夕暮れに、学ラン。 精悍な横顔。 ぜんぶ懐かしい。 オレの大好きな景色。 真ちゃんのいる景色。 真ちゃんといた景色。 「……頭の悪そうな鼻歌だな」 「ぶはっ!鼻歌に頭の良し悪しとかあんの?」 バカみたいに笑い合って、からかって、呆れられて、でも隣を歩いて。 寄り添うようになってからもオレはずっと幸せだったけれど、学生の頃の時間は、ほんとうにかけがえなかった。 「……ね、真ちゃん!」 「どうした?」 「手、繋がね?」 溢れた想いを差し出した手のひらに込めてみる。 夕焼けに染まるように頬を染めた真ちゃんに、早まったかなと伸ばした手を下ろそうとした瞬間。 優しく指を絡めとられた。 「……、行くぞ」 「ん」 何となく、なんで高三のオレのこのときの記憶が無いのか分かった気がする。 オレはきっと伝えに来たんだ。 この日の、緑間真太郎に。 道に並んだふたつの影を見つめて、小さく笑みをこぼした。 20##年7月6日夕方 |