「おかえりー、お布団この辺でよかった?」

「……ああ」

「……ちょ、真ちゃん……そんな、はじめて彼氏の家泊まり来た彼女みたいに緊張されたらオレまでキンチョーしちゃう」

「だっ、誰が彼女だ!!」

「じゃあ彼女泊まり来て初えっち試みる前の彼氏みたいな?」

「……えっ……!!!……そんな破廉恥な事は微塵も考えていないのだよ!!!!!」



風呂上がりの真ちゃんに冗談を投げたら本気のボールが返ってきた。
オレの軽口なんて聞き流しゃいいのに。ほんと真ちゃんマジメなんだから。

不貞腐れた表情のエース様に思わず笑いが零れたのがバレたらしく、近くのぬいぐるみが顔面に飛んできた。



「あ。真ちゃん、先にこれ渡しとくわ」

「は?」

「“オレ”から、真ちゃんに」



ニッコリ笑って差し出した小箱に思いきり眉を寄せられる。
いや別にトラップとかないから。とまた笑みが浮かんだ。

“これ”が学ランのポケットに入ってるなんて、まさか思いもしなかったけど。たぶん“今”しか渡すタイミング、無いよね。

怪しみながらも受け取ってくれた真ちゃんには「あとで開けてね?」と念をおしておく。



「あと少しで真ちゃんも大人の仲間入りだねぇ」



一生に一度の、十八になるためだけの日。
真ちゃんにとって、オレとはじめて過ごすことを選んでくれた、誕生日。
そして、オレにとってもはじめてだった、その日。

あやふやだった記憶が一気に繋がって、ここに辿り着いた。

あれから何回も、特別な時間を過ごしたけれど。
はじまりはここにあったんだね。



「……高尾、オレは……」

「あ、ごめんちょっと待って!もうちょいしたら、ちゃんと、真ちゃんといるべきオレになるから!」

「は?」

「いやオレも真ちゃんの大好きな高尾くんなのに変わりはないんだけどね!それとこれとは話が別っつーか、オレには大人の真ちゃんがいるっていうか!」

「高尾、落ち着け、言っている意味が分からないのだよ」

「落ち着いてはいるんだけどさー、説明が難しいから、これだけ」



そっと両手を伸ばして真ちゃんの頬に添える。
さらりと流れる緑の髪が触れた。





「た、高尾……?」

「おめでとうも、だいすきも、未来にとっておくから」

「……っ、」

「……待っててね、真ちゃん」



いつだって、きらきらと眩しい、オレだけのひかり。




「オレと、出会ってくれて、ありがとう」








「一緒に、歩いてくれて、ありがとう」








「すぐに、隣にいくから」








オマエのとなりは最高に居心地が良くて幸せだから。



はやく、あいたい。
はやく、はやく。
抱きしめたい、抱き締めてほしい。



だからオレは、オレの居るべき場所に。

オマエの居る場所に。









(驚いたような翠の瞳が見えたから、たぶん、聴こえたよね?真ちゃん)



20##年7月6日夜




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