ついに来てしまった。
大学に入って一人暮らしをはじめた宮地サンのお家にお邪魔することになった。
ぶっちゃけ緊張しすぎてアレだ、昨日よく眠れなかった。
時間が夕方しか合わないからって日暮れ頃にお邪魔したらなんと、晩御飯を作ってくれるとのことで。オレは一人、宮地サンの部屋で待機している。
暇しないようにと用意してくれた雑誌やら漫画やらがローテーブルに並べられてるけど。
とある事が気になって、全くそちらに意識がいかない。
「……やべー……落ち着かない」
付き合ってだいぶ経つけど、宮地サンがオレに触れる機会は極端に少ない。
そもそも男同士な訳だし、女子特有の柔らかさとかないだろうから、触っても楽しくはないだろうけど。
やっぱり好きだから、触りたいし触れられたら嬉しい。
こないだ、デート帰りの道で、初めて宮地サンからキスをされた。
それこそ何の前触れもなく。
ほんのわずかに触れるだけの、キス。
宮地サンは何も言わなかったけど、少しでもオレと同じ気持ちだといいなって、あのとき思ったんだよな。
思い出してなんか恥ずかしくなって思わずボフッと近くにあったクッションに顔を埋める。ふわりと、宮地サンの匂いがした。
部屋全体を包む宮地サンと同じ雰囲気。落ち着かないのに、なぜか安心する。
「あー……やっぱすき」
「高尾?」
「へぁっ?!」
「ぶはっ!なんて声だしてんだよ」
「ちょ、宮地サン、いま、気配なかったんですけど……!」
いきなり名前を呼ばれて慌てて体を起こしたら、目が合った宮地サンに笑われる。
ていうかの、いまの、聞かれたりしてないよな……?
恐る恐る窺えば、ふっと柔らかく微笑まれて、一気に心臓が速まるのを感じた。
「そんな染々呟いちまうほど、オレのこと好きだったのオマエ」
「!!み、みやじさ……き、きいて、たん、ですか……っ!」
「いや、たまたま聞こえた」
「〜〜〜っ!」
じゃあ聞かなかったフリくらいしてくれればいいのに。と恨みがましい視線を送れば、宮地サンが突然しゃがむから一気に距離が詰まる。
焦って仰け反りかけたオレの頭をおっきな手が包むように支えて。
気がつけば宮地サンの唇が、オレのそれに重なっていた。
「、ん……っ、ふぁ」
しかも、前と違って、それは深まるばかりの。根刮ぎ持ってかれるような。
「……高尾、」
「ぁ、はぁ……っみ、やじさ……っ」
「今日はもう、遠慮とかしねーから」
鼻先が触れ合うほど近くで告げられた宣言に、どくん、と胸が鳴った。
(じゃ、とりあえず先に飯な)
(へ?み、宮地サン……?)
(高尾。まさか今日、帰れるとか思ってねえよな)
(!!!)
(13/4/12)