(※「猛禽類〜」の高尾くんです)
暴力はよくないとか綺麗事。
ってなもんでケンカばっかやってきたオレだけど、中学で気分転換がてらやってたバスケでキセキ連中にボロカスに負けて。
ムカつくから高校でもバスケやってやらあと入った先でキセキの一人、緑間に出会った。
超がつくほど偏屈の変人だけどなんか憎めない。そんな緑間とチームメイトになった今じゃだいぶケンカもご無沙汰だったんだけど……。
「どうしてこうなった……」
死屍累々。とはよく言ったもんで。
目の前に広がる懐かしい光景……揃いもそろってガタイばっかの不良連中が伸びてる姿に思わずため息が出る。いやまあやったのオレだけど。
「高尾っち相変わらずカッコイイっス!」
「ありがとー黄瀬クンとりあえず歯ァ喰いしばってー?今日からモデルできない顔にしてあげっからー」
「ちょ、高尾っち、目が笑ってない!!てかそもそも事の発端は黒子っちっスよ!オレ悪くない!!」
イヤイヤと顔を振る黄瀬の指した先には、一番影が薄いはずなのにこの場で一番存在感を醸し出してる黒子がいた。ようするに、浮いてる。
「黒子っちがコワそーなオニイサンにケンカ売って青峰っちが悪ノリしたりするから!」
「すみません。彼らのコートでの下卑た行為が目に余りまして」
「そーそー。テツは悪くねえぞ黄瀬ェ。悪いのはアイツらだって、つーか高尾おめぇヤベーな超ケンカつええじゃねえか」
わあ未だかつて見たことないくらいリスペクトな眼差しを青峰に向けられている。なんか目がキラキラしてんだけどこの人。
半目で見返してたら黒子から袖を引かれた。
「助けて頂いてありがとうございます高尾君」
「あ、いや」
「高尾君カッコイイよかったです。ボク、惚れてしまいました」
「まじかー…って、えええ!!?」
「そのギャップに惹かれました」
突然そんなお見合いの席みたいなセリフ言われても。
「待てよテツ、高尾がドン引きしてんだろーが」
「青峰君の色の黒さにドン引いてるんじゃないですか?」
「色黒ナメんなよ?!」
「舐めてません舐めたら何か黒砂糖の味がしそうですよね」
「しねーよ!!」
「ちょ、オマエら……」
オレを間に挟んで口論始めないで。
という呟きは華麗にスルーされてまたため息をついてたら、少し離れたトコで黄瀬が無言でちょいちょいと手招きをしているのが目に入った。
それは、黙ってこっちに来いってことか。
言い合いを続ける黒子と青峰にチラリと視線を送ったけど気づいてないみたいだし。
そっと黄瀬の方に近寄る。
「あの二人、仲良いのな」
「さっきのやり取りだけでそのセリフが出てくる高尾っちはスゲーっス」
「いや、遠慮なく言い合える相手ってことだろ?」
フッと自然と零れた笑み。脳裏に浮かんだのは、ウチの偏屈なエース様で。
黒子たちの方を眺めていたら、いきなり隣の金髪が近づいてきて仰け反る。なに急に。てか手を握らないで。
慌てて顔を向けたら、シャララと眩しい瞳にじっと見つめられていた。
「高尾っち、オレも高尾っちとそんな関係になりたいっス」
「は?」
「てなわけで、お付き合いしてください」
「え、ごめんなさい」
「早ッ!!!」
え。そもそも何で告られたのオレ。
「ちょ、黄瀬ェ!てめえ何しれっと口説いてやがる!!」
「黄瀬君、抜け駆けだなんて最低です」
「高尾!!」
呆然としてたら名前を呼ばれた。
ずかずかと歩み寄って来た青峰に両肩を掴まれる。咄嗟に腹に一発かましそうになったのは、その、防衛本能だから。
何とか踏み留まったけど。
ズイと耳元に唇を寄せられたかと思えば。
「付き合うならオレにしとけよ。暇させねえから」
「……!!」
低音で囁かれ迂闊にも腰が砕けそうになる。青峰まじすげえつうか怖え。
すぐに距離をとって口を開こうとした瞬間ポケットにつっこんでた携帯が震える。そこに表示された見慣れた名前にオレは素早く着信に応じた。
「緑間。オマエの同中まじなんなの怖いんですけど肉食系ばっかりで」
『は?』
「とりあえず帰る!今すぐ秀徳帰る!」
言いたいことだけ言って通話を終わらせるとこっちを見つめていた三人に「じゃ、そゆことで」と手を振り踵を返す。
「あ!高尾君……っ」
「高尾っち!」
「まてコラ高尾ォ!」
「コート以外ではもう二度と会わないことを祈ってる!」
全力スルーで駆け出したオレを追ってくる気配は無くてとりあえずホッと息をついた。
けど。
この出来事は、あくまでキセキ連中の本気の、ほんの始まりに過ぎなかったことを。後にオレはイヤというほど思い知ることになる。
(とぅび、こんてぃにゅーど……?)
(13/4/8)