先輩後輩



「みやーじサン!」

「あ?」

「好きです!」

「は」





いきなり何を言い出すんだ高尾。

そういう意味を込めて送った視線は故意に無視されたらしい。
部活の休憩時間、いきなり首にすがりつくように抱き着いてきた後輩に暑いヤメロ離れろと攻防を繰り広げていたら、もうひとりの面倒な奴が現れた。





「高尾、何をしている。宮地サンが迷惑がっているのだよ」





生真面目そうに眼鏡を押し上げながら睨んでくる緑間にチラリと視線を送ったあと、高尾は捨てられた猫みたいな目でオレを見上げてきた。





「宮地サン、オレのこと、嫌いですか」

「あ?別に嫌いとか言ってねーだろ」

「ほら好きだって!てなわけで、真ちゃん邪魔しないでくれない?」

「好きだとは言ってないだろう!!都合良く話をすり替えるな!」

「いやオマエらとりあえず休憩しろよ」





いつからかこの光景が日常化してきて皆何も言わなくなったけど、むしろ誰か何か言いに来いよ。全力で止めに来いよ頼むから。オレを挟んでケンカしてんな。オマエらコンビだろ。

ため息混じりにズルズル高尾を引きずったままドリンクを取りに行けば緑間も当然のようについてくる。





「ねえねえ宮地サン。宮地サンとオレって身長差絶妙ですよねー」

「あ?」

「高尾、むしろオマエだと低すぎて宮地サンが大変なのだよ」

「いや何が?つうか休憩させろ」

「もーこの際だから聞いちゃいますけど宮地サンってオレと緑間だったらどっちのが好きですか?」

「なっ…!!」

「高尾と緑間の二択かよ。最初から究極の選択だなオイ」





慌てて視線をこちらに寄越す緑間と、軽い口調のわりに目だけは真剣な高尾。

ほんと。コイツらときたら。

はあ、とため息をつけば分かりやすく眉を落とすもんだから、呆れた表情のまま二人を交互に見やった。





「どっちも変わんねー大事な後輩だバーカ」





ばしっ、とデコぴんをその主張されたデコにひとつかませば高尾はピタリと固まる。
横目に見た緑間も似たような感じだったからその隙に立ち上がりさっさとその場を後にした。



頼むからあと5分はそうやって固まってろ。



心のなかでそんなことを思いながら。








(宮地サーン!いまのもっかい!!もっかい言ってください!!)
(出来れば書面に残してください)
(だぁぁぁ!!!だから休憩させろっつってんだろオマエらしつけーよ轢くぞ!!!)



(13/5/5)



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