鳥籠で囀ずる〜if〜
(※黒高大学生設定)
(※ある種真っ白な黒子)
(※白すぎて病んでいます)










目を覚ましたとき目に映ったのは。

なにもない、薄暗い部屋。
そして間近で此方を覗き込む、だれか。





「くろ、こ……?」

「気がつきましたか?だいぶ長く眠っていたから、心配しました」

「……え、なに……」





半身を起こすために強張った体を身動がせれば、なぜか首に違和感を感じる。不穏な気配にその根源を辿ると、指先にジャラリと冷たい何かが当たった。

まさか。そんな。





「ちょ、黒子……何の冗談なわけ……?」





自分の姿は確認できないけど恐らくオレは、何かで繋がれている。
そんなあり得ない結論が導き出されて無意識に震えそうになる唇でそう問いかける。

フッと目の前の空気が揺らいで、黒子が笑った気配がした。





「何もふざけていません。ここにいれば、高尾君は、何物にも傷つけられずに囀ずることができます」

「……、は?悪い、意味が……わかんねえんだけど……」





笑おうと思っても頬がひきつって巧くいかない。

見つめてくる水色の双眸が、あまりにまっすぐで透き通ってて。そこに冗談の色なんて一切含まれてないことが分かったから。





「と、にかく、一回これ外して……」

「ダメですよ。それがないと、キミはまた手の届かないところに飛んでいってしまう」

「いや、飛ばねえし、頼むから」

「高尾君」





するりと頬を撫でる指が、まるで大事なもの触れるように繊細で。底知れない何かを煽る。
咄嗟にその手から逃げるように退がれば、傷ついたような瞳が見えた。





「高尾君はここにいた方が幸せなんです。僕の目の届く場所で、安全なゲージの中で。外に出て怪我でもしたらどうするんですか?」

「オレは、ペットじゃねえんだから……っ怪我くらいするって、こんなとこにいた方が、おかしくなる……!」

「ペットだなんて思ってません。僕にとって、キミは誰よりも、何よりも愛しい存在なのに」

「……ッ」





吐き出す息が震える。

これ以上、その目に見つめられたくない。

自由な両手で顔を覆い隠し、なんでこんなことになったのかと自問するけど答えなんて出るわけもなく。





「高尾君、心配しないでください」





そっと腕に触れた手を振りほどいて、鎖の限界まで距離を取る。





「新しい環境に慣れるまではツラいかもしれませんが、僕がついていますから」





闇に慣れた視界の中で。

優しく微笑む黒子が、オレの目には異様に映った。








(色濃い影に捕らわれ)
(逃げ惑う鳥の行方は誰も知らない)



(13/2/11)





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