(※帝光高尾くん設定)
(※3年の4月頃)
「今回皆に集まってもらったのは他でもない」
真剣な赤司君の様子にボク以外のキセキ全員がゴクリと息を飲むのがわかった。
「和成のことだ」
ふぅ、と悩ましげに息を吐いた我らがキャプテンに隣に座っていた青峰君が「はあ?高尾?」と声を上げる。
「ちょ、赤司っち?レギュラーの緊急ミーティングでオレら呼ばれたんスよね?え、高尾っちのことって、え??」
「高ちんがどーかしたの?」
「オマエたち……まさか、気づいていないのか?」
皆がそれぞれリアクションをとるなか、赤司君が神妙な様子で口を開く。
「最近、練習にイマイチ集中しきれていない。練習後、またオフの日にはそそくさと帰る。やたらカレンダーの日付を確認している。そして一番の問題は」
「ボクたちのこと、微妙に避けてますよね」
「「「ええッ?!」」」
そう。
最近の高尾君は、やたら気が漫ろだ。
ボクも気にはなっていたけれど、きっと彼なりの考えあってのことだと様子を見ていたのだけれど……どうやら赤司君の忍耐はもたなかったらしい。
「さすがにテツヤは気づいていたか。……あと、黙っているが真太郎、オマエは何か聞いていないのか?」
「……」
「緑間君、こうなった以上情報は共有すべきです。知っていることがあれば洗いざらい吐いてください」
「テツ……オマエ顔が恐えぞ……」
ボクの言葉に緑間君が一瞬頬をひきつらせたのが分かったけれど、正直、ボクも納得いってなかったんですよ。
高尾君の様子がいつもと違くなってからも、緑間君、キミに対してだけはいつもどおりに接していたことが。
「緑間っち、何か知ってるんスか?!てかオレら高尾っちに何かしたんスかね…っ避けられるとか、そんな……つら!!」
「黄瀬うるせー。つうか避けるっつってもよ、別に気になるほどでもなかった気がすんだけど」
「高ちん昨日もお菓子くれたしー」
「高尾は」
畳み掛けるように発言しだした皆を遮るように、緑間君がやっと声を発する。
しん、と部室内が静かになったところで改めて、口を開いた。
「高尾は、その、色々忙しいらしい」
「へえ?その忙しい理由を真太郎には話しているのに僕らには隠している、と」
「二人で秘密を共有しているんですか?なぜ緑間君なんですか?秘密を守り通せるか否かで言えばボクの方が適任なのに」
「お、オレも偶々知っただけなのだよ…!!」
赤司君と二人で笑顔で尋ねれば緑間君が焦ったように此方を向く。
「それも今日まで……」
言い掛けた言葉は、がちゃり、というドアの開く音で遮られた。
「お疲れー!!って……あれ?みんな揃ってんの?珍しいな」
「高尾君……!」
噂をすれば、というやつで。
ドアを開けた高尾君は顔を突き合わせたボクらを不思議そうな目で見つめたあとすぐに「ま、ちょうどいっか!」といつものように笑った。
いつもの、ように、
「え、?」
「和成……?」
「??黒子?それに赤司も、二人してポカンとしてどーかした??」
「あ、いえ、大丈夫です。それより『ちょうどいい』というのは?」
何とか尋ねたボクに高尾君は花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「今日でさ、オレたちがチームメイトになってまるっと二年っしょ?まあ、黄瀬くんは一年弱なんだけど。……とにかくこれからもがんばろーって意味を込めて、みんなにプレゼントを用意してみましたー!!」
ぱあっ、と。周囲までも明るく照らすような笑顔で、彼はそう告げた。
「「「……」」」
「え、あれ?だめ、だった?赤司、部活の前になんか、ごめ……」
「高尾」
「真ちゃん?あ、折角みんなが好きそうなものとか教えてくれたのに、ごめんな?」
「謝る必要はないのだよ。というか……察してやれ」
「へ?」
高尾君。
キミという人は、ほんとうに。
(高尾っち、もーマジ大すきっス!!!)
(たぶん黄瀬ちんよりオレのが高ちんのことすきだし)
(高尾……オマエほんと可愛いなオイ……)
(和成はやはり天使なのか……)
(え?え??みんな、急にどしたん?!てか、これ、喜んでもらえてる?)
(当然なのだよ(全員喜びと安心と衝撃で現実逃避していただけだろう……))
(その笑顔がボクらには十分すぎるプレゼントです)
(13/5/7)