小鳥とうたう唄




やばい。泣きそう。

今日に限って寝癖が直らないとか。









「ちょっとおにーちゃん?いつまで洗面所占領してんのー?」

「あぁぁ待ってお願いちょっと待って!」





洗面台でぴょこんと跳ねた反乱分子と戦ってたら、後ろから妹チャンに急かされる。
鏡越しのジト目に「ごめんって!」と謝ると不思議そうに首を傾げるのが見えた。





「もー、それさっきも聞いたよー。てか普段はそんな気にしないクセに今日はなに?もしかしてデートとか?」

「ブフォ!」

「えっ?ウソ、ほんとにデートなの!?」






まさかドストライクで図星を指されるとは思わず、思いっきり噴き出してしまう。

「えーちょっと私お兄ちゃんに彼女いるとか聞いてないよどういうこと?!」と詰め寄ってくる妹チャンはカワイイけど、ごめん、お兄ちゃん彼女はいねーんだわ。

脳裏を過るのは、鮮やかな緑色。

デートは嘘じゃないから適当なことも言えなくて、言っても勘が鋭い妹にはたぶんすぐバレるだろうと口篭ってしまう。





「お兄ちゃん占いとか信じないタイプなのに最近、おは朝占い熱心に見てるからおっかしーと思ってたんだよね!」

「……あの、とりあえず、今はこの寝癖どうにかしたいんだけど……」

「もーそういうコトなら早く言ってくれればよかったのに!」





面白いもんを見つけたときのテンションならオレに負けないと思う。さすがオレの妹チャン。
早口で捲し立てるとバタバタと洗面所を出ていく。

呆然と見送ってたら遠くから「お母さーん!おにいちゃん今からデートなんだってー!!」と声が聞こえた。

え、ちょ、なにバラしてんの。



慌ただしく戻ってきた妹の手には小型のアイロンとヘアワックスが握られていて。





「さっきのは私に黙ってた罰だから!とりあえず今日のとこはまかせといて!」





有無を言わさず近くにある丸椅子に座らされ呆然としていたら手際よく髪を扱われる。
で、ボケッとしてる間にセットが終わった。





「おお…!サンキュなー!」





跡形もなく消えた寝癖に感謝の意を込めて妹チャンを抱きしめたら「そゆのは彼女サンにしてあげなさい!はいさっさと準備する!遅刻とか絶対にあり得ないんだから!!」と背中を押される。

ほんとこの子オレの妹ながらハイスペックだわ。





家を出るとき、母親から生暖かい視線をもらったのはスゲー気まずかったけど。
待ち合わせ場所に走る途中、フワリと髪から香る少し甘い香りに自然と頬が弛んだ。








(?真ちゃんどうかした??)
(……高尾からイイ匂いがするのだよ)
(あ、分かる?妹チャンの愛の証よコレ)
(???)



(13/2/14)




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