黄昏にふたり




図書館で頼まれて勉強をみてやってるとき、ふと高尾の伏せた目元が気になって手を伸ばした。





「っ、え、なんすか」

「あ?別になんもねーけど」

「フツーなんもないのにいきなり瞼に触ったりします?」





触るっつーかちょっと掠めただけだろ。





「オマエ、意外と睫毛長ェんだな」

「は?」





キョトンとこっちを向いてるその頬をスルリと撫でれば、すぐにそこに熱がこもるのを感じる。

普段はヘラヘラと誰彼構わず絡んでやがるくせに、オレが触ると信じられないくらい挙動不審になるから可愛くてしょうがない。
言ったら調子にのるか照れてキレるかされそうだからぜってー言わねえけど。





「宮地サン……ここ、図書館」

「見れば分かる」

「じゃあ自重してくれません?」

「人いねえし。大丈夫だろ」

「いや何も大丈夫じゃねーし」





椅子を引いて逃げようとするから、ちょっと腕を伸ばして後頭部を捕まえる。
さっきより近くなった距離にあからさまに戸惑ってんのが伝わってきて、思わず口角が上がった。
息がかかるほどの近さで視線がぶつかる。





「宮地サン……っ、近すぎ!」

「キスするときはもっと近いだろ」

「…ッそういう問題じゃ……」





あーあ、顔真っ赤にしちゃって。

いっそ唇奪ってやろうかと思ったけど何かオレの方が我慢できなくなりそうだからやめとく。
頬にちゅっとわざと音を立ててキスをして。そのまま耳元へ小さく息を吹き掛けると高尾がびく、と震えた。

だから、いちいちカワイー反応してんなよ。





「高尾」

「も、いきなり何々すかぁ……宮地サン…っ」





涙目で見上げられたら抑えかけてたもんがうっかり溢れそうになる。
理性総動員で欲をもっかい抑え込むと、額にキスを落として少し離れた。





「高尾」





もう一度名前を呼ぶと、しっかりと目が合う。
オレの一挙一動に表情を変えるコイツが愛しくて堪らない。
マジ末期だわ。と自覚しつつも、こればかりはどうしようもできねー。





「続きは家に帰ってからな」





困ったように笑う高尾にオレも笑ってみせた。








(愛が故に、と誰かが言った)



(13/2/7)




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