しかったのかい?なあ?

アレは私の仲間だったんだ」





切り落とした3m級の巨人の頭を蹴り飛ばしたとき、頭のなかの何かがバチンと弾けて。戦場の最中だというのに私は思わず動きを止めた。





「ボケッとしてんじゃねえ!!」





ドォォッッ





罵声と轟音と共に巨人の血飛沫と肉片が飛散し私へと降り注ぐ。
ぶわり、と生暖かい感覚が全身を包んで、我に返れば。いつもどおり不機嫌な視線とぶつかった。





「リヴァイ!」

「ハンジ、何をぼんやりしてる」

「私は、変革の兆しを見つけたかもしれない」

「……そうか」

「捕獲した巨人を直に調査したいんだ」





そのときは降って湧いた可能性に心臓が滾るようだった。





第三者から見れば、気違い極まりないような行為だとしても。





『仲間が巨人に喰われすぎて頭がイカれちまったんだよ、アイツは』





周囲の声に、彼は笑いもせずこぼしたから。





『変革を求めるなら、イカれたくらいでちょうどいいだろ

なあ、ハンジ』








(どうせ何処もイカれた家畜の吹き溜まりだ)




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