才能とか実力ばっかの世界でオレが生き残るにはそれなりに死に物狂いになんなきゃいけなくて。
でも、嫌いにはなれなくて。
だから、必死で上だけを見つめてきた。
「はーい、見つけましたあ。部活行きましょーか青峰クン?」
「……高尾」
空き教室で居眠りしてた青峰を見つけて上から覗き込んでやれば、めっちゃイヤそうな顔をされる。
まさか見つからないと思ったの。どこにいても見つけてやりますけど。
「毎日毎日……オマエの執念まじスゲーな」
「ふはっ!執念とかねちっこいのヤメテくんない?ただオマエと一緒に練習したいだけだからオレ」
「……自分が強くなりたいから、だろ」
「それ以外に理由がいんの?」
間髪入れずに問い返せば、しかめられる顔。
ほらほらキレーな顔が台無しよ?
その眉間にすっと指を這わせて微笑む。
「春に初めて会ったときに言ったろ?オレは……緑間真太郎……アイツに勝つために桐皇に来た、って」
中学時代、オレのプライドを完膚なきまでに叩き潰していったあの男。
アイツに絶対的な敗北を味合わせて、澄まして整った顔がぐちゃぐちゃに歪むところが見たい。
その為に使えるものは全部使う。
そう決めたんだ。
例えそれが、緑間と同じくらい嫌悪した、キセキの世代であろうと。
「オレには青峰が必要なんだよ」
「……ッ」
「さ、ってなわけで行きましょーかエース様」
腕を絡めて身体ごと引っ張れば、抵抗はしないって知ってる。
今のところかくれんぼはオレの全勝だから。
並んで歩き出してすぐ。隣から視線を感じ、オレも青峰へと目線をずらす。
「高尾」
「ん、なに?」
「オマエ……バスケ好きか?」
「は?」
予想外の質問に一瞬呆けるけど、次の瞬間にはそんな分かりきったことを聞くなと笑ってやった。
「好きじゃなきゃ、ここまでやってこれてないって!」
だからこそ、ここまで這い上がってきたんだよ。
そうして前を向いたオレのことを、青峰が複雑な表情で見つめていたことなんて。
オレは知らない。
(すき、だから)
(13/2/14)
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